てってれー地獄のテストー
「どうでしたか皆さん。プールは楽しめましたか?」
先生が教室の真ん中でみんなに質問をした。
みんなの目はとても輝いていた。次の時間になにがあるかも知らずに。
誰も予定表が貼ってある方の黒板を見ていないのだ。見ていないから次の時間が何かも覚えていない。
覚えていないからこんなに楽しそうに教室にいれるのだ。
先生は明るく楽しそうな表情から一変して暗く恐ろしい表情に変わった。
皆は今。初めて現実に戻ってきた。
恐る恐る先生から目を離し予定表を見てみた。
先生の表情から見てちょっとだけっ察していたものもいたが、ここで確定してしまった。
皆が必死に逃げようとしていた”テスト”は”今”この時間に存在しようとしていた。
キーンコーンカーンコーン
「あ”…………あ”あ”あ”……人生終了の鐘…」
「…見てないみてない~私何も見てない~~~!!見えない見えない何も聞こえない!」
「あ…終わった。」
「そういやせんこー言ってたわ…プールの後…テ…」
「おい銀涅!これ以上先は絶対に言うな!」
「え?足し算と引き算だけ覚えた!1+1は……………」
一同「(りん…1+1くらい即答してくれよ…)」
りんは首をかしげながら周りを見渡した。そしてしゃがんだりジャンプしたりを繰り返した。
両手を大きく広げて何かを言い始めた。
「あ”-あ”-あ…いるかわからない神様へ~1+1の答えをこの私に授けてください!」
そう言って椅子に座った。椅子に座った後ニヤリと笑ってもう一度立った。
その反応を見てみんなはよかったーと胸を無でをなでおろした。
だがその安心を裏切るのがりんという人物だ。
「わかるよ!知ってるからね!1+1の答え!えっとね……………」
・ ・ ・
「わかんねーのかよ!」
りんがずっと黙っているのにとうとうしびれを切らした男子組はツッコミを入れた。
「じゃぁ…早速筆記テストから始めますよ…?」
「え…」
「嘘だ…。」
「終わた。」
それぞれが絶望の顔で先生の持っているテストと思われしプリントを眺めていた。
現実逃避をしたくてもできない。これが現実というものだ。
りんは1+1の答えも分からないままテストに臨むことになってしまった。
前の席から回ってくる意味の分からないテスト用プリント。りんの目に映るそれはまるで呪文が大量に書かれているようなものに映った。
ぐるぐると目を回しながらその呪文が書かれているようなプリントと向き合う。
時間は刻々と過ぎて行ってしまうが…りんの回答用紙はまっさらで綺麗な紙のまま。
おまけに問題用紙には薄い鉛筆で書かれた落書き。
ひすいや石涅、ゆいなどは鉛筆を素早く動かし回答を書いていく。
ほかの人たちもりんのように諦めて落書きをしているわけではなく、テストとにらめっこしながら回答を探していた。
「(迷子の迷子の答えさん。これの回答なんですかーー!!答え~を聞いても分からない~!回答聞いても分からない!!足し算ってどうやってやるんだっけ?なになになに?)」
さらに時間は過ぎていきテスト時間は残り僅かになってしまった。
りんは思い付きで回答用紙に答えを書いていく。書いてある内容は勉強で習うようなことではないものばかりだった。しかも回答用紙の裏に先生の似顔絵を描き、角を生やして怒りマークを添えた。
これを見たら先生どんな顔するのだろうということが頭の中を埋め尽くした。
これは結構想像がつくだろう。
絶対そのイラストと同じような顔になるに違いない。とりんはクスクス笑った。
ラムは後半ずっと同じ姿勢で全く動かない。
それは、爆睡してしまっているからだ。前半のほうはけだるそうな目で問題用紙を見つめながら問題を解いていたものの、途中からカタッと崩れ落ち寝てしまったのだ。
テストが終わるときまでに起きれるか。その時までに起きれなかったら先生に寝ていることがきっと100パーセントバレて説教行確定だろう。
「(わー…幸せなの。とっても幸せなの……。雲の上で…寝てるの……。)」
「(どうしよう…俺マジでわからない…。どうしよう。これだとりんと一緒になってしまうのでは…。なんだよこの問題…あの先生…「私が教えなくてもできますよね?」じゃないんだよ!!できないんだって!)」
はおは内心めちゃくちゃ先生のことを愚痴った。なにが「私が教えなくてもできますよね?」だよ!と。
先生は音楽会の練習を優先させたのだ。だから勉強がそもそもできない人たちにとってはそれは終わりということに等しかった。
筆記テストでいい点数が取れなかった場合、魔法技術のほうで高点数を取らなければならないのだ。
「(あー先生…本当に意味わかりませんって。これ絶対教科書に載ってなかった!参考書を買えってこと?やだやだお金がパーって消えて行っちゃうもん。でもテストでいい点数取らないと…)」
なつも同様先生の愚痴と教科書への愚痴。教科書に載っていなかったら参考書に載っているのではないかと思うも、それを買うにはお金が必要なのでお金が必然的に消えてしまう。
だがそうやって節約してしまうとテストでいい点数が取れなくなってしまう。
そういう悩みを抱えていた。
「(全くわからねー。石涅の野郎なら解けるんだろうな。アイツ無駄に頭いいからな。ティーチャーめ。絶対許さねー!)」
銀涅は兄である石涅への嫉妬…愚痴をぶつけながらも結構先生への愚痴もぶつけていた。
これが実際に先生に聞こえているのだとすればとんでもなくヤバいが心の中の声なので聞こえることはないのだ。
「(助けて助けて助けて助けて…意味わからないよ!ラムちゃん!Helpミー!)」
セコは頭の中で大爆発を起こしながら必死にラムに助けてもらいたいと願っていた。
ラムは爆睡してしまっているし、そもそもテストなので助けてもらえるわけないのだが。
「終わり!」
「回収しまーす!」
数人は理性を保ったような通常の顔をしていたが…半数以上は開始以上に絶望した顔で去っていく回答用紙を眺めた。りんは回答用紙が回収されている途中でハッと気づいてしまったのだ。
「もしかして…1+1の答えって…1が2個だから…2...だったりする…?」
恐る恐る質問をした。回答用紙が回収されているときなので、それがわかってもあまり意味はないのだが。みんなはようやくわかったのかよという顔でりんを見つめた。
そして大きくうなずいた。
「そうなんだぁ…私盛大にやらかしちゃった!」
「あ…1+1ってなんだと思ってたの…?」
「ちょっとりんさん?あまりにもひどすぎるので公開処刑していいですか?」
「え…?」
「あ…はい。私の天才すぎる回答をどうぞ公開してください!」
「じゃぁりんさんだけを公開するといじめになりそうなので、やばい回答全部さらしていきますね?」
「あ…(俺終った。)」




