運命は詩を歌う 3
クルス視点のお話
自分が死神として誕生した頃から何かと目をかけてくれた上司ペルセポーネが舞と接触した気配を感じ、急いで舞のいる場所へと飛ぶとちょうど舞が車にひかれそうになっていた。
「舞!!」
何故、そんなことをしたのか分からない。ただ、その瞬間、舞を助けなければという想いだけが自分を支配していた。
そして、気がつけば舞ごと別の次元に飛んでいた。
「ここは・・・」
とにかく安全な場所にと思い飛んだので、この世界がどこなのか全く分からない。
辺りを見回すが何もない。
「舞。」
倒れている彼女を抱きしめ名を呼ぶが全く反応がない。
「まさか・・・・・・・・・」
嫌な予感が脳裏によぎる。
ペルセポーネが舞に接触したのは間違いない。その後に舞は車にひかれそうになった。
「アカシックレコード・・・」
だとしたら舞の未来はもう死しかない。
アカシックレコードは絶対だ。舞が以前助けた人間達もすでに何人かは数日後に死んでいる。
そっと、彼女の心臓部に耳を当てる。そこから、自分にはない生の証が聞こえてくる。
「舞・・・起きろ。」
彼女はまだ生きている。だが、不安で仕方がない。
「頼む。目を開けてくれ。」
そして、いつものように自分の名前を呼んで欲しい。
あの柔らかな笑顔で。
ああ、そうか・・・クーが言っていたのはこういう事か。舞は、いつの間にか自分の中で大きな存在になっていた。彼女が生きていなければ苦しくなるほどに。
その感情に名前をつけるとしたらきっとひとつだけだ。
「舞、起きろ。」
君に伝えたい言葉がある。
君に聞きたいことがある。
どうか、目を覚まして。そして、いつものように笑って名前を呼んで。
「舞!」
◆◆◆
どれほど時間がたったのか分からない。ただ、ずっと舞の名前を呼び続けていた。
すると、僅かに彼女の瞼が揺れる。
そして、ゆっくりと目が開き、しばらく視線をさまよった後クルスに視点が定まり、柔らかく微笑んだ。
「クル・・・・ス・・・・・・・・君。」
舞の目が覚めたら何か言おうと思っていた。しかし、それは今ではどうでも良いことだ。
ただただ、彼女の体を強く抱きしめる。
震えているのは自分か彼女か。
「ごめんね。心配かけちゃって。」
そんなことはどうでも良い。君が無事なら些末なことだ。
やがて、ゆっくりとした動作で舞の腕がクルスの背中に回る。
「・・・・・・・・・」
温かい。体温の内示分とは違う生きている証。
自分の気持ちにずっと、見ないふりをしてきた。だが、もう無視をすることができないほどこの気持ちが育ってきてしまった。
自分と舞は存在する世界が違う。それでも望んでしまう。彼女のそばにいることを・・・
「クルス君・・・・・・私・・ね。」
しばらくして舞がクルスの体から僅かに離れ、向かい合う形になると口を開き始めた。
舞はまっすぐクルスの瞳を見つめる。
「私、クルス君が好きなんだよ。」
その言葉に無いはずの心臓が本気で止まったかと思った。
何も言うまい。
しかし、予定より長くなってる・・・