運命は詩を歌う 4
甘いです。特にバレンタインを意識したわけでは無いのですが、甘い。
本日も、よろしくお願いします。
「私、クルス君が好きなんだよ。」
その言葉にクルスは目を丸くし、固まる。
(迷惑・・・だったかな。やっぱり)
段々意識がはっきりしてくるにつれて舞の心は後悔で一杯になった。
しばらくしてクルスが何か言おうと口を開いては閉じをくり返す。
「・・・・あ・・・・・く・・・・その・・・・・・」
何か言わないといけないのに言えない。
(ああ、困らせちゃったんだな)
困らせるつもりは全くなかったが、結果として困らせてしまった。
これはよろしくない。
「あのね、クルス君!その・・・い、今のはやっぱり無かった事にして!ちょっと寝ぼけてたの。だから、あんな変なこと言っちゃって。迷惑だったよね。ご・・・」
「違う。」
舞の言葉をクルスが強い口調で遮った。
「迷惑とか、そんなんじゃない。ただ、なんて言って良いのか分からないんだ。」
クルスは大きく息を吐くと再び舞の体を抱きしめる。
「クルス・・・・・・君?」
「嫌じゃない。嫌じゃないんだ。むしろ・・・くそ!なんて言ったら良いんだ。」
段々、舞を抱きしめる力が強くなる。
クルスの胸に顔を埋めるような形になっている舞からは彼が今どんな顔をしているのか分からない。ただ、何となく彼が照れているんだなぁと思う。
「君に会ってから知らない感情ばかり出てくる。こんな感情、僕は知らない。これをなんて言葉にしたらいいのかも分からない。ただ、君の気持ちは嫌じゃないんだ。」
「クルス君・・・」
「君が死ぬかと思ったとき、嫌だと思った。僕のそばにいて欲しいと思った。無理だと分かっていても、未来など無いと分かっていても、僕のそばにいて欲しいと・・・これは一体何なんだ?苦しくて、狂おしい。君を失いたくない。」
その言葉に、舞の目から涙が溢れ出てくる。
(きっとそれは好きって言葉だけじゃ表せない)
「う・・・ん。なんて言うんだろうね。でもね、私も思ってるよ、同じ事。」
はっとなり、彼女の体をそっと押して再び向き合う形になる。
「きっと、私たち、同じ思いをお互いに持ってるのかもしれないね。」
涙を流しながら微笑む舞に体の奥から何か熱い衝動のようなものがわき上がる。
クルスは両手で彼女の涙を優しくぬぐうと自身の顔を彼女に近づける。
互いの吐息が感じられる。
「舞・・・そばにいてくれ。」
どこか懇願するかのような言葉。
舞は目を閉じ、微笑みながら応える。
「そばにいるよ。ずっと、ずっと。最後の時まで・・・」
もう、二人に言葉はいらない。
お互いの吐息が完全に交わり、想いは重なる。
何度も、何度も・・・




