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一般高校生の異世界ライフ  作者: テトメト
鬼とサーカスと少女の涙
33/47

絶対に忘れない

「知らない天井だ・・・」


ロムとの死闘の後またも気絶した俺はどことも知れない部屋で目覚めた。


「あっ、ご主人様おはようございます」


隣からここ最近聞きなれてきた声が聞こえた。声が聞こえたほうへと顔を向けると予想通りセシルがニコニコした顔でベットの脇に座っていた。


「ああ、おはようセシル。ところでここは?」


俺は寝ていたベットから上半身を起こしつつセシルに尋ねた。ちなみに戦闘で千切れたはずの左腕は当然の様にくっ付いていた。千切れた先も近くに落ちていただろうから腹に大穴が開いた前回よりは簡単な治療だっただろう。


「はい。ここは治療院です。ご主人様にお背中を任せられた後しばらくするとずっと続いていた破砕音が途切れました。私はご主人様が勝ったのだと思い様子を見に行くと左手が半分無くなったご主人様とロムが倒れていて・・・」

「ロム・・・?そうだ!ロムはどうなったんだ!?」


暴走が収まったであろう事はなんとなく覚えているがすぐに気絶してしまったがその後どうなったのか?


「ロムは私と一緒に来た騎士達に連れ去られていきました。今は牢屋にいると思います」

「そうか・・・」


牢屋にいると聞いて胸が若干痛んだが、町を破壊しながら暴れまわった訳だししょうがないだろう。むしろロムが生きていることを喜んでおこう。



「失礼するよ」


セシルから俺が倒れた後の話を聞いていたら突然ノックがして見知らぬおっさんが入ってきた。


「誰だこのおっさん?」

「さぁ?」


セシルも知らないようで首をかしげている。


「そのお方はこの町の領主であるヘンリー=ルーセル様だ」


俺の問いに答えたのは新たに病室に入ってきた男だった。


「騎士団長?」

「なんだデリック知り合いか?」

「いえ、一度顔を合わせたぐらいです」

「そうか」


俺の病室に新たに入ってきたのは騎士団長だった。それに最初に来たのはこの町の領主らしい。


「ふむ。では改めて。ヘンリー=ルーセルだ。一応この町の領主をしている者だ。今日は療養中のところ突然すまないな」

「いえ、体のほうはほとんど治っていますから」


俺が目を覚ました途端に部屋へ押しかけてきた辺り早急に俺と話し合う案件があるのだろう。というかロムの件しかないが。


「まずは礼が先だろう。リュージカグラザカ殿。貴殿の活躍によりこの町の被害は最小限に抑えられた。礼を言おう。ありがとう。此度の活躍に見合った報酬を後日冒険者ギルドに送ることを約束しよう」

「はい。ありがとうございます」

「それでなんだが・・・今日いきなり伺ったのはあの鬼の少女・・・ロムといったかな?あの子の処遇についてだ」

「・・・はい」


やはりその話か。俺は一度姿勢をただし領主の言葉を待つ。


彼女(・・)の罪状はサーカスの団員全ての殺害に他住民の死傷者が数十名。家屋の倒壊及び延焼だ。まぁ普通は死刑を免れないだろうな」

「そんな!」


ロムが殺されないように助けに行ったのに結果死刑じゃ何のために命を掛けたのか分かったもんじゃない。

だが領主の言っていることも一利ある。というかあちらの方が正しいだろう事も分かっているがでも感情が納得しない。

そんな感じの思いを込めて領主を睨んでいると彼は俺の思いが通じたようで軽く肩を竦めた。


「落ち着きたまえよ。普通はと言っただろう?」

「・・・今回は普通ではないと?」

「まぁそうだな。今回暴れたは見た目はほぼ人間だがサーカスの魔物としてこの町に入っている。その魔物が脱走して暴れたのだ責任を取るべきはサーカスであって魔物への処罰を与えるのもサーカスだ。だがそのサーカスのメンバーは先の事件で全員死亡している。これでは責任の追及の仕様が無い」

「・・・」


魔物ペットの不祥事はサーカス(飼い主)の責任ってか?分からなくはないがそれでロムが人を殺した事実が消える訳じゃないと思うし死刑が無くなる理由としては弱いと思うんだが・・・


「・・・というのは建前だな。我々としてはリュージ殿、あなたとの縁がここで切れるのが惜しいのだ」

「はぁ」

「こういっては何だがデリックの見立ててではあの鬼は騎士団総出でも討伐できるかどうか分からないほど強力な相手だったらしい。だな?」

「いえ、戦えばほぼ確実に全滅していたでしょう。並みの騎士では鬼の速度に対応できずあの炎を纏った爪で鎧ごと切り裂かれて死んでいたでしょうな。ある程度の強さを持った冒険者と協力して数で押せばあるいは・・・それでも多くの死者が出たでしょうな」

「ということだ。あの鬼はこの町の全兵力に釣り合う程の戦闘力を持っている。そしてそれを単独で倒した君も然りというわけだな」

「んなアホな・・・」


確かにロムは高い機動能力と攻撃力を持っていたがその行動基準は攻撃一辺倒でフェイントなんかも使わなかったし行動は読みやすかった。ロムの速度さえ目で追えればスラッシュで対応可能・・・ってそういえば連続剣がなければ最初の一撃をスラッシュで防いだ時点で手詰まりだったな。


「いやいやいやいや今回ロムに勝てたのは単に相性と運が良かっただけですって!さすがに騎士団と戦闘したら勝ち目なんてありませんから!!」

「だとしてもだ。リュージ殿がかなり優秀な冒険者であることに代わりは無かろう?そしてあの少女・・はリュージ殿の友達だそうだな。今回命を掛けて彼女を助けたのも友達だったからとか。そして我はあの少女を今回の事件の首謀者として死刑にしてリュージ殿の怒りを買うよりも彼女を生かしリュージ殿に貸しを作るほうが双方特になると判断したわけだがどうだろう?」

「・・・・・・」


どうだろう?というのは俺にロムの処遇を決めろと言っているのだろう。このまま犯罪者としてロムを殺すかルーセルの領主に貸しを作りロムを逃がしてもらうか、だ。一応犯罪者のロムを俺の都合で逃がしてもらうことになるんだからその貸しは絶大な物になるだろう。だが、


「お願いします。ロムを助けてやってください」

「いいでしょう。彼女をここに」

「はい」


騎士団長が領主の要請を受けて数分後近くに控えさせていたのであろうロムと見知らぬ太ったおっさんを連れて戻ってきた。


「ロム・・・」

「リュージ・・・」


ロムはいつか見たような目深のローブを被り、手錠をつけた姿であった。


「リュージ!!」

「うおっ!」


ロムは突然叫ぶと跳躍!ベットの上の俺へとダイブしてくる。


「ろ、ロム?」

「えぐっ・・・えぐ、りゅーじぃ・・・ふぇぇ」


ロムは俺にしがみつくとそのまま俺の胸に顔をこすり付けて泣き出してしまった。元の世界でも碌に彼女もおらず女性経験値の足りない俺じゃこういうときどう対応すればいいのか分からずオロオロするばかりだ。


「もう・・・もうあえないとおもって・・・もしかしたらわたしがころしちゃったかもって・・・でもリュージはわたしを助けてくれていてこうしてまた会うことが出来て・・・わたし、わたし・・・」

「ロム・・・」


ロムは俺に押し付けていた顔を上げぬれた瞳で俺を見つめながら話す。


「私はもう大丈夫。私はリュージに助けられてリュージに大切なものをたくさん貰ったから。これからどれだけ大変なことがあっても。たとえ死んでしまってもリュージの・・・りゅーじのことは!じぇったいに、ぜったいにわすれない!うえーーん!!」

「ロム・・・」


ロムはまた大泣きして俺に縋り付いてくる。余りにもかわいそうなので早くここに呼ばれた理由を教えてあげよう。


「ああ、ロムはもう俺を忘れることはないだろう。だってこれからはずっと一緒だからな!」

「え?」

「ロムは俺達と一緒に来るんだよ。この世界のいろんな場所を一緒に見に行こう!おいしいものもいっぱい食べよう!それともロムは俺とは一緒じゃイヤか?」

「ううん・・・ううん!イヤじゃない!イヤじゃないよ!リュージと一緒に居られるならどこでも行く!リュージ大好き!うわーーん!!」


またまた泣き出してしまったロムはなかなか泣き止んでくれず、泣き止んでくれるまでずっと頭をなで続けることになったのだった。

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