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英霊召喚に失敗して私の勇者を乗っ取られました ! 王女の私が、世界を救ってみせます ――聖剣と悪の血統者――  作者: 名録史郎
ep1.冥界の扉を閉めるまでは

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8.聖剣変形

「殊勝じゃないか、自分から、聖剣で素振りしたいなんて」


 私は、借りた聖剣で素振りをしながら歩きます。


「ソウは言いましたよね。力は筋力と魔力と気力の組み合わせだって。いくらなんでも気力だけでは、限界があります。やはりまずは筋力を鍛えなければ」


 魔力は理屈がわかりませんので、どう鍛えればいいかもわかりません。

 ただ筋力は単純です。

 負荷をかけて鍛えるのみです。

 筋力で、腕が太くなるのは、少し嫌ですが、亡者に殺されるのはもっと嫌です。

 筋力で、100回振ることができるようになれば、気力で1000回振れる気がします。

 聖剣はかなり重いので、鉈なら、もっと振れる気がします。

 護身用の剣なら、紙のような軽さに感じるでしょう。

 敵に襲われてから無力を嘆くぐらいなら、やれるときに、できることをやっておいたほうがいいでしょう。


「振る瞬間、もっと足腰に力入れてみろ」


 ソウがアドバイスを投げてきます。


「はい!」


 私は、言われた内容をよく考えてみます。

 今までは、振ることばかりに気が向いていたので、足運びにも意識を向けます。

 聖剣を振った瞬間、足腰に力を入れてピタリと止まると、聖剣だけが勢いを増して振り抜くことができました。

 しかも、ほとんど腕に力を入れていません。

 力が分散し、これならばもっと長期的に戦えそうです。


 私は今の感覚を忘れないように、何度も振ってみます。


 ソウは私が自発的に、トレーニングしていると勝手にアドバイスをしてくれます。

 ほんの少しだけ。

 一段だけ階段を上るような、最適な一言。

 体は常に悲鳴を上げていますが、少しずつ強くなっている気がします。


 私が気合いを入れ直すと後ろから視線を感じました。

 振り向くと、旅に同行している女の子が訝しげな顔をしていました。


「あんたたちの関係はいったいなんなの? 見た目は、お姫様と冴えない従者って感じなのに、会話は逆だし」


「ははは、そうですよね」

 私は乾いた笑いが出てしまいます。


 私は、今の関係性に違和感を感じなくなってきました。

 完全に主従が逆転してしまっています。

 今の関係を言い表すならば、


「ソウとの関係は師弟でしょうか。ソウは私の師匠みたいなものです」


「師匠か、それは悪くないな」


 師匠と言われてソウも悪い気はしてなさそうです。


「小娘、お前も、護身術ぐらい身につけとけ。すぐ死ぬぞ」


 女の子はむすっとしました。

 

「小娘ってやめてくれない。あたしにも、クミースって名前があるんだから」


「名前なんてなんでもいいだろう。お前は俺様達の名前を覚えているのか?」


「それは、知らないけど」


「そういえばちゃんと名乗っていませんでしたね」

 聞かれたことがなかったので、うっかりしていました。

 お互い様ではあります。

 今まであわただしかったので、ここらで落ち着いて自己紹介するべきでしょう。


「あらためまして私の名前はニルナ・サンヴァ―ラです」

 私は、名乗って一礼しました。 


「ソウにも、ファミリーネームを名乗ったのは初めてでしたね」


「ふん。まあ、ファミリーネームは知っている」


「サンヴァ―ラってこの国の王族の苗字じゃなかった?」


「ええ、そうですよ。私王族ですから」


 ソウも、王族のファミリーネームは知っていたのでしょう。

 伝統的な名ですから。


「マジでお姫様なの? 嘘でしょう。もしかしてあたし不敬罪?」


 さっきのは冗談だったのですね。

 つまり、今はお姫様には見えないということでしょうか。

 それは、かなりショックです。


 ただ、今では、

「不敬罪にできる権限なんて私には、ありませんよ。それに王族は……」


 そこまで言いかけて、また腐臭を感じました。

 辺りを見渡すと荷車を引いた冒険者達が襲われています。

 ゾンビが10体。

 数がそこそこ多いです。

 

 ソウは鉈を構えました。


「聖剣は、お前が使え、一気に倒してしまうぞ」


「わかりました」


 私は力を込めて、聖剣を握りしめます。

 気持ちを込めてゾンビを見定めます。


 腐肉を纏い、混濁した瞳で迫ってきても、もう怖くはありません。


 倒します! 


 心から想いが沸き上がった時です。


 カシャン


「えっ?」


 聖剣が音を立てます。

 今回はしっかり聞こえました。


 何の音かよく分からず、しっかり聖剣を握りしめました。


 カシャンカシャンカシャンカシャン。


「えっ? えっ? えっ?」


 音が鳴りやみません。

 なんというか、剣がどんな形を取ればいいか悩んでいるようです。


「しっかり、気持ちを込めろ!」


 ソウの声に私は聖剣に向かって叫びました。


「はい!」 


 私は、聖剣をしっかり握りしめました。


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