ホラーな洞穴 零【WEB】
ホラーな洞穴 零
アマデ・アルパチュ・モヨコ。
わたしは彼女を探している。
そして……今。
あちこちに手を回し、打てる手は全て打った……筈だ。
有り余る預金を切り崩し、売れる物は壱人息子の生活に困らない程度を残して、全てアマデ・アルパチュ・モヨコを探す為の資金に替えた。
世界を股にかけ虱潰しに駆けずり回る日々、無尽蔵に膨らみ上がる資金に、捜索の為ならば全てを捧げる所存だ! 糸目等付ける筈もないのだ! 頼れるもの使える伝手は全て使い……やっとこさ此処へとたどり着いた。
わたしに残された時間はもう残り少ない……。
「おお~い! あれ? ホントに吹っ飛ばしていいのかよ?」
「親方! 止めましょうよ! 絶対罰当たりますから?」
「たんまりもらってるんだ! もう後には引けねえんだよ! てめえらだって脛に傷ある身だろうがよ! 今さら何いってやがんだ! とっとと準備すませろや!」
「雪掻き分けるだけで壱苦労なんですから! そんな無茶言わないで下さいよ! みんな精壱杯突貫工事でやってんですから!」
「ここって神域とかですよね?」
「そうかも知れないが、今は彼の所有地だ! 施主様が神様なんだよ! 俺たちにはな! ゴタゴタ言ってねぇで発破の準備は出来たのかよ!」
「出来てますけど……あの大岩めっちゃ硬いっすよ!」
「出来てんなら、早くいいやがれ! まったく!」
「岩戸とかって奴なんですか……? ただの大岩だとおもうんですけど……?」
「上空からのソナー探索で空洞が有ることが分かってんだよ!」
「前にもそんなこと言って、何も無かった事ありましたよね! 上空からのソナー捜索で失敗続きで火の車なんですからね!」
「だからこのチャンスにかけるしかねえんだよ! 前金でたんまりもらってっからよ! 後には引けねえっていってるだろ!」
「もう神に祈るしかありませんよね! こんな罰当たりな会社ですけど!」
「へい! ムッシュエックス! 発破OKだぜ!」
ニッ!
愛する妻よ! いよいよ遇えるんだね!
待たせてご免なさい!
「発破ボン!」
「お~し! 施主さんから許可でたぞ! 導火線引いてこい!」
キュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュル……。
「セット完了しました!」
「パトランプ点灯!」
ポチッ!
「パトランプ点灯しました!」
「わんちゃんサイレン鳴らせ!」
「わんちゃんサイレン鳴らします!」
ポチッとな!
うううううううううぅわんわんわんわん……。
「第1警戒体制発動!」
「第1警戒態勢発動します! おおい! 早くこっちこ~い!」
「わかった! ワインレッドハートゾーンまで撤収!」
おおっ!
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ……。
「みんな必死だな!」
「そりゃそうでしょ! これやっとかないといきなりドカンとか、無表情でするじゃ無いですか?」
「そんなことあったかな?」
「する側は面白がってその時の気分だから覚えて無くても、された側は心に焼き付いてますからね! 在の必死の顔見れば、壱目瞭然でしょ!」
「押していいか!」
「まだ安全装置の鍵は、アンカーの襷に付いてますから押せませんよ!」
「ぐずぐずしてんじゃねえ! 早くこいこら~っ!」
「親方! あの大岩の中に空洞があったとして、どんな御宝が眠ってるんですか……?」
「施主様の奥さんだよ!」
「えっと……完全なガセ掴まされてますよね! 言って上げた方がよくないですか?」
「バカヤロ~! 黙ってろ! 発破かけなきゃおまんまの食い上げなわだよ!」
タッタッタッタッタッ……。
はあはあはあはあ……。
「みんなはあはあ……ワインレッドはあはあ……ハートゾーンはあはあ……に……はあはあはあはあはあはあ……到着しました! はあはあはあはあ……これ襷です! テントで休みますね!」
「おっ! 有り難う! ゆっくり休んどきな! 発破かけたら後処理あるからな!」
「親方! 安全装置解除しましたよ! お好きなタイミングでいっちゃって下さい!」
「おっ! 分かった! よいしょっと!」
ドッカーン! バラバラバラバラバラバラ……。
もあもあもわ~……。
岩戸の中の闇より白い手が、うにょにょにょにょうにょにょにょにょうにょにょにょにょうにょにょにょにょうにょにょにょにょうにょにょにょにょうにょにょにょにょうにょにょにょにょうにょにょにょにょうにょにょにょにょうにょにょにょにょうにょにょにょにょうにょにょにょにょうにょにょにょにょうにょにょにょにょ……。
こっちゃこう! こっちゃこう! こっちゃこう!
うわあ~!
その頃アマデ・アルパチュ・モヨコは、とある港町のイタリアンレストランで、高く掲げたピッツァの生地をくるくる回しながら思いを馳せていました。
「あのイカレポンチキ、今頃何してるのかしら……? 直ぐ後を追って来るって言ってたのに……幾年経っても、全然こないわね……? どっかのお嬢さんに、まだお熱でも上げてるのかしらね? どうせ最後はわたしの元へ還ってくるんだかんね……はやくお気付きなさいな、わたしの愛するイカレポンチキ野郎!」
ホラ~ホラ~ホラホラホラ~……。