Ⅲ
【誤字・脱字を発見された場合は私まで教えてくだされば幸いです】
突っ込みどころ満載ですが、突っ込んだら負けですので
今回はショタ回です
もう一度言います
ショタ回です
こんなにショタ回にするつもりじゃなかったのに、どうしてかこうなってしまいました
前回が非常に鬱回だったので今回は少しばかり明るい、ギャグ的な回にしてあります
湊斗とライトの意外な関係を描きました
微妙に、というかかなり本編とリンクしております
『僕の――』
あの少年の笑顔はまるで――
太陽のような温かい笑顔だった。
『湊斗と少年』
俺は笑顔で手を振るライトさんの元へ、駆け付ける。
はぁはぁと息があがっている。
「みなとんおせーよ」
ライトさんは苦笑混じりに言う。
「発作が起こっちゃったんですよ。仕方ないじゃん……」
俺は溜め息をつく。
「ふーん、発作か。最近起こらなかったのになー」
いかにもそんなことはどうでもいいと言わんばかりの態度をとる。
「ま、取り敢えず修行修行」
俺の肩を叩きライトさんは先に行ってしまった。
「はーあ……。ったく、ライトさんってば……」
そんなことを言いながらも俺は楽しそうに笑ってライトさんの後を追っていく。
透き通るような青い空が広がっていた。
「ぶはーっ! 疲れたー! 」
「お疲れー」
そう言って、ライトさんは冷たい飲み物が入ったペットボトルを俺の首筋に当てる。
首筋にヒヤッとした感覚。
「うぎゃっ?! なにすんだよ! 」
俺の反応をあたかも楽しむように、にやつくライトさん。
「ふざけんなよ、もー……」
修行が終わるたび毎回毎回やられるのだが、正直言って迷惑でしかない。
そんなに俺の反応が面白いのだろうか。
「そんな顔するなよー」
ライトさんが俺の顔を覗き込んでくる。
どうやらいつのまにか凄く不機嫌な顔をしていたらしい。
俺はライトさんの肩をグイと押し、突き離す。
「みなとんひどっ」
「あー、もう……。ごめんなさい 」
一瞬の沈黙(の騎士ギャラティン)。
「いいよいいよ」
ライトさんはニッと笑う。
その笑顔は無邪気な少年、そのものだ。
何故だろうか。
少しだけその笑顔に懐かしみを感じる。
「そろそろ帰るかー」
ライトさんは尻に付いた砂を払いながら言った。
その声にハッとし我にかえる。
今は午前11:00。
帰る頃には丁度お昼時だろう。
「みーなとーん? どした? 今日はいつにも増してぼーっとしてるけど」
「いつにも増して、というのは余計です」
グイ、とライトさんを押し退け俺は立ち上がる。
ライトさんはけらけら笑っている。
俺はむすっとする。
あぁ、そうだ……俺の相棒の太刀。
忘れるとこだった、ごめんな。
俺はよいしょと背負い、歩き出す。
身軽なライトさんは既に歩き出していた。
「早くしないと置いてくよー?」
「はいはーい……」
ふと、俺は後ろを見る。
少しだけ、よくわからない何かが、嫌なモヤモヤが胸の中に広がるのを感じた。
その時の俺は気のせいにしてしまったのだが。
帰り道。
「あ、猫」
ライトさんは猫に駆け寄る。
どんだけ猫好きなんだか、と言いたいところだが、俺も猫が好きだから言うことはできない。
猫とじゃれあうライトさん。
俺はあまりにどちらも可愛かったため、にやつく。
「可愛いなー……もう」
「うっせ」
頬をつねられた。
――いつの間に移動したんだよ、ライトさん。
後からじわじわと痛みがやってくる。
つねられた痕をさする。
「っつたぁ……」
「ざまぁ」
ライトさんはケタケタ笑う。
俺は口を尖らせる。
どうしてか、この人と居るとどうも調子が狂う。
ケタケタ笑うライトさんをよそに、俺はさっさと歩き出す。
今日の夕飯はどうしよう。
なす(なすお)、ひき肉?
……あったっけな。
トマトは畑にあっただろうし……。
目の前で手が振られる。
「本日二回目。みなとん大丈夫かー」
「あ、まぁ……大丈夫です」
俺は曖昧に返事をする。
「ふぅん」
ライトさんは頭の後ろに手を組むと、早足で歩き出してしまった。
ここでため息。
手を後ろにやると、背中には相棒の太刀。
コイツとの出会いを思い出す。
初めてこの太刀と出会った時は、まだ幼かった。
「……これって重いのかな 」
この問い掛けに答える者は居ない。
この時既に俺は両親をなくしている。
「……」
財布を開けるが、ほとんどお金は入っていない。
ギリギリこの太刀を買えるかどうか。
しかしこの太刀を買ってしまうと今日の夕飯が食べられなくなる、という事態に陥る。
俺は腕を組み悩んだ。
「ねぇ、キミ」
突然声を掛けられ、ビクッとした。
恐る恐る後ろを振り向くと、そこに居たのは――少し日焼けをした浅黒い肌、笑顔が良く似合う(今思えばライトさんに似ていたかも知れない)少年。
「なん、ですか……」
「いやー、何かずっとそこにぼーっと突っ立ってるからさ、何してんのか気になって」
「あ……邪魔でしたか。すみません……」
「違う違う」
「……? 」
俺は首をかしげる。
「もしかして、その太刀が欲しいの?」
「えっ……」
驚いた。
まさか見知らぬ少年に俺の心の内が読まれるとは。
「お金は? 」
「これだけしか…… 」
俺は少しだけお金が入った財布を見せる。
「……。俺が買ってやるよ、その太刀」
「え?! 」
――買って……やる?
唖然とした。
俺とあまり大差のないであろう年齢の少年と出会い、その少年に武器を買ってもらうことなど誰が予想しただろう。
俺は突っ立ってることしか出来なかった。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとう……ございます」
ボソボソとお礼を言う。
初めて持つ、武器の重み。
何とも言えない感覚が手に、皮膚に、脳に伝わってくる。
「そーいえば、君。ここら辺じゃ見かけない子だけど……名前は? 」
少年は俺に聞く。
「僕の名前は、湊斗。湊斗って言います」
「みなと……。男の子? 」
「え……あ、いや……これでも僕は女です」
「そっか」
少年はニコッと笑う。
その笑顔に不意にもドキッとしてしまった事を覚えている。
「そういえば、買ってもらったお礼……」
「いいよいいよ」
そう言って、少年は立ち去ろうとする。
「待って!」
俺は無意識のうちに少年の腕を掴んでいた。
「僕の、サファイアのペンダント……お礼に貰ってください」
「……いいの?」
俺はこくっとうなずく。
「ありがとね」
少年は笑顔で俺の頭を撫でる。
「んじゃ」
そう言うと、少年は手を振りながら走っていき、人混みの中へ消えた。
「サファイアの……ペンダント……」
俺は呟く。
すると目の前で歩いていたライトさんがいきなり転けた。
「大丈夫ですか?! 」
俺は急いで駆け寄る。
「だいじょーぶだいじょーぶ」
いつもと変わらぬ笑顔を見せるライトさん。
何処かで見た気がするこの笑顔。
俺は、まじまじとライトさんを見つめてしまう。
「みなとん?」
ライトさんも見つめ返してくる。
「あっ……。いや、ごめんなさい! 」
俺は急に恥ずかしくなり視線を反らしてしまった。
顔が赤くなったのを見られたくなくて頭を抱えて座り込む。
「うー……」
「にゃー! 」
――いや、それじゃないから。
急にライトさんが駆け出す音がした。
顔を上げた時には、もうライトさんの姿は無かった。
「ライトさん……? 」
俺は急いで家に駆け込み、自室に籠る。
自室の隅にある箱に近付きゆっくりと開けた。
ジャラッと音を立てて、あるモノを取り出す。
――サファイアのペンダント。
俺が小さかった頃、俺と同じくらい幼き少女から貰った大事なもの。
『僕の名前は湊斗。湊斗って言います』
その少女は湊斗と名乗った。
すなわち――みなとん。
実を言うと俺は幼少期にみなとんと出会っている。
――あの頃のみなとんは小さかったなー……今も、ちっさいけど。
俺はベッドに飛び込み、仰向けになって腕と足を放り出す。
右腕でサファイアのペンダントを持ち上げる。
ペンダントは太陽の光に反射し、まばゆい光を放つ。
その光はどこかしら温かく、落ち着かせてくれるものだった。
みなとんには、あの時武器を買ってやった少年が俺だということも、貰ったペンダントをいまだ大事にしてることは内緒にしてある。
「こんなにずっと一緒に居るのに、どうして俺があの少年だってこと気付かねえんだろーな。みなとん、どんだけ鈍感なんだよ」
ふぅーと息を吐き出す。
よくわからないが非常に身体がダルい。
「疲れたー……」
俺はゆっくりと瞼を閉じ、サファイアのペンダントを握ったまま眠りに落ちる。
眠りに落ちる直前、恐らくみなとんであろう人物が勢いよくドアを開けるのが聞こえてきた。
「うがー……疲れた……」
俺はテーブルに食材を置き、突っ伏せる。
畑からも食材を採ってこなければ。
サンダルを履き、麦わら帽子を被って外へ出る。
「……あぢー……」
真夏の陽射しが、さらけ出された肌に直接突き刺さる。
血のように紅いトマトが水滴で太陽の光をキラリと反射した。
俺は手を伸ばし、トマトをもぎ取る。
ついでに茄子も、もぎ取る。
「今日は~ミートソース~スパゲッティ~♪」
スキップしながら家に戻っていく。
しかし暑い。
「これで作れるかな……」
テーブルに食材を並べ指差し確認。
目に入ったトマトを手に取り、鼻に持っていくと土の匂いがした。
包丁、まな板、鍋、フライパンを準備し、さっそく調理に取り掛かる。
「おっしゃ! やってやんよ!! 」
~1時間後~(調理風景描写面倒でした、てへぺろっ)
「できたー! 」
ミートソーススパゲッティとサラダ。
自分で言うのもなんだが、上出来だと思う。
「さて、ライトさんを起こさないと」
俺はライトさんの部屋に向かい、部屋のドアをノックする。
「ライトさーん、お昼できましたよー」
だがドアの向こう側からは何も聞こえない。
もしや熱中症? と思いドアを勢いよく開ける。
「ライト……さん……? 」
そこには寝息をたてて、気持ち良さそうにぐっすりと眠っているライトさんがいた。
「……かっ……」
――かわおおいいいいうういいおおおおおおおいいいうううういい!!
起きているときに本人の目の前でこんなことを言うと、何をされるかたまったものではないのだが。
あまりにも気持ち良さそうに寝ているため、俺はそっとしておくことした。
リビングに戻り一人寂しい昼食を済ませると、よほど疲れていたのか、俺はテーブルの上でいつの間にか眠っていた。
「……ーん……なとんー! みーなとん! 」
耳元で誰かが呼んでいる声がする。
「ねえ、もう夕方だよー? 」
――え?
ゆっくりと目を開ける。
顔を上げ窓から外を覗くと、夕焼けで空が茜色に染まっていた。
「みなとん、爆睡だったねー」
いつの間に起きてきたのであろうか。
ライトさんが目の前で頬杖をつきながらニヤニヤと笑っている。
――もしかしてもしかすると寝息聞かれた……?
嫌な予感がした。
「もしかして……俺の寝息聞いてましたか」
「んー? さぁどうだろー」
ライトさんは更にニヤニヤした。
あぁ、もうこれは。
聞かれていたな。
「はぁー……」
「そんな顔しないの」
ライトさんが俺の髪の毛をわしゃわしゃしてくる。
「……はーい」
「それよりお腹空いたー! 」
……どこまでも自由だな、この人は。
「はいはい、作りますよ」
「やったね」
そう言って、ライトさんは満面の笑みを浮かべる。
夏の所為か、外はまだ明るい。
少し明るい空に雲が浮かんでいるのが見える。
夕飯を食べ終わり皿を洗っている俺は改めて夏を実感した。
「みーなとーん。お風呂空いたけど」
ライトさんは、お風呂上がりの濡れた髪の毛をタオルで拭いている。
「お皿洗い終わったら入ります」
「わかったー」
俺は急いで皿を片付け、お風呂に入る準備。
今日は非常に疲れた。
早くお風呂を出て、早く寝ることにしよう。
【めんどいので風呂シーンカット。期待した奴は沈んでこい】
歯磨きをして、俺はベッドに飛び込んだ。
「ふぃー……」
ベッドに寝転ぶと、疲れがどっと襲ってくる。
――眠い。
昼寝を十分にしたハズだが、疲れはとれていないようだった。
眠気が疲労した身体に襲ってくる。
「……おやすみ……なさい……」
ひとりぽつんと呟き、眠りについた。
夢の中で一人の少女に出会った。
少女は俺に何かを話し掛ける。
この少女は笑う。
「はじめまして! 私は――」
少女は、夢の中で微笑む。
おはこんにちばんは
何か食べ物にかけるとしたら大体ポン酢をかける依祢です
相変わらずの低クオでお送りしております
そのくせ、視点を変えて文章を書く、といった無謀な挑戦をしてしまいました
今回は読んでいただいた通り、本編の伏線を利用させてもらいました
許可はとってあります
妄想に突っ走っている気がするのは、気のせいじゃありません
大丈夫、アナタの目は正常だと思いますよ
実を言いますとショタは湊斗のみの予定だったのですが、本編の伏線を使うにあたってライトのショタも登場させることになってしまいました
さらに最後の最後にロリも登場しております
ファンタの蓋を開けっ放しにしてました
気付いた方もいらっしゃるとは思いますが、前回と違ってギャグ要素を盛り込みに盛り込みました
少しは明るい話になったのではないでしょうか
最後になりますが、この小説を読んでくれた方々に盛大な感謝を
次回は湊斗と少女が再会するお話
依祢
P.S.
次回最終回だったりしなかったりします