一応商人
「リュージさん!!」
ドアよ砕けろ!とばかりに勢いよく扉を開けてフランが飛び込んでくる。
フランには何も言わずに戦い行ったからな。町の異変には当然気付いていただろうし心配掛けたのだろう。
「フラン・・・」
「また女の子が増えたんですって!?私の馬車はもう積荷が積んであるのでこれ以上乗れませんからね!」
「・・・え?そっち?」
あれれ~おかし~ぞ~?俺の心配は?今回も一歩間違えれば死んでたかもしれないんだけど・・・
「なんでもまた魔獣を倒したそうですがそれはアストでも同じですし今回は大した怪我も無いのでしょう?そんなことより護衛任務の話です」
「そんなことて・・・」
「私が雇った護衛はリュージさんとセシルさんです実際戦力としてはリュージさんだけで足りてるどころか戦力過剰ですし、その子を雇う必要はありませんね。・・・もっともそれなりの乗車賃を払ってくれるなら話は別ですけどね」
「ハハッそういえばフランは一応商人だったか」
「一応って何ですか!一応って!確かにリュージさんの前ではろくに商いをしていませんけど商人ギルドにも登録している列記とした商人です!・・・それで?その子の分の乗車賃は貰えますよね?」
「そうだなぁ・・・」
別に所持金にゆとりもあるし払ってもいいのだがなんとかならないのかと思うのは往来の貧乏性がゆえかそれともフランの言葉にどこと無く違和感があったからか。
「うーん、フラン。確か護衛任務の依頼内容はフランの護衛をする代わりに俺達を王都まで乗せていく、だったよな?」
「・・・ええ、そうですね」
すっと視線を逸らしつつ答えるフラン。どうやら正解っぽいな。
「どこにも2人って明言されて無くね?」
「デスヨネー」
「うん。じゃあロムも俺達の内の1人って事でよろしく」
「はぁ、フランです。よろしくお願いします」
「ロムです。おねがいします」
フランとロムは互いにぺこっと頭を下げて挨拶する。
「はぁ、ちょっとは馬車の修理費の足しになるかと思ったんですけどね・・・」
「うん。やっぱりフランは商人向いてないと思うぞ?」
要求を告げるのが直接的過ぎる上にポーカーフェイスも出来てなくて諦めも早い。まったく商人向きとは思えない。
「・・・やっぱりそうですかね・・・時々思うんですよね・・・お父さんの後を継いで行商人になったもののなかなかお金は貯まらないしオオカミに襲われて積荷と信用は失うし馬車の修理に貯金がほとんど溶けちゃうしリュージさんはなんかありえないほど儲けているし私っていったい今まで何やってたんだろ・・・」
フランは光彩の消えた瞳で虚空を見つめつつ半笑いでぶつぶつ呟いている。マジコエー。
「リュージ、この人怖い」
「せ、せやな。おーいフラン。戻って来い」
「ハッ!私は一体何を・・・」
「うん。まあいいんじゃないか?・・・そんなことよりすぐにでも出発したいんだが大丈夫か?」
「ええ。準備は万端です。ですがさっきも言ったとおりロムさんの乗るところがありませんが・・・」
「ん?積荷をある程度アイテムボックスにしまえばいいだろう。ってか全部アイテムボックスにしまおうか?」
レベル1でギリギリ壊れた馬車を収納できるぐらいの容量はあったのだ食料や衣服が入っているとはいえレベル3になった今のアイテムボックスならロムが乗る分の荷物どころか馬を含めた馬車全てを収納することも出来るだろう。・・・馬車までしまったら何のために一緒に行くのか分かったもんじゃないが。
「そうですね・・・それじゃあ商品以外の食料などをお願いしましょうか」
「それだけでいいのか?商品もしまった方が馬車の速度も上がるんじゃないか?」
完全な善意のつもりでそう聞いた途端フランがブワッと目に涙を浮かべた。
「そんなことしたら私の存在意義がまた無くなるじゃないですかー!うわーん!」
まあ確かに行商人なのに荷物の運搬をしないってのは何商人なのか分かったもんじゃないな。
「お、おう何かすまんかった。少なくとも俺達はフランに感謝しているから。な、セシル?」
「はい。私たちがルーセルに来れたのもひいてはロムと出会えたのもフランさんのおかげです」
「そうなの?ありがと、フラン」
「えぐえぐ。・・・ホント?私のおかげ?」
「そ、そうだフランのおかげだ。だから今回も1つ頼むよ」
「・・・はい!任せてください!」
フランは涙を振り払い小さくガッツポーズをとって気合を入れる。そんなフランを見る俺達の心は今1つになっていた!
『『『チョロいな(です)』』』
やはりフランは商人には絶対向かないと心から思う俺達であった。
「で?次はどんな町へ行くんだ?」
場所は変わって馬車の上領主の計らいで大した検査も受けずあっさり城門を超えた俺達は一路北へ向かって足を進めていた。
「はい。次の町はドワリムという町です。ドワリムは所謂鉱山都市といわれる町で豊富な鉱山資源とその資源を活用した鍛冶が非常に発達した町ですね。あとは山にある都市の特徴として獣人種が少なく小人種が多いなどが挙げられますね。逆に平地や草原だと獣人種が多いんですよ」
「ほう!鍛冶が発達した町にドワーフか!ちょうど俺の剣も折れちまったし防具もボロボロになったからな!この機会に装備を一新しよう。セシルとロムの分も新しい装備買おうな」
「はい。楽しみです」
「・・・」
「ロム?」
素直に喜びを表したセシルと違いロムはうつむいてズボンを握り締めている。普段の元気一杯な様子との違いに首をひねってたずねるとロムは声を搾り出して答えた。
「ごめんなさい・・・私の所為でリュージの剣が・・・」
「あー」
どうもロムは自分が俺の剣を折ってしまったことを気にしているらしい。気にしなくてもいいのに。
「別に気にしなくてもいいぞ?ロムが折らなくてもどの道新しい剣は買っただろうしな」
よく考えたら鉄の剣て初期装備なんだよな。むしろいままで良く持った方だよ。
「そんなことよりロムはどんな装備が欲しい?それなりに所持金はあるからある程度のものは買えるぞ?ロムは力が強いからな、でかい大剣とかごついハンマーとか、あっモーングスターとかもいいな」
ロリっ子が厳つい武器を振り回すのは一種のロマンである。
「リュージ・・・うん!どんなのがあるか楽しみ!」
「そうだなぁ」
俺達はまだ見ぬ新しい武器へと思いを馳せる。
「ドワリムでは採掘ギルドに入れば誰でも採掘が出来ますからねリュージさん達ならミスリルやオリハルコンなんていう最上級の鉱石もあっさり見つけそうですねぇ・・・」
「ミスリル!オリハルコン!夢が広がるな!」
どちらもゲームなどでおなじみの最強装備の材料の鉱石だ。そんなもので作った武器はいったいどれほど強いのか、再び空想の世界にトリップしかかった俺の意識を
「・・・ん?」
ドプリとなにか粘性の膜に突っ込んだような不快な感覚が繋ぎとめた。
「どうかしましたかご主人様」
突然辺りをキョロキョロ見出した俺にセシルが尋ねてくる声は掛けていないがロムも心配そうな顔で俺を見ていた。ちなみにフランは御者台に座っているので顔は見えない。
「ああ、いや多分気のせいだろう・・・」
「そうですか?体調が優れないようでしたらいつでも言ってくださいね」
「いやホントに大丈夫だからな」
セシルに軽く手を振って答えつつ馬車から頭を出して前を見る。さっきまでの浮かれた気持ちはなりを潜め、一抹の不安を抱えながら・・・
これで第2章完ですね。第3章は短めだと思います(たぶん)




