(15)
電子音が遠くから聞こえる。
駄目、まだ覚めないで。せっかく、せっかくいい夢を見てるのに。
それに、男の子が何か伝えようとしてるの。はっきりとは聞き取れない。でも……。
『サー………、う……って。ぼ………らの…リス…………ン…だ』
あなたは……、誰……?
「………シャ、サーシャ!早く起きなさい!!友達来てるわよ!!」
何だろう。何か大事な夢を見ていた気がするのに、何も覚えていない。
そう、男の子。男の子が出てきて。それで……、それで……?何かを伝えようと……。
「サーシャ!何時まで寝てるの!?」
「ママうるさい……。せっかく夢を思い出そうとしてたのに……」
「何が夢よ。友達来てるわよ。約束してたんじゃないの?」
「そうだった!」
今日はあの子と約束してるのに、寝坊なんかしたらまたからかわれる。って、家にあいつが来てる時点でもうアウトか。
あー……、あんて事だ……。早く支度済ませなくちゃ……。
「ほら、サーシャ早く」
「わかってるって」
「はい、朝ご飯の代わりの林檎。好きでしょ?」
「うん、ありがとう」
あれ?なんか今日の林檎、いつもと味が違う……?気のせいかな。
鞄持ったし、服オッケー。髪型もオッケー、よし。
「いってきますっ」
「いってらっしゃい」
慌てて外に行くと、不機嫌な顔のあいつが立ってた。
不機嫌になる位なら、迎えに来なくてもいいのに。
「遅い」
「別に待っててくれなくても良かったのに」
「迎えに来なかったらいつまでもグースカ寝てるだろ?」
「ひっどーい!それが彼女に対する言葉!?ロレオの馬鹿!!」
「はいはい。ほらいくぞ」
「待ってよー!」
ロレオが先に行くから私も慌てて後を追おうとした。その時、どこからか声がした。聞いた事のある。そう、夢に出てきた男の子の声……。
『サーシャ』
どうして私の名前を知ってるの?あなたは誰なの?
振り返ったところで誰もいない事はわかってる。でも気になって振り返った。するとそこには、小さな男の子が立っていた。
その瞬間何もかもを思い出した。夢で彼が話していた事も、“その前”の事も。
夢でアイは、『サーシャ、受け取って。ぼくからのクリスマスプレゼントだ』と言った。
プレゼントという割には、何かがあったわけではない。変わってもいない。ただ、林檎の味だけは変わっていた。あの林檎は記憶をもとに戻すための林檎?
「アイ……、ありがとう……」
「ん?サーシャ、どうした?」
「ううん、何でもない」
「ちょっ、なんでお前泣いてんのっ?」
「え……?あ…、ちょっと目にゴミが入っちゃって」
「気をつけろよ?」
「うん」
気をつける。今度こそ、この幸せがなくならない様に。せっかく、ロレオ様に会えたんですから。
ロレオ様が私を覚えていなくても、私は覚えています。いえ、思い出しました。あの時のあなたの可愛らしい泣き顔も全て。
これ以上の幸せはもうないでしょう。私はやっと手に入れたんです。だから、私のためにもアイのためにも守ってみせます。
アイが最後に言った言葉は、叶いましたよ。本当に……。
『サーシャに、幸せな未来が訪れますように。ぼく、ずっと、願ってる』
本当に、ありがとう。
これで終わりです!
初めて物語を完結させることができました。
ここまで読んでくれてありがとうございました。




