7.襲来幼馴染み
片時も忘れた時はなかった幼馴染……
なんてことはなく、すっかり頭にも上ってこなくなっていた。
「どうしたの、おばけでも見た顔をして」
「ああ、いや、久しぶりだなぁ。とおもって」
「なんか感動薄くない?」
「そんなことないよ。ほらいつも通りさ」
「私のこと忘れたわけじゃないよね?」
はい!
ごめんなさい!
すっかり忘れていました!
とは、言わない。
「もちろん。忘れていたわけじゃないよ」
僕は空気が読める男だ。
ごまかすことにかけては、王都に来て、世界一になったといっても過言ではない。
「こちらの方は?」
「この国の女王、ニルナ様だよ」
ニルナ様は、にっこり笑ってカーテシーという、優雅なお辞儀をして見せる。
どうしたんだろう?
そんな上品な挨拶するところ見たことないんだけど。
「すっごいフィルク、女王様とお話しできる関係になったのね」
「ま、まあね」
初日から話してましたが?
話さなかったのは、アステーリ王国に遠征して行っていた間ぐらいだ。
それ以外の日は、話さない日なんてない。
「そんなに偉くなったなら、どうして私に連絡してくれなかったの?」
偉く『なった』わけではなかった。
最初からフルマックスで偉かった。
僕の胸には、王代行権利書がある。
なんてことは言わない。
「そ、それは、やっぱり、城勤めは忙しいからさ」
これは嘘ではない。
忙しい日々だった。
ニルナ様はのんびり、一人クッキーを食べている。
まるで忙しいことなんてひとつもないように。
ミーユは僕に疑いの目を向ける。
「仕事と私どっちが大事?」
来たよ。
世界一めんどくさい質問。
まあ、だけど僕は答えを知っている。
この問題は二択ではなくて、
「淋しい想いをさせてごめんね」
僕に反省を促す言葉だ。
「それで、いつ帰ってくるの?」
帰る?
どこに?
実家か?
いや、もう僕の家はこの城だろう。
「いや、僕は三男だし、実家に居場所はないよ」
領主を継ぐのは、兄たちだろう。
城で務めた僕が帰った日には、世襲の順位は大混乱だろう。
別に仲が悪いわけではないからもめたくはない。
「なら、私もここに住もうかなぁ」
「それは……」
いいのか?
今は、城にルーンさん、マリーさん、セイラさんも寝泊まりしている。
男はレザ君もいる。
問題はない気がする。
とはいえ、僕の一存では決めることができない。
僕がニルナ様に尋ねようとすると、
「わかりました!」
ずっと黙って、僕らの会話を聞いていたニルナ様が唐突に叫んだ。
なにがわかったんだろう。
もう付き合いが長いから、とんでもないことを言い出すのは、分かっている。
いやな予感しかしない。
ニルナ様が言ったことは、僕の想像の斜め上だった。
「では、フィルク。この城から出て行ってください!」




