前編
死神になることは罪の証
命を軽く見て、命を粗末にした罪
黒衣のマントに漆黒の瞳と髪。
全ては生前自分の犯した罪の重さを認識するため。
自分が『死を運ぶ』というこの世で汚れた役割を担うものであることを知らしめるため。
彼らは常に黒を纏う。
僕が死神として覚醒した最初の記憶は、薄暗い牢屋のようなところで目覚めた時から始まる。
自分が誰で、何故ここにいるのか・・・何も分からなかった。
まだ頭がぼんやりとしている時、鍵が開く音と誰かの話し声が聞こえてきた。
「これは、一体どういう事だ?」
「金色の髪に瞳なんて・・・」
「異端者だ・・・」
頭がまだはっきりせず、一体何を話しているのか全く分からなかった。
「とりあえず、罪の子であることには変わりない。使い魔を作る儀式を行おう。」
使い魔・・・?なんだ、それは。
ぼんやりとした目で顔を上げると、頭上には黒衣のマントを羽織り、フードを深くかぶった3人の『人』がいた。
「では、血を捧げよ。」
意味が分からず、ぼーとしていると3人の内一人が短剣を出し、僕の右腕に向けて思いっきり刺した。
「ぐっっつきゃぁああああ!」
突然の痛みに暴れ出すが、他の二人に押さえつけられる。
「お前は今日から死神となりて、命を奪い、魂を奪い、罪を償うのだ。」
薄れていく意識の中、剣を指した者が剣を抜きながら僕にささやいたのが聞こえた。
次に再び目を覚ました時、僕は『儀式の間』と呼ばれる部屋の中央にに立っていた。
僕を囲うように黒衣のフード付きマントをかぶった者たちがそれぞれ手にロウソクを持って立っている。
そして、その輪の中から一人、僕の目の前までやってきた。
「クルスよ。」
最初、それが誰のことか分からなかった。
ただ、 それが僕に向けて出した右手には金色の小鳥が乗っていた。
「今日からお前はクルスだ。これは、お前の分身。お前の力になるモノだ。」
小鳥は それの手から僕の肩に飛び移る。
「これは、お前のデスサイズ。これで、命を奪い、魂を連れてくるのだ。」
そう渡されたのは身の丈ほどある大きな鎌だった。
「クルスよ。お前はこれより死神としてその罪を償い続けるのだ。」
それが何を言っているのか全く分からない。
ただひとつ分かっていることは何かが終わり、何かが始まったと言うことだけ。
この瞬間から、僕は死神となった。




