ルーセル
索敵で見つけてから数分後。やっとグミスライムの姿をはっきり視界に捉えた。
「本当にグミスライムみたいですね・・・リュージさんよく見えましたね」
「あぁ、うん、まあ・・・」
「ご主人様ならこのぐらい当然です」
フランは純粋に驚いてるようだが、セシルはなぜか胸を張って威張ってる。うん、なんでセシルがそんなに偉そうなんだ?
「そろそろグミスライムに気づかれます。馬車はここで止めますのでリュージさん後はがんばってください」
「あいよ。暇つぶしがてら俺が1人でやるからセシルはここで待っててくれ」
「はい、ご主人様」
止まった馬車から飛び降りグミスライムの方へと近づく。するとグミスライムもこちらに気づいたようでスライム状の体を引きずりこちらに近づいてくる。
グミスライムは俺の膝ぐらいの高さもあるスライムでその体は濁った緑色をしていた。
俺の手前一メートルぐらいまで這ってきたグミスライムはそこで止まり体をフルフルと震わせた後俺の胴へと体当たりしてきた。
この世界の魔物はみんなとりあえず体当たりしてくるのな。
当然その軌道を読んでた俺は1歩横にずれてかわし、カウンターの剣を当てる。と、
「い、一撃かよ・・・」
グミスライムは宙に溶けて消えていた。
スキルも使っていないしそんなに力を込めた一撃でもなかったんだが・・・。
「さすがご主人様です!」
「ええ、ちょっと心配していましたが無用でしたね」
「ご主人様なら当然です!」
どうにも消化不良な感じで馬車へと戻るとフランとセシルが笑顔で迎えてくれた。
「うむ。確かに余裕だったけど余裕過ぎてつまらんかったな・・・また出ないかな」
「不吉なこと言わないでくだいよ。人が良く通る道に魔物が出ること自体珍しいことなんですからね?今日中にまた魔物が出ることなんてあるわけが・・・」
十分後
「出たな魔物」
「ええ、そうみたいですね・・・」
またも道の先に現れたグミスライムを見ながら俺とフランが呟く。
「こっちこい!」
グミスライムぐらいなら余裕だろうから自分から来てもらおうと威圧を使う。
グミスライムは一瞬こっちを見るように体を上へと伸ばし・・・次の瞬間一目散に逃げ出した。
「およ?」
「逃げていきますね」
「そうみたいだな・・・」
「きっとご主人様に恐れをなして逃げていったんですね」
「いやさすがにそれは・・・」
いやでも待てよ?
「・・・もしかしたらセシルの言うとおりかも・・・」
「えっ?」
俺は威圧のスキルの詳しい説明を見る。
『威圧』Lv2
対象の注意を自分に引き付け相手を戦闘から逃げられなくする。
ただし自分とのレベル差が開いている場合はその限りではない。
これ高レベルの相手には威圧が効かないって意味だけだろうと思いこんでいたが低レベルの相手は逃げ出すっていう効果もあったんだな。
「やっぱりご主人様はすごいお方です!」
「ええ、ここまで来るとホントにリュージさんて何者なんでしょうね?」
「あははは・・・」
セシルのキラキラとフランの訝しむ様な視線をあさっての方向を見ながらの空笑いで受け流し、その後は魔物に遭遇することも無く平和な旅路を心底味わった。
「やっと着いた~」
「はい。お疲れ様でした」
「お疲れ様です。ご主人様」
アストを出てから2日後、俺たちは無事にルーセルへとたどり着いていた。
「にしても賑やかな町だな」
「ええ、楽しそうです」
俺達は今町へ入るための簡単な荷物チェックの列に並んでいる。
ルーセルからはまだ町の中にも入っていないというのにざわめきがここまで伝播してきていた。
「変ですね?普段はこんなに賑わってはいないんですが・・・町で何かあったんでしょうか?」
普段の町の様子を知っているフランがそんな不吉なことを言ってくる。
やめてくれよ。もう厄介事には巻き込まれたくないぞ・・・。
「次そこの馬車」
門番の騎士が俺逹の馬車を呼んだ。順番らしい。
フランが騎士の元まで馬車を進めると荷台を簡単にチェックされた。と言っても大したものは乗ってないがな。
その間に俺とフランは別の騎士にギルドカードを見せ、フランは通行料を払った。
「通ってよし」
「まぁ待ってくれよ」
さっさと次の仕事へ移ろうとする騎士を呼び止める。呼び止められた騎士は露骨に嫌そうな顔をしながらこちらに向き直った。
「なんだ」
「なぁ何でこんなに浮わついた雰囲気なんだ?」
「?お前逹もこれが目当てで来たんじゃないのか?・・・今町にサーカスが来ているんだ」
「サーカス?」
サーカスがどんな事をしているのか聞こうと後ろを売り向くが二人とも知らないと首を振るのでまた騎士へ向き直る。
「はぁ・・・今町に来ているのは魔物サーカスって言われている。手懐けた魔物どもに芸をさせるっていう出し物だな」
ふむ、猛獣サーカスみたいなものか。
てか、魔物って手懐けられたのか
「面白そうだな。せっかくだし見に行くか」
「私も見てみたいです」
「賛成です!」
満場一致でサーカスを見に行く事が決定する。
「ちっ、こっちは仕事で見に行けねぇってのにここを通るやつはどいつもこいつもサーカスサーカス明日仕事バックレてやろうかぶつぶつ…」
お、おう。騎士の人が光彩の消えた目で虚空を見ながらぶつぶつ言ってる。怖い。
「じゃ、じゃあ行くか」
「え、ええ。そうしましょうか」
この世ならざるところを見ている騎士を置き去りにし町の奥へと進む。
「おー、明らかにそれっぽい建物があるな」
「あの赤と白の三角形の屋根の建物ですか?」
「すごく派手ですね・・・」
ちょっと進んだらいかにもサーカス!って感じの赤白縦縞なテントの天辺が見えてきた。てかちょーでけえ、移動式のテントのサイズじゃ無いだろあれ。どうやって運ぶんだよ・・・アイテムボックスか。
「うーん、馬車じゃこれ以上は進めませんね」
「まあちょっと考えれば分かったことだがな」
テントに近づくにつれ道に人が溢れていき馬車じゃ身動きが取れなくなる。
「先に馬車を置いてきましょうか」
馬車だけならアイテムボックスに収納できるかもだがさすがに馬まではしまえない。
「そうだな・・・セシル!」
「はい!」
「ちょっリュージさん!?」
俺とセシルは馬車からシュパッと飛び降りる。
「んじゃ、後は任せたぜフラン」
「すみません。先に行ってます」
「この人でなし!ちゃんと待っててくださいよ!」
「あははははは」
俺はセシルを連れ人混みを掻き分けテントへと突き進む。
「おい!危ねえだろ!」
「すみません。通ります!」
「あっはははー」
俺もセシルもレベルが上がり特にセシルのAGIはヤバイことになっている。そこらの一般人に捕まえられる速度じゃねえぜ!
一陣の風のように人垣の隙間を縫って駆ける俺たちはすぐにテントの入り口まで辿り着いた。
「2人だ」
「銀貨2枚だ」
「ほらよ」
受付に銀貨をほおってテントの中に滑り込む。
「なんとか入れたな」
「もうっ。完全に横入りでしたよ。次からはこんな危ないことはしないでくださいね?」
確かにちょっと強引がすぎたかな?
「すまんすまん。つうかそう言うセシルだってしっかり付いて来てんじゃんか」
「当然です。私はいつでもご主人様のお傍に」
「・・・その言葉気に入ってんの?」
俺たちが駄弁ってるうちに入り口が締め切られ。真ん中のステージにスポットライト的な光が当たる。
「レディーーーーーース、エーーンド、ジェントルメーーーーーン。本日はこの私マクスウェルのサーカスへよーーーこそ最後まで存分にお楽しみくださーい」
「おおーーーー!」
俺とセシルの始めてのサーカスが今始まる。
・・・フラン?知らね。




