デート
「ちーす」
俺とセシルは依頼の完了報告をしにルーセルの冒険者ギルドに来た。
「リュージさん?今から出発ですか?」
「いや、今帰ってきたところだ」
そう言ってドスンとサイクロプスの目玉をカウンターに置く。目を見開く受付嬢。ざわめく冒険者達。ドヤ顔の俺。
「も、もう倒して来たんですか?移動だけで往復一日はかかる上にサイクロプス自体がBランクには少し厳しい相手なのに」
そんな相手に忠告も無しに行かせたのかよ。
「まぁ余裕だったよな?」
「はい。ご主人様なら当然です」
サイクロプスはレベルも高かったし打撃スキルの、おそらくスマイトを使っていた。
弱点である目玉も高い位置にあるため攻撃しづらく強敵と言って差し支えないだろう。
「はぁ~これが二つ名持ちの実力なんですかね」
「まぁ、な」
戦闘では連続剣は使わなかったがな。
「んで、こいつらも換金して欲しいんだが」
そう言って俺は森で狩りまくった魔物の皮やら肉やらをどさどさとカウンターに並べる。
「えっと、これは?」
「途中の森で狩った魔物の物です。何故か大量に魔物がいたんですよ」
「やっぱりですか・・・」
「やっぱり?」
受付嬢は視線を落とし表情を暗くする。
「最近あちこちの町で魔物が増えているみたいなんですよ」
「ほう?」
「まぁ魔物の大量発生は数十年周期で起きることなのでそれがたまたま重なっただけかもしれませんが・・・」
「うーん、俺たちにどうこうできる話じゃないよな?」
「そうですね・・・。はい。こちらが今回の依頼の報酬と素材の買取金額になります」
「おう、ありがと」
報酬をもらいギルドを出た。
顔を上げると日は頭上に輝いていた。まだ昼になったかどうかって所か。
「なぁセシル」
「はい」
「フランとの約束は明日だし今日は他にやることもないな」
「はい」
「・・・んじゃ、いっちょデートするか?」
「はい!」
とりあえずは腹ごなしをしようということになり適当に町をぶらつく。
「んー、やっぱりいつもと変わらないんだよな・・・」
「そうですか?私は楽しいですよ?」
その言葉が真実だということはセシルの満面のニコニコ笑顔を見れば分かるがその距離は俺の左斜め後ろをいつもどうりに付いて来ている。ちょっと遠いな。
「セシル」
「はい?」
俺は立ち止まりセシルへと左手を伸ばす。
「手をつないで歩かないか?」
「え?・・・はい!」
若干照れくさくて苦笑いしながらの俺の言葉にセシルは心底嬉しそうな顔で俺の手を取ろうと手を伸ばし、
「「きゃっ!」」
「うおっ」
突然の乱入者に妨害された。
「なんだ?」
俺とセシルの間に飛び込んできたのはボロいのローブを頭まですっぽりと被った子供だった。声からして女の子かな?
「ごっ、ごめんなさい」
「いや別にいいけ・・・ど?」
いきおいよく頭を下げた少女。その少女のフードが少し翻りチラッと見えたその顔に俺は見覚えがあった。
「・・・サーカスの鬼の子?」
「あっ」
「あら本当ですね」
正確には見覚えがあったのはその額からツンと生えている角にだが。
「まさかこんなに早く見つかるなんて・・・でもここで捕まるわけにはいかないなんとか切り抜けないと・・・」
「?」
鬼の少女ロムは何か1人でぶつぶつ言ってる。ちょっと怖い。
「えっえっと!これは違くて!べっ別に脱走してきたわけじゃ」
「今日は休暇なのか?」
「無くって・・・え?」
「ん?」
なんだ違ったのか。
「あっいや、それで合ってます!きょ、今日はサーカスのお仕事はお休みなんです!」
「お、おう」
なんかやけに勢いよく肯定された。
「でっ、ではこれで・・・」
くきゅるるるるる
ロムが踵を返して去ろうとした途端ロムのおなかから可愛らしい音が響く。
「つ~~~~」
顔を赤くしておなかを押さえているロム。その目はキッと俺を睨んでいる。俺にどうしろと?
「あー俺たちこれから昼飯食べに行くけど一緒にいくか?」
「・・・私お金ないし・・・」
「まあそれぐらいなら俺が奢ってもいいんだが・・・」
俺はチラッとセシルを見る。成り行き上とはいえセシルとのデート中に他の女の子を食事に誘っているのだセシルが嫌がるようなら考え直そうと思ったが、セシルはいつもどおりニコニコしていた。どうやらセーフらしい。
「でっ、でもいいんですか?」
「うん。サーカスでは俺も楽しませてもらったからな。チップだと思ってくれればいいよ」
ロムがめっちゃキラキラした目で見てくる。ま、まあ所持金もそんなにかつかつじゃないしよほどの事が無ければ大丈夫だとは思うけど・・・。
「そ、それではさっそく向かっても?」
「おう、じゃ向かうか」
俺は左にセシルを右にロムを引き連れ両手に花状態で町を行く。セシルはいつもどおり黙って俺の横を着いてきていたがロムはあっちにきょろきょろこっちにキョロキョロしながら付いてくる。正直迷子になりそうで心配なんだが。
「あっリュージ!あれ!あれ食べたい!」
「ちょっと、ロム!」
ロムはいきなり近くの屋台へと向けて弾丸のように飛び出す。俺とセシルも慌ててロムの後を追った。
「1つくださいな!」
「おう、お譲ちゃんらっしゃい1つなら銅貨一枚だよ」
「銅貨一枚だってよリュージ」
「はいはい」
ロムが受けとった肉串の代金を屋台のおっちゃんに渡し俺たちは屋台から離れた。
「ありあとやしたー」
「はーい。どれどれ」
ロムは小さな口を目一杯開いてタレが滴る肉にかぶりついた。
「んーーーーーっ!!」
すると途端に驚いたように目を見開き手元の肉を見て次いで俺の顔を見上げ興奮した様子でバンバンと俺の体を叩いてきた。
「いたっ、痛いって。ちょっ、ロムやめっ」
「あっ!ごめんなさい・・・」
痛かった。見た目少女でも中身は鬼。力も半端無い。
「いやそれだけおいしかったって事だろ?それだけ喜んでもらえれば俺としても嬉しいしな。・・・でももう叩かないでくれよ?」
「うん」
その後肉をペロッと平らげたロムはまたキョロキョロしだした。
「リュージ?」
「ご主人様?」
俺は左右の手でそれぞれセシルとロムの手を取っていた。
「ロムは放っといたらどこでも行ってしまいそうだしな。セシルもさっきの続きだ」
「しょうがないなぁ」
「はいご主人様!」
その後俺たちは道行く男達の嫉妬の視線をすり抜けながら適当に入った定食屋で昼飯を取る。そこでもロムは結構オーバーにリアクションを取っていた。ここまでおいしそうに食べてくれると俺もお店の店員も嬉しくなるな。
「はぁー、世界にはこんなにおいしいものがあるんだ」
「おおげさだなあロムは」
「ふふ、ご主人様に奢っていただいたのだから当然です」
セシルも絶好調だな。ていうかさっきから繋いでる手をにぎにぎしてくるのは何なんだ?セシルのほうを見てもにっこり笑顔を向けられるだけだしな。まぁ嫌じゃないが。
「お?あれは」
「なになに?」
「アクセサリーですか?」
俺が目をつけたのはアクセサリー何かの小物を扱っている店だ。ちょっと鑑定をかけてみたが特に反応もなかったので正真正銘飾りだろう。
「ちょっと見ていかないか?」
「リュージああいうのが好きなの?じゃあちょっと見に行こう!」
「ご主人様が寄りたいのでしたら私は付いていきます」
「うん。じゃちょっと寄ろうか」
その小物屋は指輪やネックレス、ブレスレッドなども置いてあったが俺が手に取ったのは2つの同じ花の模様のヘアピンだった。
「おねーさんこれください」
「あら、彼女さんたちへのプレゼント?」
「まっ、そんなとこだ」
「えっ?」
「ご主人様?」
店員のおねーさんにお金を払った後そのまま買ったヘアピンをセシルとロムに渡す。
「ありがとうございますご主人様。一生大事にしますね」
「・・・・・・」
「いやそれはさすがに大げさすぎるだろう・・・ロム?」
ヘアピンを大事そうに抱え嬉しそうにしているセシルと違いロムは手の平に乗っているヘアピンを少し悲しそうに眺めていた。
「ごめんなさい。私はこれを受け取る資格はありません」
ロムはそういうと手のひらごとヘアピンを俺の方へとつき返した。




