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一般高校生の異世界ライフ  作者: テトメト
鬼とサーカスと少女の涙
25/47

ロム

「つっ角が!」

「伸びてるぞ!」


団長の言葉に反応し絶叫を上げたロム。

そのロムの額から生えていた角。鬼の象徴とも言えるその角が少しずつ、少しずつ伸びてくる。

その変化は角が10センチ程まで伸びた辺りで止まった。最初が5センチ程度だったから約2倍になったことになる。

ロムの変化はこれで終らない。

角の肥大化が止まったロムは頭を抱える様にうずくまり、一拍おいてガバッと顔を上げた。

その動きにつられ放射線状に広がる髪。その燃えるような赤髪が実際に端から燃え上がる。

火魔法による演出の一環だろうが燃え上がる炎を背負って立ち上がるロムは凛々しくも美しく観客達の視線を一身に集める。


「・・・ふぅー」


ロムは細く長く息を吐き初めて構えらしい構えをとる。

右手と右足を前に左手と左足を後ろに持っていき半身に構える。膝をほぼ直角まで曲げ、手の平を前に向けた状態で指先だけを軽く曲げた。どことなくトラの爪を思わせるその構えは・・・


「虎爪か・・・?」

「こそう?」


セシルがこくん、と首を傾げて聞いてくる。可愛い。


「あぁ。虎の爪と書いて虎爪。掌底の様に相手に打ち込んだ後あの虎の爪の様な指で相手の肉を引きちぎるって何かのラノベ()に書いてあったのを見たことがある気がするな」


まぁもっともそれをやるには尋常じゃない握力が要るから普通ロムみたいな少女がやる技じゃないんだがな。


「さすがご主人様です。なんでもご存知ですね」

「なんでもは知らないさ、知っていることだけだ」


はいはい、テンプレテンプレ。


俺とセシルがじゃれている間にステージでは戦闘が再開された。

ロムが鬼の力を解放したことにより完全にパワーバランスが逆転していた。

ロムが一撃を繰り出すたびに大きなトラ達が宙を舞う。


「いいぞー!」

「そこだ!やっちまえ!!」


ロムの快進撃に会場のボルテージも最高潮に達していた。


散々吹っ飛ばされたトラ逹が1ヶ所に終結する。どうやら三匹同時に攻撃するつもりらしい。

それを見たロムは腰だめに構えていた右手を硬く握りしめる。


「「「・・・ごくり」」」


次の衝突で雌雄が決する。それを肌で感じた観客逹がさっきまでの盛り上がりが嘘のように静まり返る。


静まり返ったステージ上でトラがピクリと反応した。

瞬間ロムの拳が燃え上がる。火魔法で発生させた火を拳に纏わせているのだろう。

ロムが決め技の準備をしている間にトラ逹は三匹とも明らかに必要以上に高く飛び上がりロムに飛びかかる。


あーアカン。それはザコ敵の敗北フラグだ。


「はっ!」

「ギャン!!」


空中のトラ逹に向けロムが燃える拳を突き出す。するとトラ逹に触れてもいないのにロムの拳が爆発。前方へ向け熱風が吹き荒れた。

空中で満足な回避行動が出来なかったトラ逹は熱風をもろに受けステージの端まで吹き飛ばされ動かなくなった。


「「「・・・・・・」」」


一瞬の交錯に理解が追い付いて無いのか静まり返ったままの客席が、


「「「うおおおおおおお!!」」」

「すげぇ!」

「なんだ今の!カッケー!」


次の瞬間一気に沸騰した。

観客席のあちこちからからロムを称える声が飛び交う。

これだけの歓声を浴びればロムもさぞや嬉しいだろう。


「・・・ん?」


が、歓声を一身に浴びているロムは不思議と寂しそうな表情をしている様に見えた。何故ロムがそんな表情をしているのか頭を巡らせる前にロムの顔から寂しげな雰囲気は消え去った。単なる見間違いか?


「さて、皆様本日のイベントはこれにて全て終了となります。最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました!」

「・・・ありがと」

「「「きゃぁぁぁぁぁぁ」」」

「かわいい!」

「ロムちゃんこっちむいて!」


団長の閉めの挨拶の後にロムが小さく囁く。

その囁きを聞いたあちらこちらから黄色い歓声が次々と上がる。

最後に今まで出てきた魔物たちやスタッフの方たちも出てきて観客にお辞儀をしてゆく。っていうかさっきロムにKOされたはずのトラたちまで愛想を振りまいているがいいのか?まぁいいか。



ロム達が奥に引っ込んでからも観客達の拍手は収まらない。かくゆう俺とセシルも優に30分は拍手をし続けてからやっとテントを出た。


「おもしろかったですね、ご主人様」

「あぁそうだな。」


もっともロムの印象が強すぎてそれ以前になにをやっていたか全然覚えてないけどな。


「なんならまた見に来るか?サーカスも何日かはこの町にいるだろうし」

「いえ。サーカスもタダではありませんから。それに私はご主人様と一緒に居られればそれだけで満足です」

「また、セシルはそんなこと言って・・・んじゃ今度デートでもするか」

「でーと?ですか?」

「そ、男女が一緒に町を遊び回ること・・・ん?いつもと変わらなくね?ま、気持ちの問題かな?」

「?よく分かりませんが、ご主人様と一緒に居られるのでしたら・・・」

「んじゃ、決まりな。約束だ」

「はい!」


テントを出た俺たちはとりあえず冒険者の宿を探しながらいちゃついていると、


「リュージさん!!」

「あっ、フラン」


やべっ完全に忘れてた。


「あっ、ってなんですか!あっ、って!まさか素で忘れていたりしてませんよね!?」

「うん。まぁ、それはさておき、今まで何してたんだ?」

「露骨に話を逸らさないでください!リュージさん逹と別れてから大変だったんですからね!町の何処へ行っても宿がいっぱいで、馬車ごと預かってくれる所を探すのがどんなに大変だったか・・・リュージさんに分かりますか!」

「いや知らんけど」

「リュージさん達は冒険者の宿に泊まればいいですもんね!でも私はそうは行かないんですよー!」

「お、おう。分かったからちょっと落ち着けや」

「フー!フー!」


興奮状態のフランをどうどうと諌める。宿を取るのに時間がかかったぐらいでこんなに取り乱すなんてどんだけサーカス楽しみだったんだよ。


「フランは今から観にいくのか?」

「今日の公演はもう終わりだそうですが?」

「あー」


俺とセシルに置き去りにされたうえに明日までお預けとなれば怒り心頭な様子にもまあ納得はいくかな?


「すまんかったよ。一秒でも早く観にいきたかったんだ」

「・・・はぁ。もういいです。リュージさんたちが宿まで一緒に来たところで見れなかった人が二人増えるだけですしね」

「すまん」


やれやれと首を振るフランにぺこっと頭を下げて謝った。


「はぁ・・・次があったらちゃんと一緒に連れてってくださいよ?」

「おうよ。任せとけ」


胸をはって宣言する俺にフランはまたやれやれと首を振る。


「・・・ところでリュージさんたちはこれからどうするんですか?」

「んー、とりあえず冒険者の宿にいって、それからは特に決めてないな」


セシルとのデート以外は。


「セシルは何かやりたいことあるか?」

「私はご主人様と共に居られればそれだけで満足です」


ですよねー


「んじゃまぁ適当に依頼でもやってると思うぞ?」

「そうですか。それなら三日後のお昼にでも冒険者ギルドで待ち合わせしませんか?」

「別にいいけど・・・フランは何するんだ?」

「私はこれでも商人ですよ?仕入れとか情報収集とかいろいろやることがあるんです」

「ふーん。じゃ、しばらく別行動か」

「そうですね。・・・それじゃ、また三日後に」

「あぁ。また三日後に」


再会の約束をした俺たちはそれぞれ別の方向へと歩き出す。

また再び相まみえるその時まで。


「・・・ところでフラン。冒険者の宿ってどっちだ?」

「台無し!」


いまいち締まらない一行であった。

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