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その役職(な)は死神  作者: 亜里沙
第1奏 始まりの詩
18/30

運命は詩を歌う 2

『君を支えてくれる子がいる。いつかきっと、あの子は君を救ってくれるよ。』

 


 それは誰の言葉だっただろう。実際に自分がその人からその言葉を聞いたわけではない。ただ、それは、確かに自分の記憶なかにあるモノだった。




                 ◆◆◆




 舞は無我夢中で走り続けていた。あまりに必死すぎて自分が今どこを走っているのか分からない。

 ただ、彼女はのために走り続ける。

 舞が角を曲がろうとした時、車が自身に向かってくるのが見えた。

「舞!!」

 何度も聞いたその声と車のブレーキ音が耳の奥で響く。

 意識が闇に包まれる寸前、覚えのある温かい腕が自身を包み込んでくれたのを感じた。




 夢と現実の狭間。

 舞はぼんやりとした意識でそこにいた。

『もし、君が大きくなっても死神が見えて、ある日私と同じ金色の死神出会ったら・・・』

 自分がよく見知る金色の死神とよく似た顔。彼の時を10年ほど進めたらきっとこんな姿になるだろうなぁ。

 でも、雰囲気が全く違う。

 他人を近づけさせない雰囲気を出している『彼』とは違いこの人はとても柔らかい感じがする。

『その子の力になってあげて欲しいんだ。』


(力になるって、どうしたらいいの?どうしたら彼の力になれるの?)


 その問いに彼から答えは返ってこない。ただ、この金色の『彼』とよく似た人は舞の頭をなで続ける。

『忘れてくれても良いよ。でも、君はきっとあの子に出会う。そして、それは君にとってもあの子にとっても良い出会いになるよ。』


(本当にそうなの?ねぇ、あなたは一体誰なの?)


『・・・・ぁ・・・い・・・・・・・・・』


 どこからか声が聞こえる。

 とても必死で、どこか苦しげな声。


『ま・・・・・・・・・い・・・・・・・・・・お・・・・・・き・・・・ろ』


 それは悲痛な響き。私は、この声を知っている。


『舞!起きろーーーー』

 

 ああ、そうだ・・・この声は・・・・・・・・


 次の瞬間、世界が暗転し、辺りが暗くなる。しかし、闇の奥に小さい光が見えた。


(行かなくちゃ。)


 きっと『彼』はあそこにいる。今もなお、あの光の方から『彼』の声が聞こえてくる。

 何度も何度も、必死に自分の名前を呼んで待っていてくれている。

 

 舞は必死に光に向かって手を伸ばしながら進む。


(わたしなら大丈夫だよ。今、そこに行くから。)


 そして、ついに光が手に触れると舞の体は光に包まれた。








「起きろ!舞。」

(うん。心配してくれたんだね。ごめんね。すぐ、起きるよ。)

 今まで固く閉じられていた舞のまぶたがゆっくりと開く。

 まだ、意識がはっきりしていない様子だが、彼女の瞳は誰かを捜すように辺りをさまよい、やがてようやく自身を抱きしめ、見つめる金色の光を見つけ微笑む。

「クル・・・・ス・・・・・・・・君」

 名前を呼ぶといつもは無表情な『彼』の顔が僅かにゆがんだ。

 そして、力強く舞の体を抱きしめる。

 僅かに彼の体が震えている気がするのは気のせいではないだろう。

「ごめんね。心配かけちゃって。」

 まだ、うまく体に力が入らないが、何とか両手をクルスの体に巻き付ける。

「・・・・・・・・・」

 クルスは何も言わない。だが、言葉よりも彼の全てが気持ちを舞に伝えてくれる。

「クルス君・・・・・・私・・ね」

 だから、舞は言葉を紡ぐ。彼のために・・・そして、自分のために。


「私、クルス君が好きなんだよ。」




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