殲滅
今回はちょっと短めです
「ノーラさん!」
「リュージさん!」
セシルとともに中央広場へ人ごみを掻き分け駆けつけるとギルドの前にテントが張られており作戦本部のようになっていた。俺はその中からノーラさんを探し出し声をかけた。
「いったい何が起こっているんですか!」
「オオカミです!ブラッディーウルフが攻めてきました!!」
「んな!?」
ノーラさんから詳しく話を聞くとつい一時間ほど前に東西南北4つの門が一斉に破られ何百というオオカミが町へ雪崩れ込んできたらしい。
今は町に残っている冒険者と騎士逹で前線を支えているが、戦える冒険者のほとんどが森の方へ向かっており、騎士は元々町の治安維持が仕事で人数もそんなにいないらしい。
「というわけでまったく戦力が足りていません。リュージさんは北通りの援護に回ってください」
「了解です。行くぞセシル!」
「はい。ご主人様!」
セシルを伴い夜道を全力で走る。
「見えた!」
暗視と視力強化で強化された視力が戦線を捉える。
「ブラッディーウルフが32体、リーダーブラッディーウルフが2体、騎士が6人・・・今一人倒れて残り5人か・・・」
言っている間にも戦線に近づき騎士たちの声が聞こえてくる。
「怯むな!ここを抜かれれば多くの力無き民が魔物の餌食となるのだぞ!死んでも一匹たりとも通すな!!」
「おおぉーーーー!!」
出し惜しみをしている余裕は無いか。
「セシル」
「はい」
「5分で片付けるぞ」
「はい!」
全力で走っている状態からさらに加速し道の中央で戦う騎士2人の隙間から飛び出す。
「一閃!」
すがががががが
一太刀の下一閃で拡張された攻撃範囲に巻き込まれた6体のオオカミを全て消し飛ばす。
「なんだ!?」
「援軍か!?」
「がう!?」
突如現れた俺に場が一旦停止し、次には俺へと雪崩れ込む。
「「「「ガウッ」」」」
「ご主人様!」
「がう!?」
が、その時にはセシルのサポートが間に合っている。
俺の後ろからきたセシルはスキル後硬直で動けない俺を後ろに引きオオカミの突撃をかわさせ、さっきまで俺がいた場所へとスピアを撃ち込み、オオカミ逹を牽制した。
「はぁっ!」
セシルに引き倒された俺は地面に倒れる前に硬直がとけ、倒れ行く体を引っ張り上げるように下から上へとスラッシュを放ち1体のオオカミを仕留める。
普通の冒険者ならセシルの硬直がまだとけないのにスラッシュを使ったこの状況は積みだ。
が、残念ながら俺はちょっとばかし普通じゃない。
「だぁらっしゃー」
振り上輝きを失い始めていた剣が再度煌めき、群がるオオカミを両断する。
「もう一丁」
今度は横凪ぎの一撃でまた5、6体のオオカミをまとめて消し飛ばした。
「アオーン」
順調にオオカミを始末しているとリーダーブラッディーウルフが高く吠えた。
ヒュン
「ちっ」
リーダーブラッディーウルフの声を聞いた途端オオカミ達が一斉に後退し始めた。硬直キャンセルは一度止まると切れてしまうし追い回してとどめを刺していたら全部倒す前にMPが切れてしまうだろう。だからあちらから近づいてきてもらう事にした。
「かかってこいやーーー!」
「!!」
今まで後退していたオオカミに加えリーダーブラッディーウルフまでもが俺の元へ殺到する。
「消え失せろ!」
俺は襲い掛かるオオカミをちぎっては投げ、ちぎっては投げた。
戦闘開始からきっかり5分後。
ヒュンヒュン・・・チャキ
「ふぅ・・・」
最後のリーダーブラッディーウルフにとどめを指した俺はMPの減少でだだ下がるテンションをMP回復ポーションを飲んで回復しつつ辺りを見渡す。
「うっ」
辺りには騎士や町人だったと思われる遺体が転がっていた。オオカミ達は切られても血が流れず、死んだら消えるため道に散らばる血肉は全て人間のものだろう。
俺は嫌な現実から眼を背けるように後ろを振りむいた。後ろにいた6人はセシル以外バカみたいに口を開けてポカーンとしていた。
だがそれも仕方が無いことだろう。この戦いを死戦と定め命を賭してオオカミ達との戦いに挑んだのに見知らぬ冒険者2人が(というかほぼ俺1人が)あっという間に殲滅したのだから。
ちなみにセシルはキラキラしていた。
「な、なんだ今の」
「助かった・・・のか?」
「あ、あれスラッシュだよな?」
「ふつくしい・・・」
「すごいです!さすがです!すばらしいですご主人様!!」
俺がそちらに歩み寄ると騎士逹はビビったように後ずさる。セシルはまぁいつも通りだ。
「俺達は一度中央に戻る。お前逹も手が空いたら他の援護にまわってやれ。いくぞセシル」
「あ、あぁわか」
「はい、ご主人様!」
俺達は騎士の言葉を聞く間も惜しんでギルドへ走り出した。
「リュージさん?これ以上北側に割く戦力はありません」
広場に入ったとたんこちらから声をかける前にノーラさんに言い切られる。どうやら逃げてきたとでも思われているらしい。
「北通りならオオカミ逹を全滅させてきたのでこれ以上戦力を割く必要はありません」
「え?そんな、だってリュージさん逹が出ていってからまだ十分もたってませんよ!?」
「頑張りました」
「頑張りましたって・・・そういう問題じゃ・・・」
茫然自失って感じで魂が抜けかかっているノーラさんを眺めているのも楽しいが今はそんな場合じゃないな
「ノーラさん、あいつは・・・魔獣は何処ですか?」
「!?」
「どうせあいつも来てるんでしょう?どこにいるか教えてくれませんか?」
「で、ですがリュージさんはあの魔獣に・・・」
「今度は大丈夫です。秘策も用意して来ましたかね・・・俺を信じてください」
「リュージさん・・・魔獣は多くのオオカミと共に南通りにいると思われます」
「ありがとうございます。セシル!」
「はい!」
「リュージさん!」
「?」
ノーラさんに礼を告げ早速南通りへと向かおうとした俺達をノーラさんが呼び止める。が、ノーラさんも思わず呼び止めてしまっただけらしく伸ばしかけた手と視線ををしばらくうろうろさせていたが
「・・・ご武運を」
とだけ呟いて手を引っ込めてしまった。
「ええ、必ず無事に帰ってきますよ」
俺はノーラさんを安心させようとして逆にフラグっぽいことを言いつつ南通りへと急いだ。
リュージは毎回一閃を叫んでいますが実は叫ぶ必要はありません。アクティブスキルは念じるだけで発動します。ですが、スラッシュや魔法は発動に技をイメージする必要があるため技名を叫んだほうがイメージし易いのです。・・・ぶっちゃけA○の心意技みたいな物です。




