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一般高校生の異世界ライフ  作者: テトメト
異世界とオオカミと犬耳少女
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盗賊

「俺たちは盗賊だ、命が惜しければ、有り金全部と装備を置いていきな」


 最初に俺に声をかけてきたリーダーっぽいやつが腰の剣を抜き放ちそう言った・・・


 ・・・が、俺は盗賊の言ったことを一切無視して、ヤツらが来たほうと反対方向へ向けて全力で走って逃げ出していた。

 具体的には「俺たちはとうぞ」の辺りからすでに背中を向け逃げ出しており、事前にセリフを練習していたのだろう。盗賊のリーダーは獲物が逃げ出しても律儀に最後までセリフを言い切り、剣を抜き放った時にはすでに結構な距離が開いていた。


 俺のあまりにも潔のよすぎる逃走劇にポカンとしていた、ほかの盗賊たちもリーダーがセリフを言い終わったころに我に返り、全員で俺を追いかけだした。


「ギャーーーーース、ムリだってマジムリだってむりむりむりオレ異世界召喚されたばっかのぴっかぴかのニュービーだぜ!?いきなり盗賊のそれも五人!?ぜってーむりだろゲームバランスどうなってんだおかしいだろおい!」


 俺は誰に対するものかも分からない叫びを発しつつ全力で逃げる。

 ちらっと後ろを振り向けばあの5人がフードを外してすんげー形相で追いかけてきてた。マジ怖い。

 てかさっきよりも距離詰まってる気がするし、日ごろの運動不足と叫びながらの全力疾走のせいですでに脇腹がヤバイ。


「どうすんだよこれ、このままじゃ絶対追いつかれるぞ!つってもLV1のへぼステータスじゃ、あんないかにもな盗賊連中と戦闘できるとは思えんし・・・」


 ステータス?

 そうだ!やつらを鑑定してやればなんかうまい弱点とかわかるか!?

 そうじゃなくてもやつらの使う武器ぐらいは知ってた方が有利だろう。

 そう考え俺はまたちらりと、今回は明らかに近くなってる盗賊たちを全員視界に収め鑑定と念じる。

 すると盗賊たちの周りに出てくるそれぞれのステータスウィンドウ。

 それら全てをさっと流しみた俺の脳裏に浮かぶ疑問そして理解。

 俺は走る速度を緩めると、抱えていた剣を抜き、振り返って止まる。

 盗賊たちも慌てたように止まり、ある程度距離をとって剣を抜きリーダーを中心に横に少し広がって止まる。

 やはりか・・・一瞬鑑定が失敗したのかとも思ったがそうじゃなかったようだ。

 剣を抜いたのはリーダー1人(・・)だけだった。


 よく考えてみればおかしなところはいくつかあった。

 あいつらは今も自分の横に浮いてるステータスウィンドウに気づいてないようだから、これは俺にしか見えてないのだろう。

 だとすれば最初にやつらから声をかけられたとき、俺はやつらから見れば、背中を向け空中をにらみながら独り言を呟いていたように見えただろう。

 こんな隙だらけな状況に対してやつらは、俺に切りかかるわけでも、取り押さえるわけでもなく普通に声をかけてきた。

「おい」ってな。

 他にもあっさり俺に逃げられたことや、逃げる俺にぜんぜん追いつかなかったことも変ではある。

 もっとも、最後のはステータスを確認した今となっては不思議じゃないがな。

 俺はもう一度、盗賊のリーダーのステータスを確認する。


 名前 ダスク

 種族 人間種

 性別 男

 Lv 1

 装備 銅の剣

 スキル なし


 どうやら自分以外の相手を鑑定したときは詳しい数値は省略されるらしい。

 こいつもしかしたら俺より弱いんじゃね?と思った。LVは同じだが、武器は銅の剣より鉄の剣のほうが強そうだし、俺は剣術のスキルを持ってるしな。

 てなわけでいい加減走るのがしんどくなってきていた俺は、今盗賊たちとにらみ合いをしながら息を整えている。

 なぜかは知らんが戦おうと決めて剣を抜いて対峙するとすうっと頭が冷えていって思考がクリアになった気がする。余計なことを考えるのやめたからだろうか?よくは分からないが今はどうでもいい。

 盗賊たちは自分達のほうが人数が多いのだから囲んでしまえばいいのに、それすらも思いつかないようで、全員が俺の方を、いや、俺の持つ剣を見ている。

 やっぱりこいつら盗賊とはいえ、どが付く素人のようだ。それも下手したらこれが最初の仕事なのかもしれないレベルで。

 ちなみにリーダー(ダスク)以外の盗賊もLvは1で、リーダーとの違いは装備の欄がなしになってるということだけだ。


「・・・どうした?、降参して荷物を置いてく気になったか?」


 これからどうしたもんかと考えてると呼吸が整ったのかダスクとやらが話しかけてきた。


「バカ言え、誰が盗賊なんぞに恵んでやるものか、返り討ちにしてくれるわ」


 ついさっきまでみっともなく逃げ惑ってなければ、もうすこし格好がついたかもしれない。


「はっそうかよ」


 やはりただの虚勢だと判断したらしく、徐々に距離を詰めてくる盗賊たち。

 本格的にどうしたもんか、最悪適当に剣を振り回してからまた逃げ出すしかないとしても、やはり積極的に人を切りたいとは思えない。

 いい感じにダスクの持ってる剣を弾き飛ばしたりできればいいんだけど、攻撃スキルとかは持ってねぇしな、


 とたん俺の頭に1つの単語が浮かんでくる。おそらく剣術の攻撃スキルだろう。

 だからこういうのは、出し惜しみせずに最初から教えといてくれよ。とかまた誰に対する文句なのかもわからないことを思いつつどう動くべきか考える。

 現状ダスクと俺との距離は目算で5メートルほど、俺は剣を右手で握り右足を前に出し左足を少し引いてダスクに剣先を向けている。

 俺は学校の授業以外で剣道をやっていたりもしていないのだが、なんとなくこう構えたほうがいい気がしてこんな構えを取っている。これも剣術のスキル効果なのかもしれない。

 一度に5人を相手取る技量は俺には無いため、当初の予定道理に狙いをダスクの持つ剣に定め、ダスク以外の武器を持たないやつらを意識から外す。

 ダスクは、この間も小さく一歩ずつ近づいており残りは4メートルぐらいになっていた。

 もう少し、もう少しだけ引き付けて・・・今だ!

 鑑定のように思い浮かべただけでスキルが発動しても困るのでなるべく考えないようにしつつ、ダスクに向け左足を一歩踏み出す。

 さっきまで棒立ちだった俺がいきなり近づいてきたことに驚いたのか、ダスクは出しかけていた足を慌て戻そうとして、たたらを踏んでいる。

 やっぱりこいつど素人だな。

 俺はその隙にもう一歩右足を大きく踏み出す。

 これでこちらから剣をの伸ばせば相手の構える剣に届くであろう距離まで近づいた!

 俺は、剣をぶら下げていた右腕ごと体に巻きつける様にして剣を体の左側へともっていく。

 そして、剣を左から右へ水平に動かし、相手の剣の中ほどを打つイメージで・・・


「スラッシュ!」


 ・・・キンッ


 スキル名を叫んだ瞬間、俺の持っていた剣が淡く水色に輝いたかと思うと、剣を持つ腕ごと何か強い力に引かれるように真横に跳ね飛んだ。

 途中ダスクの持つ剣にぶつかったのだが、特に抵抗も無く小気味良い音を立てて断ち切り(・・・・)剣先は何回転かした後地面に転がった。

 俺と盗賊たち、特にダスクはこの結果にしばらく呆然と口を開き固まっていたが、徐々にその顔を青くしていった盗賊たちは、突然後ろに大きく跳んだかと思うと、額を地面にこすり付けてきた。

 いわゆるジャパニーズ式DO・GE・ZA☆である。


「す・・・スキル持ちの方とは、知らずにとんだ無礼を!どうか、どうか命だけはお助けを!」


 ダスク達は急に態度を改め俺に慈悲を請う。

 俺はといえば、スキルのあまりの威力に今だ剣を振り切った後の体勢のまま呆然としたままだった。


「お、おう・・・とりあえず頭上げろや」


 俺は混乱する頭を振って思考を切り替え、流れるような動作で剣を落ちてた鞘にしまい、とりあえず頭を上げさせる。

 このときチラと見た俺の剣には傷ひとつ付いていなかった。


「・・・ッ」


 ゆっくりと頭を上げた盗賊達の顔には一様に恐怖が貼り付けられ、真っ青な顔をしていた。

 俺がそんな簡単に人を殺すようなやつに見えるのかと若干ショックだったが、よく考えるとこいつらは盗賊で、しかも俺に剣を向けてきたのだから殺されてもおかしくはないのかもしれない。

 だからといって殺す気は無いが。


「あーーとりあえず殺すつもりはねぇから安心しろ」


 そういうと盗賊達の顔に一瞬安堵が浮かんだがその顔はまたすぐに引き締まる。

 殺さないというのなら自分達に何をさせようというのか、ってことだろう。

 別にして欲しいこともないのだが・・・


「あっ、そうだひとつ聞きたい事があるんだが」

「なんでしょう」


 ダスクが真剣な顔をして、ほぼノータイムで聞いてくる。

 そんなに気負われても困るんだが・・・


「ここから一番近い町への行き方を教えてくれ」

「・・・はい?」


 俺の目下最重要な問題である遭難状態からの脱出のために町への行き方を聞くと、ダスクは真剣な顔から一転ポカンとした顔をした。

 おそらくもっと無理難題を吹っかけられるとでも思っていたのだろう、この変化はなかなか滑稽でおもしろかった。


「だから一番近い町への行き方だ、あ、あとおおまかな移動時間も教えてくれるとありがたい。」

「あ、はいここからですとアストの町が一番近いです。このまま道をまっすぐ進めば途中休まれたとしても明日中には到着するかと・・・」


 ふむ、今がお昼過ぎだとして大体一日半の距離か、結構あるな。

 正直腹へってきてるんだがこいつらに飯を期待するのは間違っているだろう。

 よく見たら基本的に手ぶらだし、食料を持っているとは思えん。

 持っててもかったい黒パンとかだろうしそれなら町まで我慢してうまい飯を食うことにしよう。

 よし、そうと決まればすぐ出発だ、これからのことは安全な宿ででも考えればいいしな。


「おう、ありがとな」


 おれは手短に礼を言うと盗賊たちに背を向けて歩き出す。本当は背中を向けるべきではないのかもしれないが、あいつらは俺のことが怖いみたいだし大丈夫だろう。

 そして数歩歩いた段階で違和感に気づいた。足の裏を見てみると靴下にはでかい穴が開いていた。というか底で穴が開いてない場所の方が少ないありさまだった。


「おい、お前達ちょっといいか」


 俺は振り返りさっきの盗賊たちにまた話しかける。

 盗賊たちは俺が背を向けて歩き出したので、自分達も立ち去ろうとしていたのだろう、全員がすでに立ち上がっていた。

 そんなときに突然俺が話しかけたもんだから、みんな飛び上がって気を付けの姿勢になっていた。


「あーっと、お前達靴とか持ってないか?」


 いまさらだが、食べ物すら持ってなさそうなのに予備の靴なんか持ってるわけ無いか。


「えっとサンダルでもよろしいでしょうか?」


 俺がやっぱり忘れてくれと言って立ち去ろうとするとそれより前にダスクがそう聞いてきた。


「おう、裸足じゃなければこの際なんでもいいぜ」


 よく見たらダスクたちもなんか革でできたサンダルっぽいのを履いてるしもしかしたら同じやつがもう一足あるのかも、と思ったらなんとダスクは今まで自分が履いていたやつを脱いで俺に渡してきた。

 自分から欲しいと言い出した手前断ることもできずにその生暖かいサンダルらしきものを受け取る俺。

 それを見届けると盗賊たちは今度こそ完全に撤収していった。


「まぁ・・・無いよりマシか・・・」


 おっさんが人肌で暖めたサンダルを履いて喜ぶのは、かの有名な武将ぐらいであろう。

 俺はげんなりしつつ、くつしただったものを脱ぎポケットにつっこむと、サンダルを履いた。

 これが美少女が胸の谷間で暖めた、とかだったったら泣いて喜ぶけどおっさんのくっさい足じゃーなー。

 とかどうでもいい事を考えつつ一路アストへと足を進めるのであった。

スキルは基本的に念じると発動します。

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