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Boy have a problem

 この春、俺は高校2年生になった。だが俺はクラスで孤立している。

 だが友達がいないという訳ではない。違うクラスには友達がいるし、仲の良い先輩や後輩、違う学校にも中学時代の友達がいる。

 そう。俺の所属するクラスだけで俺は孤立している。




「………ハァ。」


 帰りの電車の中、おれは人知れずため息をついた。時刻は午後3時50分。同じ車両には俺を含めて数人しか乗っていない。


「………ったく、なんの嫌がらせなんだか。」


 クラスメート自体は悪くはなかった。何人か去年同じクラスだった奴もいる。だけど2人、俺のことを毛嫌いする奴がいた。

 その2人はなんの因果か俺の左隣と真後ろの席。俺が何かしらする度に舌打ちをして不愉快オーラを全開にしてくる。プリントを回す時なんかかなりしんどい。


「ハァ。猫になりたい…」


 猫は気楽だ。あいつらは大抵一匹で行動する。何をするにも一匹だ。だから今の俺のようにはならないだろう。

 そんなことを思っていた矢先だった。


「ちょっと止めてください!」


「良いじゃないか別に。ホラホラ。」


 痴漢だ。しかも満員電車ではなく、田舎の数人しか乗っていない電車の俺の目の前で。

 被害にあってるのは見た目20代後半と見える綺麗な女の人。危害を加えているのは金のネックレスに宝石を散りばめたロレックスの腕時計。ダイヤとルビーの指輪をはめている60代前半ぐらいのじいさん。

 他の乗客は我関せずの態度。声一つ出さない。俺は立ち上がった。


「オイじいさん。嫌がってるだろ。それ以上やると警察に突き出すぞ。」


 俺は女の人を触ろうとしていたじいさんの手を掴む。

 この電車はワンマン運転。通過する駅も無人駅が大半だ。今いる青柳駅から駅員のいる駅に着くには終点の小垣駅まで行くしかない。あと7分といったところか。


「なんだ小僧。大人に手を出すんじゃねぇよ。」


「アンタみたいなのは大人と言わねぇよ。」


「この糞ガキッ!」


 イライラしててつい乱暴な言葉使いになった俺も悪いが、じいさんが逆上して立ち上がった。その拍子にじいさんを掴んでた俺の手が離れたため殴り掛かってきた。ハァ、めんどくさい。


「っと、そら!」


 俺はじいさんの拳を手の甲で捌く。そしてその手を掴んだ。そして一気に背負い投げに持って行った。


「グワァッ!」


 じいさんは情けない声を上げて背を床に付けた。畳じゃなくて固い床だ。しばらくは動けないだろう。


「………ハァ。猫になりたい。」


 動かないじいさんに一瞥をくれた。全く、いらん暴力を振るったもんだ。もしかして停学とかにならないだろうな。


「えっと、君!その………ありがとうね。」


 女の人が声をかけてきた。こうして見ると、中々というか、かなり美人だったとは。


「いえ、別に…」


 自分がイライラしてたからつい投げちゃいましたなんて絶対言えっこない。


「君、柔道やってるの?」


「えっと、中学時代に…」


 まずい。このままじゃ根掘り葉掘り聞かれる。


《小垣駅ぃ~小垣駅ぃ~。お降りの人は左の扉からお降り下さい。》


 運よく終点に着いた。ここはトンズラするとしよう。


「じゃあこのおじいさん頼みますね。しばらくは起き上がれないと思うんで。」


「あ、ちょっと君!」


 引き止めようとした女の人を無視して俺はさっさと電車から降り、家の最寄駅へと行く電車に乗り換えた。 幸い乗り換えた車両には誰も乗っていなかった。誰も座っていない座席に腰掛ける。


「冗談じゃない。もし停学になんかなったら俺は…」


 俺には停学にも退学にもなっちゃいけない理由があるのに…


「あぁ、猫になりたい。」



 その後は何事もなく無事に家に着いた。


「ただいまー。」


「あら、お帰りなさい。ここんところいつも早いじゃない。」


 玄関を抜けたらお袋が顔を覗かせてきた。手にお玉を持ってるからきっと晩御飯の支度をしてたんだな。


「あぁ、うん。クラスメートに同じ電車の奴がいないからね。」


 俺はとっさに嘘をついた。この程度のこと、自分で何とかしないと男が廃る。


「そう。じゃあ6時に晩御飯たべれるから。」


「はぁーい。」


 一年間、こうやって嘘をつき続けるのか…

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