第七話
青甘です。
第七話になります。
シラユキの姿は妹の冬華によく似ていた。
顔は、冬華よりも切れ長の目で、瞳の色が銀色なだけで、それ以外は瓜二つだった。
あとは黒髪の冬華と違って白銀の髪で、髪型はロングはロングでも、ストレートではないだけで、それ以外は、ほぼ一緒だった。
あと気になるのは、なぜメイド服なのかだ。
俺は少しだけ、警戒心を上げる。
「どうして、シラユキがその姿をしている」
「どうしてと、おっしゃられても、この姿になった経緯は、主人様にございます」
「え?、えっと説明してもらってもいい?」
「はい、まず私たちのような元々、変化魔法や人化スキルなどを持たない存在は、名をもらって初めて人化スキルを取得いたします」
「それで、どうして俺の妹の姿に?」
「このお姿は、妹様のものでしたか、えっとそれよりも、この姿になった理由ですね」
「あぁ」
「それは、人化するにあたって、名をくださった方の一番印象に残っている方のイメージと、名を与えたものを見た際のイメージを、融合した姿になるからです」
「つまり今回の例でいうと、俺の一番強いイメージが妹で、その妹のイメージとフェンリルを見た時のイメージが融合した姿が、今のシラユキの姿というわけか」
「はい、その通りでございます」
とういことは警戒するまでもなく、シラユキの今の姿は俺に原因があるってことだ。
それに説明を聞くことを優先して、聞き流したが変化魔法と人化スキルなんてものもあるのか、本当に違う世界に来たんだなと改めて思ってしまう。
しかし、二つ気になることがある。
「なぁシラユキ、それって元のフェンリルの姿に戻れるのか?」
「はい、可能です『このように、戻ることができます』スキルなので魔力の消費もありませんので、永続することが可能です」
シラユキは話しながらも、一瞬だけフェンリルの姿に戻ったかと思うと、すぐにまた人型になった。
「ところでさ、シラユキは何でメイド服なんだ?」
「これは私が魔力から想像した、主人様に仕えるための、戦闘服だからでございます」
「あ、そうなの?」
「はい、あくまでもイメージが反映されるのは姿のみであり、服装は自由に決めることが可能です」
危なかった、クールな感じを醸し出して真面目な顔で、メイド服を戦闘服と言ってきたから、素でツッコミそうになった。
それよりも嬉しいことに、スキルには魔力消費がないことだ。
『ゥゥゥ…あるじ、まだ〜』
「あ」
「はぁ」
すっかりケルベロスのことを、蚊帳の外にしていたからか、ケルベロスの真ん中の顔の目に涙が溜まっていて、今にも泣きそうになっていた。
シラユキは、ため息を吐いていたが、俺には大きいはずなのに、小型犬に見えてきて、罪悪感をすごく感じていた。
確か、ケルベロスは名前が三つ欲しいって、言ってたよな。
一番目につくのは、やっぱり黒よりも黒い、漆黒の体毛だよな。それじゃあつける名前は、決まったな。
「えっとごめんね、契約始めようか?」
『うん‼︎、やっと僕の番だよ‼︎』
〝我、双葉秋季は汝への従属の契約を要求する〟
『受けます‼︎』『ん…受ける』『う、受けます…』
「⁈、な、名前はノエル、ベンタ、アムだ」
急に知っている声に含めて、知らない声が三頭分聞こえてきて驚いたが、何とか三つの名前をつけることができた。
しかし俺は、ケルベロスがシラユキと同様に光に包まれて、光が治った後に出てきた〝人たち〟により、さらに驚くことになった。
「な⁈、今度は小学生の頃の妹にそっくりかよ…それに三人もいるし…」
「あるじ〜、小学生って何ー?」
「あ、いや、こっちの話だから気にしないで」
「うん‼︎、わかったー‼︎、ねね、あるじ‼︎、僕がノエルだよ‼︎」
「ん…ベンタ」
「わ、わたしが、ア、アムです…」
「あ、あぁ自己紹介ありがとう。これからよろしくね」
「よろしく‼︎、あるじー‼︎」
「ん…よろしく」
「よ、よろしく、お願い、します…」
三人とも冬華よりもタレ目で、濃い黒髪なとこ以外は、小学生の頃の冬華によく似ている。
その中でも、笑顔で元気な僕っ子がノエルで、眠そうにしてるマイペースそうな子がベンタ、ベンタの後ろに隠れて、おどおどしている子がアムだな。
嫌われてはないと思うけど、俺はアムに何かしただろうか?
「えっと、アムは俺が苦手
「ち、ちが!、ぅ」
「お、おぉ」
俺が言い終わる前に、被せて言ってきて少し驚いたが、「違う」と言ってきたということは、嫌われてもないし苦手でもない、どういうことだろう?
そう考えていると、ノエルが話し始める。
「えっとね、あるじ、アムは恥ずかしがり屋なんだ」
「そうなのか、教えてくれてありがとう」
「っ!、えへへ〜」
チッ
お礼を言いながら、ノエルの頭を撫でると、わかりやすく嬉しがってくれたので、良かった。
というかノエルの頭は、触り心地がかなり良かった。
それとシラユキの方から、舌打ちが聞こえた気がしたので、早々にノエルの頭から手を退ける。
「あっ…」シュン
ノエルの頭から手を離すと、ノエルが声を漏らして、すごく寂しそうな顔になってしまい申し訳なく思うが、シラユキから伝わる雰囲気が露骨に和らいだので、手を離した俺の行動は正解だと思う。
だがノエルは切り替えが早いのか、次の瞬間には元の元気に戻って、話し始めていた。
「でもね、アムは、人見知りで恥ずかしがってるんじゃなくてね、あるじのことがす
「わーー‼︎、そこまで言わないで‼︎」
えー、何でー、僕もあるじのこと好きだよー、ねーベンター」
「ん?…うん」
「ほらー」
「ぅぅぅ…」
「えっと、とりあえず俺は、避けられてるわけじゃないんだな」
「うん‼︎」
フルフルフルフルッ‼︎
「なら良かったよ」
笑顔で元気な返事をしたノエルと、左右に勢いよく頭を振っているアムは、少なくとも俺のことを好んでくれているけど、言わされた感がすごかったベンタは、鵜呑みにしない方がいいな。
そんなことを考えていると、後ろから袖を引っ張られた。
「えっと、どうかした?、シラユキ?」
「主人様、私にもかまってください。そして頭を撫でてください」スッ
「え?、あ、はい」
「………ありがとうございます。満足いたしました」
「あー、それは良かったですね?」
「はい」ニコッ
シラユキの笑った顔は、さすがほぼ冬華の顔だけあって、思わず見惚れるものだった。
それよりも、シラユキから俺への好感度が以上に高くないか?
ある時、冬華が三時間も長風呂をしたことがあったので、理由を聞いてみると、学校一のイケメン教師で噂の先生に、頭を触られたとかで髪の毛のケアに二時間かけたそうだ。
本人曰く「兄様以外に触られたくないのに、触られてすごく気持ち悪かったです」とのことだった。
そのあとは冬華の希望により、冬華が満足するまで頭を撫でた。
その出来事から、俺は〝女の髪は命〟という言葉は嘘ではないと思った。
だからこそ、自ら頭を撫でて欲しいと言ってきたシラユキが、俺に高い好感度を持っていると確信があった。
しかし何でそんなに好感度が高い?
「なぁシラユキ、何でそんなに俺への好感度が高いんだ?」
「一目惚れです」
「僕も!、一目惚れー‼︎」
「わ、わたし、も…」
「ん…私も」
ギロッ
「「ヒャンッ!」」「⁈」
「え?」
「ですから、一目惚れです」
ノエルたちがシラユキに睨まれて、三人で抱き合って縮こまっていて可哀想だが、今は気になることがあるので申し訳ないけど、気になる方を優先させてもらう。
「いやそれはわかったが、どこに一目惚れする要素が?」
「主人様の匂い、声、会話の中からわかる性格など全てです、詳細に言うとまだまだあります」
「も、もういいよ、ありがとう?」
「はい、それから私たちは、事前に主人様の人となりを教えていただいておりました」
「なるほどね、色々合点がいったよ、何で最初からノエルが俺に友好的だったのとかが」
「申し訳ございません」
「いや、これは誰かが謝るようなことじゃないよ」
よくよく考えたら、従者として送るのだから、事前に仕える主人の人となりは、教えておくものだ。
驚き疲れたこともあってか、頭が回っていないのかもしれない。
??「お、シラユキたちとの契約が終わったねぇ」
「それと女の子なら嫌だよね!、好きでもない男から頭を触られるなんて!!」