表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/15

(11)

「普通じゃない、林檎……」

「そ。普通じゃない」

そう言ったアイは私の手を取って歩き始めました。ゆっくり、ゆっくり、一歩ずつ。しばらく歩くと沢山あった木が消え、開けた場所につきました。光が差し込む、暖かい場所です。アイは其処に私を座らせました。

「普通じゃないって言っても、ちゃんと食べられるやつだよ?サーシャは、何がいいかな」

「人によって違うの?」

「うん。その人に合った林檎があるんだよ。サーシャは……」

アイは私の目を見ていました。少し微笑んでいた顔が段々と強張ったいきます。私は首を傾げました。一体、どうしたと言うのでしょう。

「ぐ、れ、ぇ…?サーシャ、どうして……」

私は余計分からなくなり、更に首を傾げました。グレーがどうしたのでしょうか。林檎と色は、何か関係があるのでしょうか。しばらくアイを見つめていると、アイは「ちょっと…、待っててね……」と言って、何処かへ行ってしまいました。

アイが帰ってくるまでの間、私は周囲を見ている事にしました。広いこの場所は、周りが木で囲われています。少し歩くとまあまあな大きさの湖がありました。空気は綺麗だし、景色も綺麗。周りには甘い香りに誘われて来たのか、色とりどりの蝶が舞っています。普通ではいないであろう、真っ赤な蝶や、紫の蝶もいました。不思議な気分です。此処はまるで、天国の様だ。

「お待たせ。持ってきたよ」

しばらくして、アイが帰ってきました。その手には、グレーの林檎と真っ青の林檎。そのうちのグレーの林檎を渡してくれました。

「グレー……。変わった林檎だね。こんなの、見た事ない…」

「うん。普通はないからね。サーシャは、限りなく白に近いグレーの林檎が合うよ」

食べてみて。と、アイは私に言いました。色は不思議ですが、香りは林檎そのものでした。一口齧ると、とても不思議な味がしました。言い表せない味です。でも不味くはありませんでした。

「それはね。今の気持ちの味なんだよ。サーシャは、微妙な気持ちのままだ。昔はあんなに真っ白だったのに」

「そう…、かもしれないね」

「ぼくが育てている林檎は、気持ちの味がする。それぞれ味が違うんだよ。ここに来る人に合った林檎を、ぼくは選んでる」

「じゃあ、そっちの青い林檎は?誰のなの?」

秘密だよ。とアイはいいました。少し、悲しそうに笑って。私の顔をじっと見ていました。そして不意に顔を逸らすと、「食べたら、分かるよ」と呟きました。食べたらわかるというのは、食べてもいいという事なのでしょうか。それにしては、アイは林檎を握ったまま離そうとしません。食べてもいいのか、駄目なのか、よく分かりませんでした。すると、アイは小さく口を開きました。

「食べてもいいよ。でもその前に、ぼくの本当の名前を、教えなくちゃね……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ