鬼の血
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「レディーーーーーース、エーーンド、ジェントルメーーーーーン。本日はこの私マクスウェルのサーカスへよーーーこそ最後まで存分にお楽しみくださーい」
「「「おおーーーー!」」」
団長っぽい人がステージの真ん中へと歩みでて観客席を見ながら開始の挨拶をする。
テントの中は真ん中に大きな円形のステージが存在し、そのステージを取り囲むようにすり鉢状に観客席が用意されている。サーカスってより闘技場っぽい感じの建物だな。
名前 マクスウェル
種族 人間種
性別 男
Lv 25
装備 無し
ユニークスキル 調教
スキル 無し
どうやらあの団長が調教のスキルを持っているらしいな。でも、調教はユニークスキルらしいから俺は覚えれねぇな。
「さぁーて、まず最初は数々の冒険者達をその牙と爪で屠ってきた凶悪なモンスター、グラディウスタイガーによる火の輪くぐりをお楽しみください」
「「「きゃあああああああ」」」
団長がそう言うとテントの奥からでかいトラを連れた女性が出てきた。
床に届くんじゃないかという程巨大な牙を持つ凶暴な魔物の姿に観客席から悲鳴が巻き起こる。
が、観客達の予想を裏切りトラは女性の隣におとなしく座っており、惨劇も戦闘も巻き起こらない。その光景に観客達のざわめきが収まってきた頃合を見て輪に火が点けられる。
「「「おぉーーーーー」」」
ごうごうと燃える火の輪に観客のボルテージも否応なしに上がる。
「はい!」
「「「わぁー」」」
「はい!」
「「「きゃー」」」
女性が掛け声を上げそれに答えトラが輪を潜る度にわーきゃー歓声が上がる。
「恐ろしい魔物にあんなことをさせるだなんてすごいですね!ご主人様!」
「あぁすごいな」
セシルも楽しそうだ。それだけで来た甲斐があったな。
まぁトラの火の輪潜りもいいがそれは元の世界のテレビとかでも見たことあるからもっと異世界っぽい出し物を期待だな。
「すごい!すごいですよご主人様!!」
「あ、あぁ。すごいな・・・」
サーカスの演目はどんどん進んでいく。ゾウっぽい魔物の玉乗りとか、クマっぽい魔物が逆立ちしながら平均台を渡ったりとか。
セシルは、というか俺以外の観客全員が魔物逹が何かする度に楽しそうに歓声を上げる。だが俺はいまいち空気に乗れていない感をひしひしと感じていた。
だってこれなら元の世界でも見れたじゃん!!
もっとこう・・・ドラゴンが火吹くとか精霊のダンスとかそういうのないわけ?
「さぁ皆さま!次の種目が本日最後の、そして最大の目玉イベントになりまーす。ロムカモーン!!」
団長に呼ばれトコトコと歩いてきたのは、
「・・・小さな女の子?」
だった。
目深にローブを被った女の子がステージの中央、団長の下まで歩いて止まる。団長はその女の子の頭の上ローブを掴む。
「コイツは世にも珍しい人間の魔獣。鬼でございまーす!」
団長は少女のフードをガバッと取る。
翻るフードの下から現たのは燃えるような赤髪の長髪にルビーのような輝きの瞳を持った美少女だった。がその容姿以上に目を引くのは少女の頭頂部付近、額よりも若干上の位置から生えている角だ。
「鬼・・・だと・・・!?」
名前 ロム
種族 鬼人種
性別 女
Lv 22
装備 無し
ユニークスキル 鬼の血
スキル 火魔法Lv2 無手攻撃力上昇Lv3 身体能力強化Lv3
やっべー本物の鬼だ!すげーな!こういうのを待ってたんだよ!
ざわ・・・ざわ・・・
「魔獣!魔獣だと!?」
「本物の魔獣だって!?」
「おい!逃げなくていいのか!?」
ざわ・・・ざわ・・・
「なんかみんなガチで怯えた目してね?」
「それはそうですよ。ご主人様も何処かで聞いたことがあるでしょう?・・・魔物にあったら食料を捨てろ。盗賊にあったらお金を捨てろ。魔獣にあったら諦めろ。って言葉」
「いや、初めて聞いたな」
「そうなのですか?つまりそれほど魔獣は恐れられてる存在ということです」
「ふーん」
まぁ確かに魔獣は強敵だったが・・・あんな少女にまで怯える必要は無くね?
「皆さまご安心下さい!例え魔獣と言えど魔物は魔物。そして相手が魔物であるのならば私マクスウェルの命令を拒否する事は出来ないのですから!!」
マクスウェルが叫んだ後に鬼の少女・・・ロムが観客にペコリとお辞儀をする。
ざわ・・・ざわ・・・
「おい、本当に大丈夫みたいだぞ・・・?」
「あ、あぁ。でも魔物に命令出来るスキルなんて・・・まさかユニークか?」
「ホント?私ユニークスキル持ちって始めて見たかも!」
ざわ・・・ざわ・・・
魔獣と聞いて観客達に巻き起こった不安が団長への尊敬に変わってゆく。これを狙ってやったなら(まぁ狙ったんだろうが)たいしたもんだなあの団長。
「さぁ、皆様本日最後のショーをお楽しみください!」
観客のざわめきが落ち着きかけたタイミングで団長が叫ぶ。するとテントの奥から見たことのある影が出てきた。
「さっきのグラディウスタイガーか?」
それも三匹も・・・まさか!?
「そう!コイツには今からこのグラディウスタイガー三体を相手に戦ってもらいます!」
んな、アホな。
俺は慌ててグラディウスタイガーのステータスを確認する。
グラディウスタイガー
Lv20
グラディウスタイガー
Lv20
グラディウスタイガー
Lv20
ロムのレベルが確か22だったから一対一だと勝てるかもだけどさすがに三対一はムリじゃないか?
「ご主人様・・・」
「いや、あくまでもショーだから滅多なことにはならないと思うぞ?」
「はい・・・」
観客達もセシルと同じような不安を抱いているのがざわつく空気から感じられる。
「「「グルルルルル」」」
トラ共は低く喉を鳴らしつつロムの周りをゆっくりと歩いている。ロムは特に構えることも無くぼさっと突っ立ってトラどもを見ている。
「それではーレッツバトル!」
「「「ガウッ」」」
「っ!」
団長の掛け声にあわせトラ共がロムに殺到する。
ロムはとりあえず目の前から来る一体に狙いを定めたようで覆いかぶさるように襲い掛かってきたトラの両前足を両手でがっしり掴んで踏ん張る。
ロムとトラの力は互角。互いに一歩も引かずに押し合いを続ける。が、
「危ない・・・!」
どこかで誰かが呟いた。が呟かなかった人達もみな同じ気持ちだった。
ドッ
「・・・ぐっ」
ロムが背後から迫って来ていた別のトラに横薙ぎの一撃を加えられステージの端まで吹き飛んだ。
「ん?」
「「「きゃぁーーーーーー」」」
勢いよく吹っ飛んだロムの姿に観客席のあちこちから悲鳴が上がる。
「っ!」
ゴロゴロと転がり勢いを殺したロムがフラフラしながらも起き上がる。
ほっとしたため息があちこちから漏れてくる。が、
「ご主人様今の・・・」
「ああ、手加減されてたな」
不意打の横薙ぎの一撃。それは俺も喰らったことがある。が、腹を爪が貫通していた俺の時とは違いロムは肉球で掬い上げるように放り投げられていた。あれなら受身にさえ気を付ければ大怪我をすることは無いだろう。
「これで安心して見てられそうだな」
「はい。そうですね」
俺たちが調教のスキルの効果をに改めて感心している間にもそう言うシナリオなのかロムがボコボコにされている。小さな体が宙を舞うたびに息を呑む気配があちこちから感じられる。
ロムが片手で数えきれないほど宙を舞ったあたりでついに地に伏して動かなくなってしまった。
「お、おい。やばいんじゃないか?」
「いやーーーー」
「立てよ!立ってくれー!!」
観客達からロムへと惜しみない応援が送られる。手加減されていた事を知っている俺でもロムのボロボロの様子に胸が痛いのにガチ戦闘だと思っている人達は尚更だろう。
「皆様どうかご安心を。コイツは人間ではありません。ロム!鬼化を使え!」
団長の言葉を聞きロムが立ち上がる。
「う、わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
起き上がったロムが唐突に身を捩りながら絶叫する。
その奇行に俺たちが動揺しているとロムに変化が訪れた。
「つっ角が!」
「伸びてるぞ!」
ロムの目がギラリと光り、髪が燃え上がる。
鬼の力を解放したロムの反撃が始まる・・・。
ちなみに調教の効果はマクスウェルが言うほど強力ではありません。
まず自分よりもレベルが上の魔物は配下に出来ず、配下にするには死ぬ寸前まで魔物の体力を削った状態で魔物自信が配下になることを了承しなければなりません。
無論ロムには効果がありません。




