一閃!!
やっぱ戦闘は書いてて楽しいですね
次の日ノーラさんにもっと報酬のいい依頼を、ということで紹介してもらったのは森での薬草採取だった。
この森は俺がこの町に来る前にオオカミに追われた嫌な思い出がある所だが、ノーラさんが言うにはブラッディーウルフはよほど森の奥まで行かない限りは日が出ている間は襲ってくることは無いらしい。
さて、肝心の依頼だがこちらは鑑定がある俺には余裕だった。
おおよその辺りをつけて鑑定を発動し目当ての薬草があれば回収する。草むらを掻き分け探す手間を完全に省略できるのでかなり効率がいい。
太陽が真上に昇る頃には持って来たリュックが薬草でいっぱいになった。これだけあれば十分だろう。ノーラさんの驚いた顔を思い浮かべほくそ笑みつつ、町へ帰ろうと道に出ると俺の索敵に複数の魔物の反応があった。まだ遠いので視界には入っていないが、何かが複数こちらへ向けてすごい速度で迫ってくる。
どうする?町へ向けて全力で逃げるか?魔物は町とは反対方向から迫ってきているし、いくら速いといってもまだかなり距離がある。全力で逃げれば十分逃げ切れるだろう。
そうと決まればさっそく逃げようと俺は足に力をこめ
・・・!?
ようとして失敗し、たたらを踏む。
俺は慌てて後ろを振り返り索敵に集中する。距離が近づいてきたおかげでもっと正確に索敵の結果が分かったのだ。
こちらに向かって来てるのはただの魔物の大群ではない。人間を追っている魔物の大群だ!
どうする!?今ならまだ逃げるのも間に合う。魔物に追われているやつだって馬車か何かにのっているのだろうなかなかの速度で逃げている。下手に手を出さなくても逃げ切れる可能性は十分にある。むしろ下手に手を出したがために犬死にする可能性の方が高いだろう。つまりこの場は逃げた方がいいい。逃げた方がいいのに・・・
「・・・ちっ」
俺は手近な木の上に駆け上がっていた。隠蔽のスキルを発動させながら魔物達が来るほうを睨む。
このまま身を隠していれば魔物に見つかることは無いだろう。追われている人が無事に逃げきれそうなことを確認できれば俺も安心できる。
すぐにこちらへ向かう馬車が見えた。鑑定を使うといくつものウィンドウが出現する。
ブラッディーウルフ
Lv 10
名前 フラン
種族 人間種
性別 女
Lv 1
装備 銅の剣
スキル なし
ブラッディーウルフ
Lv 10
リーダーブラッディーウルフ
Lv 15
馬車を駆る1人の女性とその馬車に並走する何十体ものオオカミを視界に捕らえた。すでに馬車はオオカミに追いつかれており、町まで逃げ切ることはほぼ不可能だろう。
そこまで判断したところで俺は背負っていたリュックをおろし近くの枝にかけ、剣を抜いていた。このままでは逃げ切れないのなら俺がやるしかない!
・・・?
奇襲をかけるために息を殺し馬車が近づいてくるのを待っているとオオカミの群れの中に一際体の大きな個体が混ざっていることに気づいた。
名前はリーダーブラッディーウルフレベルも他のブラッディーウルフよりも5高く名前どおりリーダーなのだろう、ならば最初に倒すべきはあいつだ。
オオカミに左右から体当たりされ今にも倒れてしまいそうな馬車を見送りし、リーダーブラッディーウルフが真下を通りかかるタイミングで飛び降りる!
「一閃!!」
俺は昨日から考えていた技名を叫びスラッシュ&スラッシュを放つ。
突然の雄たけびに足を止め上を見るオオカミ達。だがその足を止めた一瞬で俺の剣は届く。
上を見上げ硬直するリーダーブラッディーウルフの鼻の先から尻尾の先までを両断するつもりで剣を振るう。
俺の放った剣撃はリーダーブラッディーウルフを貫通し地面をえぐった。
「きゃあああああ!」
一撃で倒れ、宙に溶けるリーダーブラッディーウルフ。
着地した後スキル後硬直をやり過ごしてくると馬車が逃げたほうから女の人の悲鳴が聞こえてきた。
俺は硬直中に唯一動かせる目で必死に声がしたほうを見る。
そこには、スリップしほぼ真横を向いた形で止まる馬がいなくなった馬車があった。
度重なるオオカミの体当たりで馬と馬車の連結部が壊れてしまったのだろう。
・・・っ!まずい馬車が止まってしまうとあの人が危ない!
俺は硬直が解けた瞬間鋭く息を吸い込む。
そして、馬車に群がっているオオカミに向けて大声で威圧した。
「こんのイヌころどもが!こっちこいやあぁぁぁぁぁ!!!!」
自分でも驚くほどの声量が出た。
自分達のリーダーがいきなり倒され戸惑っていたオオカミも、馬車の周りにいたオオカミも、ついでに馬車を運転していた女性も全員ビクッと飛び上がったあと俺のほうを振り向いた。
俺の思惑通り馬車のほうへ向かっていたオオカミ達も全て俺のほうへ来る。その数ざっと20以上、あまりのピンチに思わず笑いが出るね。
オオカミ達は俺の周りを囲むように展開する。俺は索敵を発動させオオカミ達の動きを探る。敵の数が多くても俺は1人だけだ。全員で飛び掛ってくることはできないだろう。
・・・!
背後のオオカミから攻撃の気配。
俺は右足を半歩右に動かしその足を軸に右に回転する。後ろから飛び掛ってきたオオカミの爪が若干背中をかすったが何とか回避し、そのまま回転する。回転しながら正面に構えていた剣を右斜め上に振り上げた。
体が元の向きから270度回転した段階で、俺が元いた場所に向けて飛び掛っていたオオカミの横腹に向き合った。
右上に振り上げた剣は体が回転したことにより左肩に担ぐようになっている。俺は振り上げた力を殺さないように剣に円運動をさせ力の向きを左下に変えスラッシュを放つ。
振り上げた力と回転する力がスラッシュの力に上乗せされ一閃のような速度で振り下ろされる。
振り下ろした剣は狙いどおりオオカミの首を切り落とし宙に消滅させた。
俺は剣を振り下ろす勢いを殺さずさらに90度回転する。一回転して元の向きに戻った俺は前から飛び掛ってくる3匹のオオカミを視界に捕らえる。
右下に振り下ろした剣の輝きが消えないうちに2度目のスラッシュを発動。ツバメ返しのように剣先を回転させ、左上に切り上げる。
3匹同時にスラッシュで吹き飛ばすことには成功するが今度は一撃では倒しきれない。さっき勢いをつけてスラッシュを発動し威力が上がったように、今度は右下へと向かう力を打ち消すように左上へとスラッシュを放ったため威力が下がったのだろう。
3匹を吹き飛ばした段階で左右から同時に2匹のオオカミが飛び掛ってきた。
左上に剣を振っている状況では右のオオカミへの対応は間に合わないと判断し左のオオカミへの対応だけを考える。
俺は左のオオカミへ向け大きく一歩を踏み出し3度目のスラッシュを発動させる。
なるべく姿勢を低くし、飛び掛るオオカミの下を潜るように踏み込む。これで他のオオカミ達も攻撃を一瞬でも躊躇うだろう。
オオカミの右側から切りつけた剣をオオカミの体の中ほどで止め体を反転。背負い投げのような格好で4度目のスラッシュ。
オオカミの上半身を裂き剣が地面にめり込む。
鋭く周りを見て追撃が無いことを確認し、一連の連撃中ずっと止めていた呼吸を再開する。
「――─っはぁはぁ」
かなりきつい。傍から見ている分には今の連撃は俺がオオカミ達を余裕であしらっているように見えてるかもしれないがそうじゃない。問題はスラッシュと硬直キャンセルの発動条件にあった。
スラッシュの発動条件は剣の通る軌道をイメージしてスラッシュと念じること。そうすることで剣は通常以上の速度と威力で駆け抜ける。そして硬直キャンセルの発動条件はスラッシュの発動が完全に終わる前にもう一度スラッシュを使うことだ。
つまり通常以上の速さで駆け抜ける剣が止まる前に次の剣跡をイメージしなければならないということだ。
相手が単体なら2、3度連撃するぐらい問題ないと思うが、相手が複数でどんどん移り変わる戦況を正確に把握し瞬時の判断で次の攻撃をイメージしなければならないのはかなりきつく、今も酷使した脳がずきずきと痛んでいる。
ここまでしてもいまだに倒した数は2体。全体の一割にも満たない。
俺ここで死ぬかもしれん・・・。
そんなことを思いつつまた背後から襲い掛かってきたオオカミを対処するために軽く横にステップし、スラッシュを発動させた。
結果から言えば覚悟していたほど苦戦はしなかった。
リーダーブラッディーウルフとブラッディーウルフ2匹を倒したおかげでレベルが上がったようで、オオカミを威力強化しなくてもスラッシュ一発で倒せるようになったのだ。
そうなってしまえば話は簡単で、飛び掛るオオカミを次々に切り捨てていった。
途中一度だけMPが切れたらしく連撃が止まってしまい、全身にオオカミが噛み付いてきた時は死んだかと思ったが、硬直が解けた瞬間にすぐに振り払ってHPとMPの回復ポーションを飲んだらあっさり回復し、そのまま最後の1匹まで一気に倒した。
オオカミ達は最後の1匹になっても逃げずにこちらに向かってきた。おかげで倒すのは割と簡単だった。
「つ、つかれたぁぁ~~」
最後の1匹を倒し、索敵を使って近くに他の魔物がいないことを確認した俺は地面に仰向けに倒れこむ。
全身の力を抜き今にも手放しそうな意識をぎりぎりで繋ぎとめているとこちらに近づく1つの足音がした。
「あ、あの~大丈夫ですか?」
うっすらとあけた視界の先に馬車の御者の女性が立っていた。




