冒険者
「やっと・・・やっと着いた・・・」
盗賊と出会った次の日の朝、俺は遠目に町の外壁を見つけ、若干目に涙を浮かべていた。
さて、なぜ俺が完全徹夜で夜道をダッシュして町に向かっていたのかというと、いろいろ訳があるのだが、とりあえず今の俺のステータスを見て欲しい。
名前 神楽坂竜司
種族 人間種
性別 男
Lv 1
HP 300
MP 100
ATK 20
DEF 10
INT 15
AGL 10
装備 鉄の剣
ユニークスキル:勇者の素質 魔王の素質 鑑定 並列起動
スキル:剣術Lv1 移動速度上昇Lv1 索敵Lv1 隠蔽Lv1 身体能力強化Lv1 視力強化Lv1 聴力強化Lv1 暗視Lv1 逃げ足Lv1
・・・この時点で察しのいい人は気づくと思うが、俺は昨夜全力で獣達から逃げ続けていたのだ。
日が沈み始めるまでは順調だったんだ。
途中きれいな小川を見つけてのどを潤したり、アニソンを口ずさむ余裕もあった。
だが、森に隣接している道を歩いてる途中に辺りが暗くなり始め、今日はここら辺で休もうかと思った時に俺はそれに気づいて愕然とした。
火をつける手段を持っていない。
マッチもライターも携帯していないし、ゼロから火をおこす知識もスキルも持ち合わせていない。
加速度的に真っ暗になっていく景色に薄っすら恐怖を感じつつ、俺は早足で町への道を急いだ。
ワアオォォーーーーン
突然左の森から聞こえてきた叫び声に、俺はその場で飛び上がり危うく尻餅をつきそうになった。
暴れる心臓をなだめつつ、森の奥の闇を睨むとぼんやりとだが木々の輪郭が見えてきた。
しばらくそのまま息を殺して眺めてると、茂みが若干動いた気がした。
鑑定。
ブラッディーウルフ
Lv 10
揺れていた茂みの辺りを見ながら鑑定を発動する。
すると、何かのステータスが出てきた、おそらくあそこに隠れている動物かモンスターの名前だろう。
それも、出てきたステータスは1つだけではなかった。視界に入るだけでも10以上のウィンドウが出ている。
にしても、血塗れの狼か・・・名前的にちょー強そうだ、Lvも10と高いし今の俺じゃ逆立ちしても勝てないだろう。
という訳で俺はまたも、この場から撤退することを決める。
俺がこの場から立ち去ろうと一歩後ずさると茂みから一斉に赤いオオカミが飛び出してきた!!
「「「「ガルルルルル」」」」
先に飛び出してきたオオカミ達が俺に向かって威嚇してくる。
そうしている間にも森からはどんどんオオカミが出てくる。
俺はその場から2歩ほど後ずさった後全力で逃げ出した。
「こんなんばっかかーーーーーー!!!」
俺は後方から迫りくるオオカミたちの気配を背中で感じつつ、こっちに来てからの不運を嘆くのであった
・・・正直それ以降のことはあまり思い出したくない。
オオカミ達の突撃を間一髪でかわしまくったり、茂みに頭から突っ込んで気配を殺したりとかいろいろやった結果、朝日が上り始めたころにやっと諦めて帰ってくれた。
その後一息ついてから、もしかして今の逃走劇でレベルが上がっているかも知れないと思いステータスを確認すると、あのすごい数のスキルを見つけて驚いた。残念ながらレベルは上がっていなかったけどな。
実を言うとこのスキルの異常な取得には俺のユニークスキルが関係しているのだが、それはまた今度まとめて話そうと思う。
とにかく俺は無事にアストの町に到着することができたのである!
「止まれ」
俺が意気揚々と町に入ろうとすると入り口近くにいた門番に止められた。
「見慣れない奴だな、それに見たことも無い格好をしている。冒険者か?」
この門番、全身プレートメイルを着込み腰に剣をぶら下げているいかにも騎士!という格好をしていたためやっぱりここは俺のいた世界とは違うんだな。と思いしみじみ眺めてしまう。
「どうしたこちらをじろじろ見て、そんなに騎士が珍しいか?」
おっと、まずい相手が不振がってる。ここは適当にごまかしておこう。
「すんません。なにぶん山奥の田舎から出てきたもんで本物の騎士様を見たのはこれが初めてなんですよ。・・・それでその、冒険者?でしたっけオレはたぶんそれですね。」
これでよし。田舎から出てきたばかりってのはよく聞く手だが無知へのカモフラージュにはぴったりだし騎士様と言われていやな奴はそもそも騎士になろうとしないだろう。
俺が冒険者なのかと聞かれると微妙なところだが、剣を抱えて歩いてる時点で一般人とは言えないのでまあ妥当なところだろう。
「そうか・・・ならばギルドカードを出せ。」
騎士様がなんかよく分からないことを言い出した。
「ギルドカード?ってなんですか?」
分からないことは知ってる人に聞くのが一番なので目の前の騎士様に聞いてみる。
「ん?お前は冒険者ではないのか?」
「はぁ、なにぶん村から出たことがありませんでしたので」
騎士様がこちらを疑わしげに見てくるので、俺は伝家の宝刀田舎者だからわかりませーんを躊躇無く発動する。
すると騎士様も、なるほどとうなずいている。さすが伝家の宝刀。
「ギルドカードとは、各ギルドが発行している身分証のようなものだ。冒険者になるには冒険者ギルドで登録をしてもらい、ギルドカードを作ってもらう必要がある。冒険者のギルドカードを持っていれば、ほとんどの町で通行税が免除されるのだ。」
「なるほど・・・つまりギルドカードを持っていない俺は通行税を払う必要があると」
「うむ、通行税は1人銀貨一枚だ、それと簡単な持ち物検査を受けてもらう」
俺は騎士様に銀貨を渡して、荷物検査を受けた。といっても荷物らしい荷物は鉄の剣ぐらいだったので検査はあっさり終わった。
「よし、通っていいぞ」
騎士様に通行の許可をもらった。が、そのまえに
「あの、その冒険者ギルドってどこら辺にありますか?、それと安くて安全な宿の場所なんかも教えて欲しいんですが。」
おそらく俺は元の世界に帰る方法を探すためにこれからも旅を続けるだろうから、冒険者という身分はまさにうってつけだ。というか町に入るだけでいちいち税金なんぞ払っとったら絶対金欠になるしな。
「うむ、冒険者ギルドは、この南通りを進んだ先にある中央広場にあるぞ、宿もそこで聞くといいだろう」
「そうですか、ありがとうございました」
俺は騎士様に手短に礼を告げると、さっそくその冒険者ギルドへ向かうことにする。
南通りは馬車も通るためかかなり広めに作られており、道の両脇には屋台が並んでいる。
もっとも、まだ朝も早いからか半分以上の屋台は店員がいなかった。
道の途中にあった串焼き肉の屋台から、おいしそうなにおいが漂ってきたがとりあえず宿を取ってからまわることにして、足を進める。
しばらく進むと四方に俺が歩いてきたような大通りが繋がっている円形の広場のような所に出た。
おそらくここが中央広場だろう。
そしてたぶんあの赤レンガの大きな建物が冒険者ギルドだろう。というのも壁に何かしらの文字が書いてあるのだが、それが日本語でも英語でも無いのである。
会話が日本語で通じてるのだから文字も日本語で書いとけよと思いつつ、そのよくわからない文字を睨んでいると軽いデジャヴが。
そして頭の中に直接文字の意味が浮かんでくる。
”冒険者ギルド”
どうやらここは冒険者ギルドで間違いないようだ。
ステータスを確認すると新しく解読Lv1が追加されていた。スキル便利すぎるだろう。
ともかく、俺は冒険者ギルドに足を踏み入れた。
ギルドの中は想像していたよりもずいぶん静かなものだった。ギルドといえば常に何かしら騒いでいるイメージがあるのだが、まだ朝と呼べる時間であるためか、カウンターに座っている受付嬢以外には、数人の人影しかなかった。
ギルド内には、入り口から見て正面に複数の受付があり、それぞれ別の役割があるようだった。
受付の左側の壁には複数の紙が貼り付けてある板があるが、どうやらその全てが何かしらの依頼らしい。
その数は優に百枚は超えており、自分にあった仕事を探すだけでも骨が折れそうだ。
受付の右隣はちょっとした店になっており、薬なんかを売っているのが見て分かる。
そのまた右にはいくつかのテーブルが置かれており、冒険者達の憩いの場となっているようで、飲み物なども買えるっぽい。
俺は、とりあえず新規冒険者受付口と書かれている受付に向かい、そこで何かしらの書類整理をしていた職員に話しかけた。
「あのーすみません」
「え?あっ、はい、冒険者ギルドへようこそ、こちらは新規登録者窓口になります」
俺に気がついた職員は事務的なセリフと笑顔でこちらを伺ってくる。ブラウンの髪を頭の後ろで纏めているなかなかの美人だ。こっそり鑑定で名前を調べるとノーラさんというらしい。
「はい、新しく冒険者になりたくて来ました」
「登録には登録料として銀貨1枚が必要ですがよろいいですか?」
登録にはお金がかかるらしい。まぁ当然か。俺はノーラさんに財布から取り出した銀貨を渡す。
「はい、確かに。・・・それではこちらの水晶に手を置いてください」
そういってノーラさんはカウンターの横から水晶玉を取り出す。
「えっと、これは?」
「この水晶は、あなたの名前や今まで倒したモンスターなどギルドカードを作るうえでの必要な情報を読み取るものです」
「なるほど」
俺はひとつ頷くと水晶玉の上に手を置く。すると水晶玉が淡く光だし、その光がおさまった頃ノーラさんが、少々お待ちくださいと言い、奥に引っ込んでしまった。
手持ち無沙汰になった俺は、暇つぶしとして他の冒険者のステータスを覗いてみることにする。
名前 カイト
種族 人間種
性別 男
Lv 5
装備 銅の剣 皮の盾 皮の鎧 皮のグローブ 皮の靴
スキル なし
依頼板を見ていた駆け出しっぽい冒険者を鑑定するとステータスが表示される。
すると装備の欄に防具が表示されている。他の冒険者を確認してもみんな何かしらの防具を見に着けていた。
俺や職員は表示されていないので防御力の無い服は防具にはカウントされていないのだろう。
今度防具屋を探そうと考えているとノーラさんが戻ってきた。
「お待たせしました。こちらがリュージ・カグラザカ様のギルドカードになります」
「ありがとうございます」
俺はノーラさんからはがきサイズの白いカードを受け取る。
ギルドカードには俺の名前の他にランクDと書かれていた。おそらく、ランクDってのが俺の冒険者としてのランクなんだろう。
このランクやギルドについても聞きたいことがいろいろとあるが、とりあえずは宿をとって休みたい。
「あの、ここら辺で安くて安全な宿ってあります?」
「それならギルドを出て右手の東通りにある冒険者の宿に行かれるといいですよ。受付でギルドカードを見せれば割引してもらえるはずです」
なるほど、冒険者向けの宿ということか。しかし冒険者みんなに割引をして儲けは出るのだろうか?
疑問に思いつつも俺はノーラさんに礼を告げて冒険者の宿へと向かうのだった。
スキルには、それぞれ取得条件があります。(例 剣術→剣を振る 暗視→暗闇に目を凝らす 解読→未知の文字を読もうとする)
ですが、今のところはそのスキルが必要となったら覚えると思っていればOKです。




