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一般高校生の異世界ライフ  作者: テトメト
勇者と魔王と愚かな選択
40/47

呪い

今回はちょっと長めです

「ふぃーちかれたー」


無事ドラゴンゾンビを仕留めた俺はドラゴンゾンビの背中を転がり落ちた先の地面で大の字なって休んでいた。イメージ力を振り絞りすぎた所為で未だに頭の奥がじんじんと痛む。


「ご主人様!」


ドラゴンゾンビの死体?の向こうからセシルの声がする。どうでもいいけどセシルさっきからご主人様しか言ってないな。


「いよっと」


寝転がっている体勢から足を折り曲げ、伸ばした反動で起き上がる。

そこへ死体を回り込んできたセシルが飛び掛ってきた。


「どうわぁっ!」


全速力で突っ込んできたセシルを支えきれずまた後ろにひっくり返った。


「せ、セシル?」


俺の胸に顔をうずめ頭を上げないセシルにこわごわ声をかける。

セシルは顔をガバッと上げ濡れた瞳で俺を見据えた。


「バカです!ご主人様はおバカです!」


なんかめっちゃ怒ってるんですけど。


「い、いや、ちょこっと無茶したのは悪かったって。でもセシルのおかげで助かった。ありがとう」

「え、いや・・・あの、ご主人様の身が危ないと思ったら体が勝手に動いて・・・ご主人様を守るのは奴隷である私の役目です。どうか頭を上げてください」


いや別に下げてないけど。むしろセシルの下敷きになってるけど。


「はぁ・・まぁとりあえず退いてくれフラン達のところへ戻ろう」

「は、はい。わかりました」


とりあえずどいてもらったセシルと共にフラン達がいる馬車へと戻る。と言ってもそんなに離れた訳でもないし馬車はここからでも普通に見えるがな。

あっロムが手を振ってる。振り返してやったら千切れんばかりに返された。


「あ、そうだセシルに剣を・・・あちゃ~こりゃだめか」


ずっと握りっぱなしだったレイピアをセシルに返そうとして気付いた。俺が握っていた柄から先。刀身が完全に燃え尽きて無くなっていた。通常は俺が燃やしたいもの以外は燃やせないはずだがあれだけ無茶をしたのだからしょうがないだろう。むしろおれ自身が溶けていなかったことに感謝するべきかもな。


「あ~すまんセシル。レイピア溶けちまったみたいだ。まぁもともとドワリムに着いたら買い換えるつもりだったんだがそれまで我慢してくれな」

「いえ、私の剣はご主人様の剣。どう使おうとご主人様の自由です」

「セシル・・・」

「ですが」

「?」

「私の剣がご主人様の助けになったのだとしたらそれはとても嬉しい事だと思います。新しい剣楽しみにしていますね」


またそんな自分を卑下することを、と怒ろうかとしたらそんなことをにっこり笑って言われるのだこれじゃぁ怒る気も失せちまう。


「ああ。とびきりいいのを買ってやるからな。期待しておけよ?」

「はい。期待してますね」



「リュゥーージィーー!」


小さくふふっと笑ったセシルの横顔を見てほっこり和んでいると今度はロムが突撃してきた。


「おっと」


セシルと違い普通の女の子の突撃ぐらいはレベルが上がった今の俺じゃあよろけもしない。

がっしりと抱きとめたロムはテレビのヒーローに実際に会った子供のようにキラッキラした目で俺を見ながら一気に捲くし立てた。


「あのね、あのね!ドラゴンがね!こう、ぶわーて吐いてねリュージがやられちゃう!って思ったのにねセシルおねえちゃんがね!ぴゅーってねそしたらおっきい炎がどーんて!でねでね!リュージがねぶわーってなったの!私とおんなじだったの!そしたらね剣がねぼーってなってビューンてドラゴンの首にねジューってね!最後ね!セシルおねえちゃんがね!どーんてね倒したの!」


「お、おう。そうかよかったな」

「うん!」


正直擬音が多すぎて何言っているのか全然伝わらないが俺から手を離し身振り手振りで自分の興奮を必死に伝えようとしてくるロムが微笑ましかった。


「ロムさん。リュージさんが困ってしまってますよ」


とそこへ馬車を引いてフランが追いついた。かなりの強敵だったがなんとか対した怪我もせず乗り越えられたことにやっと実感が湧きふぅっと息を吐いた。



「すばらしい!まさかアイツをこんなあっさり倒してしまうとは!あれでも生前は高位のドラゴンだったんですけど、ね?」



息を吐き出した直後でなければ悲鳴の1つでも上げていたかもしれない。それぐらいの圧倒的強者の雰囲気を纏った存在が気付いたらそこにいた。

俺達から5メートルほど離れた場所。やろうと思えば一足で届きかねないぐらいのところに突如現れたそいつは大まかには人間のイケメンの優男に見えるが細部が明らかに違う。

まず目に付くのはその背。まるで蝙蝠のような紫の翼がバサッと開かれておりさらにその頭部の左右には羊のようなくるっと丸まった角が付いていた。


悪魔。そうとしか言いようが無い異形の存在がそこにはいた。


セシルとロムもヤツの強さが分かるようでピリピリした気配を出しながらヤツの一挙手一投足に全神経を集中させている。

フランは良く分かってないようだが俺達の雰囲気が尋常じゃないことは伝わったようで口を噤んでいる。


「おっと、私としたことが自己紹介がまだでしたね。私の名はアデス。これでも上級悪魔の1人なんですけど、ね?」

「・・・その上級悪魔様が俺達にいったい何のようだ?」


俺も一切警戒は怠らずに悪魔・・・アデスを睨みつけながら問う。このタイミングで出てきてさっきのセリフ。あのドラゴンゾンビをけしかけたのはコイツで間違いないだろう。ひいてはこの謎空間に俺達を引き込んだのもコイツの可能性が高い。

なんとか戦闘を回避しつつこの空間からの脱出をしたいがさすがに難しいか?


「いえ、用というほどではありませんが少しあなたに興味が湧きまして、ね?私の作戦を尽く潰し、ワンメイドのドラゴンゾンビすら打倒して見せた。アイツを配下に入れるのに私がどれほど苦労したか・・・アイツの肉体を再生させるのにどれだけの時間と魔力がいるかあなたに想像できますか、ね?」

「んなもん知るか。人を襲わせといて返り討ちにあったからって俺に文句を言うのはお門違いってもんだぜ?」

「くふふ、そうですね。そのとおりです。あなたには関係の無いことだ。・・・・おや?この匂い。どうやらあなたは悪魔を殺したことがあるようです、ね?と言ってもかなり下級の悪魔の様ですし他の魔物に乗り移っていたのでしょうが、ね?」


下級悪魔に心当たりは無いんだが・・・そういえば昔名前にデビルと入っていた魔物を倒したような倒していないような。


「・・・もしそうだとしてお前に何の関係があるんだ」

「くふふ。いえ、私には何も関係はありませんよ?」


イラッ☆


「ちっ。お前は一体何がしたいんだ」

「ふむ。何がしたいのか、ですか・・・そうですね。私が何をしたいのかといえばそれは・・・」



「時間稼ぎですよ?」



「「「リュージ(さん)(ご主人様)!!」」」


「!?」


まったく気付かなかった。みんなの叫びで周りに意識を向けた瞬間にやっと自分に向けられる純粋でそして強い殺意に気付いた。

その殺気に反応し咄嗟に後ろに振り返り俺へといなずま型の短刀を突き刺そうとしている小柄な人影を視界に収めたがそこまでだった。

もともと目の前のアデスに全神経を集中していた時の完全な不意打ちだ。みんなの注意が無ければ実際に刺されるまで気付かなかっただろう。

そして咄嗟の自体に反応できていないのは他のみんなも同じ。俺が先頭にいた為俺の背後に出現した人影に気付き声を掛ける事は出来たがそこから俺を助けなければと考え、手足に動くよう命令を出し実際に行動に移し俺を助けるためには思考の空白を突かれた今では圧倒的に時間が足りなかった。



1人の少女を除いては。



その少女は確かにリュージの一番近くには居たが他の少女たちと同じ。リュージの身に危険が迫っている事は理解できてもその次へと思考を進める時間は無かった。

だがその少女には次の行動を考える必要は無かった。

リュージの身に危険が迫っている。それを認識した時点で体が勝手に動いていた。

愛?それもあるだろう。忠義?それもまたしかり。しかしその体を動かしていたそのどちらでも無い。

少女の体を突き動かしていたのは呪い。”ご主人様の盾になる”という奴隷紋という名の呪いだ。


その少女。セシルは呪いに従いリュージと人影の間に体を滑り込ませる。


「セシル!?」


どむ。っと鈍い音がセシルから聞こえた。セシルに短刀を突き立てた人影は短刀から手を離しすばやくアデスの元へと移動したチラッと翼のような見えたからあいつも悪魔でアデスの仲間らしいがそんなことは今どうでもいい。


「セシル!?おいセシルしっかりしろ!」


ゆっくりと崩れ落ちてきたセシルの体を後ろから抱きとめ寝かせる。


「待ってろ!今ポーションを飲ませてやるからな!」


俺は急いでアイテムボックスを呼び出しポーションを取り出そうとする。くそ!急げ!早くしろ!


「ごしゅ・・・じん、さま?」

「セシル!?喋るな!いいから黙ってろ!」

「・・・ごしゅ・・・さま・・・よか────────」

「セシル?セシル!!!!!!!」


セシルは小さく微笑むとくたっと体の力を抜いた。そのセシルの体から何かが、とても大切な何か抜け落ちふわっと空気中に溶けていくのが視えた気がした。

あぁ、認めたくない。理解したくない。だけど分かってしまう。感情がいくら否定しても理性が、本能がそれを分かってしまう。

セシルは、自分の事よりも俺の事を一番に考えてくれる易しい少女は今この瞬間俺の腕の中で、

















──────────────死んだ。















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