8.追放1
「はい? 今なんて言いましたか?」
「ということで、フィルクは出て行ってください」
聞き間違いではなかった。
『出て行ってください』
今回は、意味がわかる。
依頼を達成するのは、簡単だ。
だけど、どうしてそうなった?
本当にどういうことなんだよ。
なにが、『ということ』なのか、さっぱりわからない。
「聞いてましたよね? 僕、実家に居場所なんてないんですよ」
「領地なら、ゾンビで滅んだところがいっぱい余ってるので、フィルクなら上手くやれると思います!」
そうか、領主にしてくれるのか。
それなら……。
「いやいやいや、ニルナ様なに言ってるんですか」
僕は、別にどこでだってやっていける自信はある。
ニルナ様にあったころみたいに、一人でフラフラ歩き回って、魔法研究してもいい。
問題は、そこではなくて、今、王都の運営を完全に僕一人でまわしていることだった。
手順書なんてものを作っている暇もなかったから、全ての情報は僕の頭の中に入っている。
どうやっていくつもりなんだ。
いや、ニルナ様のことだ。
何にも考えていない。
「ほら、僕の仕事、誰がやるんですか」
「それはどうにかなります」
なりますかね?
なるんなら、いいんですよ。
少なくともニルナ様にはどうにもできない。
全部、剣でぶった切ってどうにかするつもりなんじゃ……。
ニルナ様は早速地図を持ってくる。
「こことか、いいと思いますよ」
指し示したところはあきらかに王都から遠いところだった。
遠すぎる。
なにかあった時にフォローもしようがない。
「僕以外に城に誰もいないんですよ」
「なに言ってるんですか。ルーンさんがいますよ」
政治をできる人がという意味なのに。
「あんな毎日寝てるだけの人が何の役にたつんですか?」
「レザたちもいます」
「レザ君たちは、冒険者で……」
「大丈夫ですよ。クミースもよびます」
「なんにもできないわ、が口癖の人がなにできるんですか!」
来てもらわない方がいいぐらいだ。
みんな、悪い人ではないのは知っている。
ただ全員、政治なんてできそうにない。
それよりも、さらに問題なのは、
「僕以外、魔杖も変形できないんですよ。国をどうやって守るつもりなんですか」
王都軍を所持しなくても、どうにかなっているのは、王都の治安維持をニルナ様が、
他国の侵攻を僕一人で抑え込んでいるからだ。
僕が知る限り、僕より強い魔法使いは王都にはいない。
「それは、軍を構えます」
「軍を組織するのだって、編成力がいって」
「なんとかなります」
「いつだって、なんとかしてきたのは……」
僕だと言おうとしたら、ニルナ様の言葉にさえぎられた。
「フィルク。王様の命令は?」
「絶対……」
「つまり、そういうことです」
王の命令と言われてしまえば、従うしかない。
全ての秩序はニルナ様のものだ。
それにしても、信じられない。
初めてのしっかりした命令が、
僕を追い出すためのものだなんて。
「わかりましたが、時期は一年後ぐらいに」
出て行くのは確定したとしても、できるだけ時期は引っ張りたい。
そう思っていたのに、ニルナ様の回答は無慈悲なものだった。
「明日です!」
「明日!?」
何も引き継ぐことすらできないぞ。
「明日には、この城からでていってくださいね!」
ニルナ様はとびっきりの笑顔で僕にそういうのだった。




