奴隷
昼過ぎ頃に町へ着いた俺達は疲れている体をひきずるようにギルドへ向かう。
「リュージさん!?どうしたんですかその格好!?」
ギルドに入った瞬間ノーラさんに掴みかからんばかりに詰め寄られた。
というのも俺とセシルは今森から帰ってきたばかりの血でどろどろの防具を身につけているのだからしょうがないだろう。
「落ち着いてくださいノーラさん。怪我はもう治ってますから。・・・それよりパーティーメンバーの確認をお願いします。」
「あっ・・・はい分かりました少々お待ちください」
カウンターから身を乗り出している。ノーラさんを押し戻しメンバー確認を頼んでギルドカードを渡した。
「・・・」
「・・・」
ずっと俺の後ろに控えているセシルは森を出てから一言も喋っていない。
キャンプから町までずっと無言で歩き続けるのは異様なプレッシャーだったが俺も会わせる顔が無かったので丁度良かったかも知れない。
「お待たせしました・・・」
心なしか暗い顔をしたノーラさんが戻ってきた。
「現在のリュージさんのパーティーメンバーはリュージさんとノーラさんの二人だけです・・・」
「っ・・・!」
後ろから息を飲む気配がする。
レイモンド達の死を聞いてセシルが悲しんでいるのだろうと思いつつ振り向いたがセシルは少し予想外の顔をしていた。
セシルの顔には驚きと悲しみと少しばかり嬉しそうな表情が浮かんでいた。
「つまり・・・リュージ様が私の新しいご主人様ですね?」
「へ?」
「そうなりますね」
セシルがいきなり頬を染めながら訳の分からない事を言い出しノーラさんがすぐに肯定した。
ご主人様?俺が?セシルが俺の奴隷?んなバカな・・・
そうだ鑑定だ、たしか奴隷がどうとか書いてあったはず・・・
名前 セシル
種族 獣人種 奴隷
性別 女
Lv 14
HP 615
MP 273
ATK 82
DEF 26
INT 21
AGL 50
装備 皮の鎧
スキル 細剣術Lv2 索敵Lv2 聴覚強化Lv1
所有者 神楽坂 竜司
「な・・・んで?」
ホントにセシルの所有者が俺になっていた。
というかこの前は見えなかったセシルの詳しいステータスも見えるようになっていた。セシルが俺の所有奴隷になったからか?
「奴隷はその所有者が死んだ場合、遺言がなければ最初に保護した人が次の所有者になるんです」
ノーラさんの説明を聞き二人の視線がセシルに集まる。
「遺言の設定にはお金がかかりますからね。元ご主人様は特に決めてなかったと思います」
実際にセシルは俺の奴隷になっているしな。
「奴隷は所有者の財産になります。奴隷の所有物はその体を含め全て所有者の物になります。魔物の落とすアイテムの分配でのいざこざを回避するためやいざというときの盾代わりとして奴隷とパーティーを組む冒険者は多いですね」
ノーラさんが説明を続ける。
レイモンドはジンを盾代わりに使った訳だな・・・
「代わりに奴隷の所有者には奴隷の衣食住を最低限守る義務があります。これが守れないと判断したときは奴隷商に奴隷を売ったりしますね」
奴隷商という単語を聞いたとたんセシルの顔げさっと陰る。
「あの・・・ご主人様。お願いですから私を売らないでください。私はご主人様と一緒にいたいです」
「あ、あぁ。まだよく状況が飲み込めてないんだがこれからよろしくな」
「ご主人様・・・!」
なんか知らんがセシルがめっちゃ感動してキラッキラした目で見つめてくる。若干居心地が悪い。
「それとこちらが今回の依頼の報酬になります」
そう言ってノーラさんは取り出した皮袋をどちゃっとカウンターに置いた。
「報酬はブラッディーウルフ1体討伐につき銅貨7枚です。討伐数61匹なので 合計銀貨4枚と銅貨27枚ですね。お確かめください」
「えーと、はい確かに」
恐らくセシル達の討伐分もはいっているその袋を一応俺が預かっておく。
「またたくさん倒してきましたね。むしろリュージさんがそんなにぼろぼろになるほどたくさんのオオカミがいたんですか?」
「えっ?ああ、いやこれは角が生えた大きなヤツにやられまして・・・」
てへへ、と照れて後ろ頭をかく。
「どうして・・・」
「へ?」
「どうしてそれを最初に言わないんですか!!!!」
「うおっ」
「ご主人様!?」
今度はがちでノーラさんに胸ぐらを捕まれ揺さぶられた。
「魔獣が出たんですね!?そうなんですね!?」
「ちょっ、ノーラさん落ち着いて」
「これが落ち着いていられますか!!討伐隊の方逹には伝えたんですか!?」
「い、いえすぐ町に向かったので・・・」
「何てこと・・・すぐに伝令を送らなければ!」
ノーラさんは俺をほっぽり出してギルドの奥へ引っ込んで行った。
残された俺達は余りの急展開に置き去りにされポカーンとしていた。
「魔獣とは額から角が生えている魔物のことです」
俺達は戻って来たノーラさんから魔獣についての説明を受けていた。
「その角は高純度の魔力が結晶化したものとも言われていて、魔獣は普通の魔物より高い戦闘能力と知能を持ち、魔法を使う個体もいるそうです」
「魔法・・・」
ヤツとの戦闘中明らかに不自然なことが起きていた。あれが魔法だろう。
「通常魔獣の討伐はどんな相手であれBランク以上の冒険者の仕事です。討伐隊の皆さんには絶対に夜は森に入らないようにと通達しておきます」
出来ればその通達は昨日の内にしておいて欲しかったな。とか過ぎたことを考えているとノーラさんは仕事が出来たからとまた引っ込んでいった。
いつまでも血みどろな服を着ているのも気持ち悪いから取り敢えず宿に戻って着替えようかと考えふと思いあたる。
「セシル着替えとかって・・・持ってる?」
「いえ・・・持っていた荷物は無くしてしまいましたし、私の持ち物は元ご主人様の物ですから」
「それもそうか・・・」
つまりレイモンドの宿から勝手に服を持ち出す訳にもいかないというわけだ。
「んじゃ先に服を買いにいくか」
ということで、東通りの服屋にやって来た。
「着替えと下着を何着か好きなの買っていいぞ」
「よろしいのですか?」
「おう、奴隷の衣食住を守るのが主人の役目なんだろ?」
「ご主人様・・・!」
こちらを見つめるセシルの瞳にハートが浮かんでいた。俺は苦笑いを浮かべながらセシルと服をを物色する。店主は俺逹をあからさまに嫌そうな顔で見ているが俺が服を買ってやると言ったのを聞いていただろうし追い返しはしないだろう。
それからずーーーーいぶんとたった後ようやく着替え2着と下着3セットを買ったセシルと共に冒険者の宿に帰る。
ちなみに買った服をアイテムボックスにしまうとまた、ご主人様アイテムボックスのスキルまで持っているなんてすごいです!とキラッキラの瞳で見つめられてしまった、どうもあの目で見られると居心地が悪くなる。
「二人部屋に変えて欲しいんだけどできます?」
「あぁできるよ。ダブルでいいかい?」
「じゃあそれで」
「えっ?」
「ん?セシルどうかした?」
「いえ、大丈夫です。私がんばりますから!」
「??」
小さくガッツポーズをして気合いを入れるセシルと、頭にハテナを浮かべる俺。そんな俺達をやけにニヤニヤした目でおばあちゃんが見つめていた。
「はいじゃあギルドカード見せてね・・・二人ともDランクだから一泊銅貨10枚ね」
おばあちゃんに銅貨を払い部屋の鍵を受け取りセシルと共に部屋へと向かう。
二人部屋は俺が泊まっていた部屋よりも二回りほど大きく、大きなベットがデンと置かれていた。
「んじゃ、さくっと着替えてまた町に出るか。武器も新調しなきゃいけないしな」
「はい。ご主人様」
アイテムボックスからさっき買ったセシルの服一式を取りだし、渡して着替え終わるまで部屋を出ていようと思いセシルの方を向くとセシルはすでに服を脱ぎ始めており上半身は完全に裸になっていた!
「んなっ!?」
「?」
驚き固まる俺にセシルはこくっと可愛らしく首をかしげている。
その以外と大きなセシルの双丘に吸い込まれそうになる視線を無理矢理引き剥がし着替えを押し付けるとすぐに後ろを向いた。
「ご主人様?」
背後から伺うような声が聞こえてくる。
「あ、あぁ大丈夫だ気にしないでくれ」
「は、はい・・・」
セシルはしばらく心配そうにしていたがすぐにごそごそと着替えを再開したようだ。
セシルは俺の奴隷だ、奴隷だから主に裸を見られても特に何とも思わないのかもしれない。が、俺にとっては非常に目のやり場に困る光景だった。
まぁ役得だとは思ったけどね。




