(13)
頭に、言葉が流れてきました。ロレオ様の声です。
『父様の嘘吐き……。あの時約束してくれたじゃないか。サーシャは絶対処分しないって……。お前が気に入ったのなら、ずっと置いてやるって言ったのに……。俺、自分の気持ちまだサーシャに伝えてないのに……。父様の馬鹿!あんな、子供の事考えてもない奴……!セーシェルがいなくなったのも父様の所為だ……!父様は俺から大事な物ばかり奪っていく…!サーシャ……、ごめん、ごめん……。許して……』
ロレオ様が謝る必要なんかどこにもないのに、流れてくる声はずっと謝っています。これは本当にロレオ様が思っている事なのか、私が想像した幻聴なのか。
わからなくなって、アイの方を見ました。するとアイは「声、聞こえた?」と微笑みました。私が微かに頷くと、「そっか。良かった」と言って、私を立たせて歩き出しました。
その間も涙は止まらず、目が痛くなってきました。ロレオ様の気持ちが流れ込んできたというのもありますし、私自身悲しくて泣いているというのもありました。ずっとロレオ様に抱いていた気持ちはロレオ様も同じで、もっとずっと前から通じ合っていたという事に気付いたからです。
「ほら、座って。サーシャ」
アイは私を湖の近くまで連れて行き座らせると、私の前に向き合う形で座りました。
アイが何かを話すと思い、必死で涙を止めようとしました。でもなかなか止まってくれません。アイはそんな私の手を取って、優しい顔で笑いました。
「サーシャ、泣いてもいいんだよ。いままで溜めてきた物、全部出しちゃいなよ」
アイのそんな言葉を聞き、ますます涙は止まらなくなりました。私は本当に、ロレオ様に失礼な事をした。あんなにも愛おしい人に、辛い役割を押し付けてしまった。
謝らなくてはいけないのは、私の方です。ロレオ様は、何も悪くない。
「うっ…ぅ…。ロレオ、さまぁ……。ひっく。ごめんなさい……、ごめんなさ……っ。許して…、くださ…い……。ぁ、あ……」
子供みたいに泣きじゃくる私を、アイはずっと優しく見守ってくれました。小さな手で、私の手を握っていてくれました。これではどちらが年上かわかりません。もしかしたら、精神年齢は、アイの方が上かもしれない。私はたぶん、あの日から止まっている。母に捨てられたあの日から。動いている感覚が全くしない。
そう思う位、私は幼かったのです。ロレオ様に対するこの気持ちをどうしたらいいかわからない。どこに、捨てればいいのかわからない。
「ねぇ、サーシャ。生まれ変わったら、ロン兄様と会えるかもよ」
「生まれ……、変わる……?」
「そう。うまくいけば、ロン兄様とまた会える。いつかはわからないけど、そんな予感がするんだ」
「もし、会えるなら……。私、ずっと、待ってる……!待ち続ける……!」
「なら、生まれ変わるしかないね」




