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英霊召喚に失敗して私の勇者を乗っ取られました ! 王女の私が、世界を救ってみせます ――聖剣と悪の血統者――  作者: 名録史郎
ep3.魔王降臨です!

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88/90

20.そして


パリィ。


 ヨウキ様が吐息を漏らす。


「あっ」


 ソウ様は、ハデスデスサイズも使わずに、器用に憑依術の魔法だけ解除する。

 ヨウキ様をニルナ様から引き離すと、自分も僕の体から離れた。


 僕は慌てて、倒れかけるニルナ様を抱える。


 僕の月の瞳はしっかり二人の霊魂をとらえていた。


「さあ、冥界に行くぞ。ヨウキ」


「あなたどうして?」


 僕から抜けてしまえば、聖剣は使えない。

 レーヴァティンは、元の護身刀に戻ってしまっている。


 ソウ様は、何でもないように言った。


「一度目は許すが、二度目は許さない。が、嫁なら別だろ。何度でも許してやるよ」


 ヨウキ様は、呆けた顔をした後、ソウ様に抱きつく。


「あなた。好き!」


「相変わらず、調子のいいやつだな。ニルナに礼を言うんだな。ニルナが生きていなかったら、許してなかったぞ」

 

 ソウ様は、僕を見て言う。


「おまえもいいな」


「はい。いいですよ。まあ、ニルナ様なら許すでしょう」


 ニルナ様なら、大好きなおじい様が許すというのなら、許すだろう。

 多少の悪意でへこたれるようなニルナ様ではない。 


 ソウ様は、嫁に対して良識は求めないということだった。

 僕だって、ニルナ様がどんな悪女であったとしても、許すだろう。

 それが僕にとっての常識だ。


「なんじゃい。この馬鹿夫婦は」


 ルーンさんが、愚痴を言いながら近づいてきた。


「あいかわらず、ヨウキは、ソウの言うことしか聞かんのじゃからの」


「よう。ルーン、久しぶりだな。手間かけたみたいだな」


 ソウ様は、気さくに手を上げて、言う。


「まったくじゃぞ。ちゃんと言い聞かせてないからわらわがこんな目に」


「あなたはなんの役にもたっていないでしょう。ワタクシが負けたのは、そこの男の子でしてよ?」


「なんじゃと!」


 二人で楽しくケンカを始めた。

 多分、大昔からそんな感じなんだろう。


 友達みたいなのに、殺し合いまでしちゃうなんて、

 地獄みたいな人間関係だ。


 全くついていけない。


「世話になったな。小僧」


「はい。こちらこそありがとうございました」


「ニルナはお前がいれば大丈夫だろう。好きになれとはいわないが、手助けしてやってくれ」


「もちろんですよ」


 まあ、もう破滅的に好きではあるのだ。

 どうなったってかまいやしない。

 魔法と知略で突き進むまでだろう。


「さて、俺様達は行くな」


「ニルナ様には、挨拶していかないんですか?」


「俺様より、お前と話せるほうが喜ぶだろうよ」


「だといいんですけれど」


「それに、どうせお前は、いつでも呼べるだろう」


「ははは」


 実際その通り。

 もうウーツ魔王とネガイラ魔女の魔法も解析終わっている。


 ウーツ魔王の魔法では、子孫にしか憑依出来なかった僕ならば、自由自在だ。


「よし、いくぞ。ヨウキ」


「はい。あなた」


「じゃあな。ルーン」


 ソウ様は、軽く手を上げ、別れの挨拶とした。


「うむ」


「また来ますわ」


 ヨウキ様は投げキッスしてみせる。


「お前は二度と来るんじゃない!」


 二人ともあっさり冥界の扉を通って帰っていってしまった。


「迷惑極まりないのじゃ」


「本当にとんでもないですね。ニルナ様のご先祖様は」


「全くじゃ」


「ニルナ様は誰に似たんでしょうね?」


「全員じゃぞ、ニルナはあやつらの集大成みたいな性格だからの」


「それは、とんでもないな」 


「あとは、ニルナを起こすだけじゃな」


 僕は、抱えているニルナ様を見つめた。

 相変わらず、血まみれだったとしても、うっとりするほど美しい。

 どんな夢を見ているのかとても幸せそうな顔をしている。


 僕は、意を決する。

 

「こういう、寝ているお姫様を起こす方法は一つだけですよね」


「どうするんじゃ?」


「まあ、見ててくださいよ。僕はその辺のヘタレとは違いますから」


 僕はニルナ様に口づけをした。



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