奴隷紋
「おほん。そろそろ話を進めてもいいか?」
「え?」
「はい、どうぞ」
ロムが泣き止むまで俺に頭を撫でられているのを一同生暖かく見ていた後領主が聞いてきた。が、まだ何か話すことがあるのだろうか?
ちなみにロムはこの場に他の人が居るのを完全に忘れていたようで顔を真っ赤にしてまた俺の腹に顔をうずめていた。可愛い。
「うむそれでは、ルドルフ」
「お任せください。ハイ」
領主の命を受けロムと一緒に入ってきた太ったおっさんがキモイ愛想笑いを貼り付けつつ揉み手で近づいてきた。
「えっと、この人は?」
「・・・今の私のご主人様」
「私付きの奴隷商人だ。ロム君は普通に牢屋に入れても簡単に脱出できてしまうだろう?だから奴隷紋を刻んで行動を縛らせてもらった。今から主をリュージ殿に移すが時間も無いので使役条件の再設定や奴隷の解放は次の町に着いてからにしてもらいたい」
「いやちょっと待ってください」
なんだ?なんか知らない単語が一気に出てきたぞ。
「えーと、奴隷紋?行動を縛る?使役条件って?」
「?セシル君はリュージ殿の奴隷だと聞いたのだが奴隷紋を刻んではいないのか?」
「あー、セシルはなんというか知り合いの冒険者に譲ってもらったみたいな感じだからよく知らないんですよ」
といいながらセシルに目を向けるとセシルは全てを理解しているとばかりに1つ頷き説明を始めた。
「えーと、奴隷紋というのは人を奴隷にするときに魂に刻む呪いの事です。魂に直接刻むので見た目では分からないのですが奴隷になった人にはいろいろと制約がつきます。その内の1つが使役条件の設定です。これは奴隷紋を刻むときに所有者が奴隷に対して一方的に決められる契約内容ですね」
「なるほどな。ちなみにセシルはどんな使役条件が掛けられているんだ?」
「私に掛けられている使役条件は”ご主人様に剣を向けない””ご主人様の盾になる””ご主人様の命令に従わないと激痛が走る”の3つです」
「へー、・・・ん?あれ?セシル命令違反してなかったっけ?」
確か最初にあった日の森で命令違反をして俺とおしゃべりしていたような。
「えっと、・・・えへへ」
「いや笑っても誤魔化せないから」
激痛が走るってどれぐらい痛いんだろうか?まさか楽しそうに俺の話を聞いていたように見えたセシルが痛みを堪えていたなんて。
「・・・大丈夫なのか?」
「はい。今はもう痛くありませんしあの時はご主人様とお話できることが何よりも嬉しかったですから」
「セシル・・・」
セシルはポッと頬を染めなんとも嬉しいことを言ってくれる。
甘い雰囲気を出す俺とセシルに未だ俺にしがみついているロムがちょっとムスッとした顔をし奴隷商は愛想笑いを引きつらせている。
「使役条件違反による罰は気の持ちようで耐えられるようなものでは無いのですが。ハイ。ちなみにロム様の使役条件は”主人の命令に従わないと激痛が走る”と”力の使用禁止”ですね。ハイ」
「力の使用禁止・・・」
そういえばロムは俺に力一杯抱きついていたようだが全然痛くない。領主達がロムを奴隷にしたのもこの使役条件でロムの攻撃力を奪って脱走できないようにするためだろう。
「ふーん。で?その使役条件の変更は今は出来ないわけ?」
「ハイ。魂に刻まれた強力な呪いを書き換える訳ですからそれなりに面倒な手順が必要なのです。ハイ」
「うむ。一応今回暴れたのはサーカスが隠して連れ込んだ普通の魔獣でその魔獣もすでにリュージ殿が討ち取ったということにしてある。だがこの町にはロム君を知っているものも多数居るだろうからこの町に滞在するのは余計な面倒を招くことになるだろう?だから簡単に出来る所有者の変更だけを今すぐやってしまおうということだ」
つまりロムを渡したら早く出て行けということだな。
「なるほど。ところで所有者の変更はどうするので?」
「ハイ。難しいことはありません。私がロム様の所有権を放棄しますのでリュージ様がロム様を保護すればそれで所有権がリュージ様に移ります。ハイ」
「?奴隷の所有権ってそんな簡単に破棄できるのか?」
「いえ、今回は特別な処置をしているからです。ハイ。普通は所有者が死ななければ権利は消滅しません。ハイ」
?つまりは所有者を殺せば奴隷を奪えるって事か?・・・以後気をつけよう。
「じゃあさっそく頼もうか」
「うむ。それでは万が一我々が所有者になったら面倒だからな我々はこれで失礼するとしようか。ではまたなリュージ殿。行くぞデリック」
「はい。ヘンリー様」
領主は話は終わったとばかりに騎士団長を連れて帰っていく。
「それでは私も部屋の前で待っていますね」
「あっ、ちょっと待ってくれ」
「?」
「ついでにフランを探してきてくれ。商人ギルドか冒険者ギルドにいるだろう。アストみたく身動きが取れなくなる前にさっさと町を出るぞ」
「はい。わかりました。失礼します」
セシルも部屋を出てパタパタとフランを探しにいった。
所有権の譲渡はあっさりと終わった。
最後に奴隷商が部屋を出ていってすぐにロムのステータスを見ると俺の奴隷になっていた。
名前 ロム
種族 鬼人種 奴隷
性別 女
Lv 23
HP 575 (25)
MP 210 (10)
ATK 76 (6)
DEF 32 (2)
INT 21 (1)
AGL 32 (2)
装備 無し
ユニークスキル 鬼の血
スキル 火魔法Lv3 無手攻撃力上昇Lv3 身体能力強化Lv3 狂戦士化Lv1
所有者 神楽坂 竜司
『鬼の血』
アクティブスキル(鬼化)が使えるようになる。
効果
スキル発動中全ステータスが上昇する。
スキル発動中思考が攻撃的になる。
鬼化の度合いが上がるほど上記2つの効果が上がる。
スキル発動中角を攻撃されるとスキルがキャンセルされる。
ついでに俺とセシルのステータスを載せておく。
名前 神楽坂竜司
種族 人間種
性別 男
Lv 27 → 30
HP 820 → 880
MP 490 → 535
ATK 150 → 165
DEF 62 → 68
INT 67 → 73
AGL 62 → 68
装備 皮の鎧 皮のグローブ 皮の靴
ユニークスキル:勇者の素質 魔王の素質 鑑定 並列起動
スキル:剣術Lv4 → Lv5 細剣術Lv3 回復魔法Lv1 → LV2 土魔法Lv1 → Lv3 火魔法Lv1 移動速度上昇Lv1 → Lv3 索敵Lv4 隠蔽Lv4 アイテムボックスLv3 → Lv4 身体能力強化Lv3 視力強化Lv3 → Lv4 聴力強化Lv3 → Lv4 剛腕Lv1 暗視Lv3 逃げ足Lv1 解読Lv5 見切りLv2 → Lv4 威圧Lv2 → Lv3 一般魔法Lv3 裁縫Lv4 HP自動回復Lv1 → Lv2
名前 セシル
種族 獣人種 奴隷
性別 女
Lv 25 → 29
HP 890 → 990(25)
MP 416 → 460(11)
ATK 126 → 138(3)
DEF 48 → 56(2)
INT 32 → 36(1)
AGL 94 → 110(4)
装備 鉄のレイピア 皮の鎧 皮のグローブ 皮の靴
スキル 細剣術Lv4 索敵Lv4 聴覚強化Lv3 見切りLv3 裁縫Lv2
所有者 神楽坂 竜司
こうしてパラメーターを比べたら勇者の素質のパーティメンバーが強く育つという能力のチート具合がよく分かる。ロムは鬼化があるから大丈夫だがこれから仲間にする子はなるべくレベルが低い子にしてパワーレベリングしたほうがいいだろうなぁ。とかを未だに離れないロムをさわさわしつつ考えていると廊下からどたばたと騒がしい足音が近づいてきてスバーンと扉を開け放った。




