12.混乱2
「ニルナ様。待つのだ」
カキュルトの忠告を聞かずに、私はアニマルゾンビ動物園へと向かいます。
「アニマルゾンビ動物園が……」
燃えていました。
フィルクが頑張って建ててくれて、レザ達が頑張ってゾンビを集めてくれた施設です。
すでに死んでいるとはいえ、動物たちは苦しそうに悶えています。
「早く消さないと……」
「ゾンビや、建物など、どうでもよいといっておるのに」
「よくありません!」
だって、なにより頑張ってくれたのは、カキュルトなのです。
私は、フィルクからよく報告を聞いていました。
「私は、詳しい研究内容は、理解できていません。でも、あなたが……カキュルトが、国民を助けるために、頑張っていたことは、知っています」
蛇に噛まれた女の子を助けているのも見ています。
お城にも、感謝状がいっぱい届いているのです。
「大丈夫。建物など、何度でも立て直せばいい。ゾンビもまた集めればいい。今は逃げなければ」
「逃げません。王都が大変なのです心配しなくても、私は強いですから」
「そうではないのだ。強いとか弱いの問題ではなく……」
また違う場所で火の手があがりました。
「あっちは……」
確か教会の方です。
私は、駆け出しました。
「待てといっておるのに」
教会につくと、教会もアニマルゾンビ動物園と同じように燃えています。
「ああ、教会が」
フィルクが描いてくれた立派なホワイトドラゴンの絵が、真っ赤な炎で燃えていました。
「どうして、こんなことに」
「あいつが、裏切ったのだ」
「あいつ……?」
中から神父が出てきました。
「ああ、よかった無事で……?」
神父は、火のついた松明を持っていました。
私たちの前で、教会の扉に火を放ちます。
「な、何を……」
松明を持って教会に火を放っていたのは、神父です。
「な、なにをしているのですか!?」
「あいつは、もういない。これで私は自由だ!」
「ここはあなたの教会でしょう!」
私の声に、反応して振り向きます。
「私の教会? ここがどこが私の教会なんだ。全部、全部、あいつに、あいつに奪われたというのに」
あいつとは誰のことでしょう。
「奪われた? 今だって、あなたはこの国の教皇です」
「たった一度目を通しただけで、ドラゴンの召喚術すべてを理解し、部下たちをすべて魅了し、持っていった。あいつさえいなければ、私はずっと教祖でいられたのに」
「誰のことを言っているのですか」
神父ではなく、カキュルトが答えてくれます。
「フィルク殿のことだ。竜神教は実質、フィルク殿が神父だったのだから」
「どういうことですか?」
「お祈りする事は人々の為にはならぬ。人々の為に駆け回る姿こそが神父ということだ。フィルク殿は毎日教会を訪れては、亡くなった人をおもいやり、残された人を慰め、働いていた」
「私をないがしろにする国などいらぬ。教皇である私に、ゴミ拾いを命じるなど」
神父は憎々し気にいいます。
カキュルトは言い返しました。
「あなたは我と同じであろう。行いの表面だけ見て迫害されていた。ただ、この国は、誰もあなたをないがしろになどしていない。フィルク殿は、あなたに国を愛する立派な人になって欲しいと」
私は、カキュルトの言葉に頷き、言いました。
「教皇だから立派なのではなく、みんなに認められているから立派な教皇なのです」
「ならば、お前は、王などではないな」
「そんなことは……」
「お前より、この国にふさわしい王がいる」
「そんなものがいるわけ……」
この国の王族は、私以外、全て滅びました。
貴族もです。
もしも、もしも、
私が私の王の代わりにするとしたら、
それは一人だけ。
フィルクだけです。
「俺が王になってやろう」
私の気持ちを否定するように、
燃え盛る教会の中から声が聞こえてきました。
「麗しき君よ。あなたに王は似合わない。俺と結婚し、王妃になるといい」
燃え盛る炎より、真っ赤に燃えるような髪をした男が立っていました。
「勇者ハーツ」
教会から出てきたのは、先日城を訪れてきた勇者でした。




