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閑話

 青甘です。

 今回は閑話となりますが、次回はまた秋季の視点に戻ります。

ーーーアルバス視点ーーー


 「行ったな…」


 「行きましたね…」



 私はそう言いながらも、隣の魔神である男を睨む。



 「あなたねぇ‼︎、何が『行ったな…』よ、カッコつけるくらいなら、何で最初ここに来たときに、さっさと秋季の前に出なかったのよ‼︎」


 「いや、それは心の準備をだな…」


 「何が心の準備よ、あなたの監督不行届でしょ」


 「だからって、蹴ることはないだろ、結構痛かったぞ」


 「それはそうでしょ‼︎、私は迷惑をかけた秋季に対して、早く謝りたかったのに、チンタラしているのが悪いんでしょ‼︎こんの愚弟‼︎」


 「姉上よ、愚弟はやめていただきたい…」



 この愚弟は、私と同時に誕生した魔神だったが、自我を確立したのは私が先だったので、私が姉ということになった。

 

 私だって蹴りたくはなかったが、目の前でモジモジしている愚弟を見ていると、無性に腹が立って蹴ってしまった。

 そのせいで秋季には最初、恐ろしいものを見る目で見られてしまい、少し落ち込んでしまった。

 そして驚いたことに、私に思考が読まれていると気づいた時から、秋季は無意識に呪いの力を使い、思考を読まれないようにしていたことだ。

 私たちが秋季に会ったときには、すでに呪いの効果は消してあったとはいえ、無意識でも呪いの力を使えるのには、本当に驚かされた。



 「それよりも、愚弟」


 「なんだ」


 「あなた、ほとんど私に会話をさせていたのだから、その間に秋季の〝過去〟を見ていたのでしょう?」


 「あぁ、秋季の表面に出ている呪いが強くなったおかげで、かなり鮮明に見れた」


 「どうだったのですか?」


 「それは酷いものだったぞ、普通の人間じゃ、とっくに自死を選んでもおかしくないものだった」


 「やはりですか…」


 「あぁ、妹の存在があったから死んでいないだけで、秋季の周りは、本人の思い込みや比喩ではなく、常に敵だらけだった」


 「そこまでですか」


 「秋季は、両親に同じ空気を吸うだけで嫌悪され、学校に行けば、やってもいないことで犯人扱いをされたり、ありもしない噂を流されて、ほとんどの生徒や教師から嫌われたり、休日外に出れば、ほぼほぼ何かしらのトラブルに巻き込まれる」


 「それでいて、理解者は冬華さんだけですか…」


 「何人かは〝呪いの影響を受けていないやつ〟がいたが、秋季と話そうとはしていなかったからな」


 「まぁ特段、話す必要性を感じなかったのでしょう」


 「だろうな、だからこそ、あそこまでのシスコンになったんだろうな」


 「そんなとこまで、見ていたのですか?」


 「あぁ、短期バイトを何個も掛け持ちして、その金を自分には必需品以外で一切使わず、妹への何かしらのプレゼントを買うのに使っていた」



 私たちは今回の責任として、秋季がどんな日常生活を過ごしてきたのかを、正確に知っておく必要があったので、アーテルに過去を見てもらっていたのだが、まさか秋季のシスコン話まで見ていたとは思わなかった。

 でも私は、秋季のシスコンという話しなら、冬華さんのブラコン度合いの方が確実に上であることを、たとえ秋季の未来が見えなくてもわかる。



 「愚弟、あなたは冬華さんの過去を見ることはできますか?」


 「無理だ、こちらに出向く前に試したときは見えなかった、それに秋季の未来が姉上に見れなかったように、我にも秋季の妹の過去は見れないだろう」


 「ですか…、どうしてあそこまでのブラコンになっあのか気になりますが、仕方ありませんね」


 「ん?、妹はブラコンなのか?」


 「はい、それも狂信的なほどに…」


 「おい、それはかなりマズイのではないか?」


 「………」


 「そこは何か言ってくれないか‼︎、姉上よ‼︎」


 

 ことの重大さに気づいて、まだ何か言い続けている愚弟の言葉を、私は無視する。

 それはそうだ。なんせ本当に大変なのは今からなのだから。

 秋季は初め、呪いと祝福の話になったときには、こちらが何かを言う前に、すぐに自分が呪いの方だと気づいたみたいだった。

 でも同時にもし冬華さんが呪いの方に選ばれていたらと、考えていたときの秋季からは、無意識に呪いの力が、思考を読まれまいとしているときよりもさらに、こちらが一瞬とはいえ、女神と魔神が気圧されるほどに呪いの力が溢れ出ていた。

 幸いすぐに治ったが、冬華さんへの想いがそれだけ強いという表れでもあった。

 しかし、冬華さんの兄である秋季への想いは、秋季の冬華さんへの想いよりも遥かに上をいく。

 秋季がいなくなったことを知った後の、これからの一年間を見た私は、女神でありながら一人の人間に恐怖した。

 これから私たちは、冬華さんにも事情の説明をしに行かなければならないが、私たちが目の前に現れたときの、冬華さんの第一声が「お兄様をどこにやった?」だった。

 笑顔で言ってはいたが、目が完全に怒気を帯びていた。

 私たちがまだ何も話してはいない段階から、秋季からの連絡が新たに来ないことと、目の前に突然、人が現れたことで、目の前にいる人物が秋季を連れ去ったと確信した上での発言だった。

 そこから話しを聞いてもらう姿勢になるまでに、私たちは苦労をすることになる。

 それから兄が、呪いをかけられていることに激怒し、その効果を知ってさらに激怒。

 私たちは、その怒りが収まるまで静かにしていた。

 はらわたが煮えくり返ったままだが、表面上は落ち着いた冬華さんに、祝福が与えられていることを伝えると、凄くどうでもいい様子だった。

 それよりも全ての元凶である、愚弟の部下が気になるようで、処遇を聞いてきたので答えると、ボソッと『あまいな』と呟いていた。

 次は名前を聞いてきたので、答えると『ミグマですね、覚えました』と、とても良い笑顔で言った後に『そのミグマは、異世界の人界に落とされたのですよね』と、確認をとられたので、〝はい〟と答えると『じゃあ私が見つけ次第、抹殺しても問題はないですよね』と言われ、思わず絶句したがなんとか〝問題ないですよ〟と答えることができた。

 私は冬華さんと、そんなやりとりをする未来を、この世界に来る前に見たときは、思わず冬華さんに会いたくないと思ってしまった。

 仮にも元とはいえ、神に名を連ねる魔神に対して、平気で殺すと言ってくる相手に、会いたくないと思う私は女神失格だろうか…

 そして何よりも、私たちが帰ってからの冬華さんの行動に恐怖した。

 まず家に帰宅後、すぐ兄の部屋から、兄の匂いが染み付いた服や毛布、冬華さんが上げたぬいぐるみ、歯ブラシ、シャンプー、リンスなどを自室に持ち帰っていた。

 何を行うかというと、まず兄のシャツを着て『彼シャツだ〜』とはしゃぎ、回収した布団や毛布を自分のから兄のに変更し、『おにーに包まれてる〜』とはしゃぎ、ぬいぐるみからカメラを取り出し、兄の寝顔や着替えを見てはしゃぎ、歯ブラシを自分のから変えて『間接キッス』とはしゃぎ、シャンプー、リンスを兄のに変え『おにーの匂いだ〜』とはしゃぐ。

 女神の私から見ても、冬華さんは綺麗な容姿をしているのに、その見る影もなかった。

 でもそんな冬華さんが、親の前や家の外では今まで通りにできているのだから、恐怖でしかない。


 ちなみに冬華さんが、兄の部屋から私物を持ち出したのは、両親が秋季がいなくなったと知るや、秋季の部屋から秋季の私物を全て処分し、物置にすることを理解していたからだった。

 そして私たちと秋季、冬華さんとの会合から一週間後、実際に秋季がいなくなったことに気がついた両親は、すぐに物置にしていた。


 私はふと、懸念事項を思い出して、愚弟に釘を刺しておく。



 「そういえば、愚弟」


 「黙りこくったと思ったら、なんだ姉上よ」


 「あなた、冬華さんに対して、絶対に『冬華』と名前で呼ばないでね」


 「呼んだりするつもりは最初からないが、なぜだ?」


 「冬華さんが、怒るからよ」


 「名前を呼ばれたら、怒るのか?」


 「そうよ、秋季以外の男性から『冬華』なんて、呼ばれるのに嫌悪感を強く感じるみたい」


 「父親からは、呼ばれるのではないか?」


 「不幸中の幸いなことに父親は、まぁ母親もだけど、なかなか家に帰ってこないみたいで、呼ばれるにしてもたまにみたいよ」


 「あぁ、それで我慢しているのか?」


 「えぇ、そうみたいね」


 「なるほど、了解した」



 私はこれからのことを考えて、深いため息を吐く。

 ここからは秋季のとき以上に気を張らないといけない。

 私は未来を見て、冬華さんのことはある程度、理解しているが、隣にいるこの愚弟は、冬華さんの過去を見れていないからか、多少は気を張っているが、緊張感に欠けている。



 「そろそろ行くわよ、愚弟」


 「それはわかったが、そろそろ愚弟はやめてくれないか?、姉上よ」


 「ハァァ…」


 「ため息は酷くないか?!」



 私は冬華さんに会いに行くために、冬華さんの元へ転移する。

??「今回は、アルバス視点でしたねぇ」

  「というか、酷くないですか?!」

  「あんなに秋季のことを想っているのに、アルバスは恐怖とか言って、冬華に失礼ですよね?!」

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