前編
舞ちゃんの過去編。
2/20ちょこっと変えました。
ああ、これはいつもの夢だ。10年前のあの日の・・・
真っ赤に燃える炎の中、私を庇って家具の下敷きになった両親が血を流しながら私を見つめた。
二人は苦しいだろうに笑みを浮かべながら私に「逃げなさい」と言う。
逃げたかった。でも逃げられなかった。
両親を置いて逃げるなんて事、できるわけがない。
ふと、上を見上げると両親を押しつぶしている家具の上に男の人が立っいた。
炎の明かりが反射して光るその髪の色は金色だった。
「あ・・・外国の人?助けに来てくれたの?」
男に人は驚いた顔で私を見た。
「私が見えるのか・・・だけど、残念。私は君のご両親を助けに来たわけではないんだよ。むしろ、その逆かな。」
男の人はそう悲しそうな顔で微笑むと手から大きな鎌を出した。
そして、何の躊躇もなくその鎌で両親の首を切ったのだ。
二人の首が飛んだと思い、一瞬、目を閉じた。しかし、目を開けても両親の首は無事だ。
ほっとしたのもつかの間、今まで私を見つめていてくれた2対の瞳が閉じられいることに気がついた。
「おとう・・・・さん?・・・・おか・・・あ・・・・・・さん?」
呼んでも二人は動かない。それが意味することを幼いながらでも分かっていた。しかし、それを信じたくなかった。
「う・・・わぁ・・・あああ・・ああ・・・・・・」
声にならない音が口から出てくる。
信じたくない。
認めたくない。
認めてしまったら全てが終わってしまう。
「そうか・・・君がクルスの・・・・」
その時、私は自分のことで一杯で、金髪の男の人が私を見て言った言葉が耳に入らなかった。
「火の回りが早くなってきたな。早いところ出ないとこの子も危なそうだ。」
男の人はまるで体重など感じさせない軽やかさで家具の上から降りると私を抱き上げた。
「さて、落ちないように捕まっていなさい。君はまだ死ぬ運命ではないよ。」