20.そして
パリィ。
ヨウキ様が吐息を漏らす。
「あっ」
ソウ様は、ハデスデスサイズも使わずに、器用に憑依術の魔法だけ解除する。
ヨウキ様をニルナ様から引き離すと、自分も僕の体から離れた。
僕は慌てて、倒れかけるニルナ様を抱える。
僕の月の瞳はしっかり二人の霊魂をとらえていた。
「さあ、冥界に行くぞ。ヨウキ」
「あなたどうして?」
僕から抜けてしまえば、聖剣は使えない。
レーヴァティンは、元の護身刀に戻ってしまっている。
ソウ様は、何でもないように言った。
「一度目は許すが、二度目は許さない。が、嫁なら別だろ。何度でも許してやるよ」
ヨウキ様は、呆けた顔をした後、ソウ様に抱きつく。
「あなた。好き!」
「相変わらず、調子のいいやつだな。ニルナに礼を言うんだな。ニルナが生きていなかったら、許してなかったぞ」
ソウ様は、僕を見て言う。
「おまえもいいな」
「はい。いいですよ。まあ、ニルナ様なら許すでしょう」
ニルナ様なら、大好きなおじい様が許すというのなら、許すだろう。
多少の悪意でへこたれるようなニルナ様ではない。
ソウ様は、嫁に対して良識は求めないということだった。
僕だって、ニルナ様がどんな悪女であったとしても、許すだろう。
それが僕にとっての常識だ。
「なんじゃい。この馬鹿夫婦は」
ルーンさんが、愚痴を言いながら近づいてきた。
「あいかわらず、ヨウキは、ソウの言うことしか聞かんのじゃからの」
「よう。ルーン、久しぶりだな。手間かけたみたいだな」
ソウ様は、気さくに手を上げて、言う。
「まったくじゃぞ。ちゃんと言い聞かせてないからわらわがこんな目に」
「あなたはなんの役にもたっていないでしょう。ワタクシが負けたのは、そこの男の子でしてよ?」
「なんじゃと!」
二人で楽しくケンカを始めた。
多分、大昔からそんな感じなんだろう。
友達みたいなのに、殺し合いまでしちゃうなんて、
地獄みたいな人間関係だ。
全くついていけない。
「世話になったな。小僧」
「はい。こちらこそありがとうございました」
「ニルナはお前がいれば大丈夫だろう。好きになれとはいわないが、手助けしてやってくれ」
「もちろんですよ」
まあ、もう破滅的に好きではあるのだ。
どうなったってかまいやしない。
魔法と知略で突き進むまでだろう。
「さて、俺様達は行くな」
「ニルナ様には、挨拶していかないんですか?」
「俺様より、お前と話せるほうが喜ぶだろうよ」
「だといいんですけれど」
「それに、どうせお前は、いつでも呼べるだろう」
「ははは」
実際その通り。
もうウーツ魔王とネガイラ魔女の魔法も解析終わっている。
ウーツ魔王の魔法では、子孫にしか憑依出来なかった僕ならば、自由自在だ。
「よし、いくぞ。ヨウキ」
「はい。あなた」
「じゃあな。ルーン」
ソウ様は、軽く手を上げ、別れの挨拶とした。
「うむ」
「また来ますわ」
ヨウキ様は投げキッスしてみせる。
「お前は二度と来るんじゃない!」
二人ともあっさり冥界の扉を通って帰っていってしまった。
「迷惑極まりないのじゃ」
「本当にとんでもないですね。ニルナ様のご先祖様は」
「全くじゃ」
「ニルナ様は誰に似たんでしょうね?」
「全員じゃぞ、ニルナはあやつらの集大成みたいな性格だからの」
「それは、とんでもないな」
「あとは、ニルナを起こすだけじゃな」
僕は、抱えているニルナ様を見つめた。
相変わらず、血まみれだったとしても、うっとりするほど美しい。
どんな夢を見ているのかとても幸せそうな顔をしている。
僕は、意を決する。
「こういう、寝ているお姫様を起こす方法は一つだけですよね」
「どうするんじゃ?」
「まあ、見ててくださいよ。僕はその辺のヘタレとは違いますから」
僕はニルナ様に口づけをした。




