終わりと始まり1
『君は誰?』
―僕は誰だろう?
『何故、ここにいるんだい?』
―分からない。でも、何か大切なモノを守りたかった
『大切なモノって何かな?』
―それは・・・・
『ねぇ。君の思いでは、本当に辛いことばっかりだったのかな?』
―・・・・
『もう一度問うよ。君が守りたいモノは何だい?』
―僕が・・・守りたいのは
ふと脳裏に浮かぶのは一人の少女の姿。名前も知らない少女の姿。でも、本当に知らないのだろうか。
―ちがう・・・僕は知っている
その少女の名前を。
彼女は・・・彼女は・・・
『クルス君!!』
その声はとても小さくて弱々しい。だけど自分は知っている。彼女の強さを。
溢れ出てくる闇の恐怖と戦いながら自分を信じて待っていてくれる彼女の名前を。
『その人は、誰だい?』
彼女の名前は・・・・・・・
「っっっまいーーーーーーーーーーーー!!」
クルスの叫びと同時に彼の体から光がほとばしる。その光はあっという間に闇を照らし包み込んでいく。
『バ、バカな!一体コレはどういう事だ!!!!』
◆◆◆
突然、舞を襲っていた闇が弱まり、扉が開き、その向こうから光がまるで闇を包むかのように向かってくる。
どこかで感じたことのある温かい光。この光を舞はよく知っていた。
「クルス君。」
舞がその光に手を触れるとクルスの舞を呼ぶ声が聞こえる。
舞は迷うことなく扉の中へ入っていく。
その姿をハデスはただ見つめていた。
動くことの出来ない彼が出来る唯一のことは見守ること。
『クルス・・・アポロン・・・』
ハデスは気づいていた。今の光が、想いを込めた命の光だと。




