5.勇者襲来3
僕が、王の間で待っていると、勇者と魔法使いの二人組がやってきた。
勇者は、男だというのに、布を巻き付けて、腰の部分を帯で縛ったような変な格好をしている。
腰につけている剣も、すらりと細身で長い。
魔法使いの方も、赤と白の見たことない服だ。
ただ知識としては、知っている。
和の国ストークムス国。
ストークムスの勇者は別名侍。
魔法使いは、巫女と呼ばれている。
「お前か、魔王は?」
侍は、僕に問う。
「僕が魔王? そんなわけないだろう。魔王城に来たからって簡単に魔王様と戦えるなんておもわないことだね」
「じゃあ、お前は何者だ?」
「僕はフィルク。しがない財務大臣だよ」
「そんな攻撃的な魔力を持ってるやつが、ただの財務大臣なわけないだろう」
「ふーん。これでも結構おさえてるんだけどなぁ」
攻撃的ね?
魔力の性質まで、見えるのか。
見た目と違い、随分と魔法に精通した国のようだ。
巫女が憎悪の視線を僕に向ける。
「お姉様の恨み」
お姉様の恨み?
恨まれるようなことしたかな?
ああ、きっとニルナ様が出会ったというアステーリ王国の巫女のことか。
「復讐かい? でも、ちょっかい出してきたのは、そっちだと思うんだけど」
アステーリ王国をけしかけて、サンヴァ―ラを落とそうした黒幕の国だろう。
八つ当たりもいいところだ。
「うるさい」
巫女は、激昂している。
侍は、剣を抜くと構えを取った。
波紋の綺麗な片刃の剣。
確か刀といったか。
随分と切れ味がよさそうだ。
「うぉおおおおおおおおお」
気合いともに踏み込むと、僕に切りかかってきた。
「野蛮だね」
僕が、魔杖を掲げると、魔力が高鳴り、空気が震撼する。
魔力解放「秩序宇宙」
襲い掛かってきた侍を僕は、魔力の圧だけで吹き飛ばした。
侍は無様に、床に転がる。
「剣士が僕に敵うわけないだろう。魔法が使えれば僕はなんだってできる」
刀を杖に侍は立ち上がった。
「なら魔法を使えなくするだけだ。おい。アンチ魔法だ」
侍は巫女に言う。
「わかってる」
先端に透き通るような美しい水晶玉が取り付けられ木の棒――玉串とかいうものだろう。
それを、振りながらくるりと回ると、巫女から、魔法を封じる波動が展開される。
「これで、お前は、魔法は使えない」
魔法使いには、アンチ魔法。
常套手段だ。
だけど、あくまでアンチ魔法は、体外に放出される魔力を消滅させるにすぎない。
ゼウスキャノンのような、エネルギー放出型の魔法はすべて使えない。
ただそれだけだ。
「たまには、僕自身の魔道具使ってあげるよ」
僕は、魔杖ではなく、自分の魔道具である、マフラーを広げた。
魔布変形「捕らわれの姫君」
マフラーに魔力を注ぐと、鋼鉄の鎖へと変形した。
冷たい金属が侍に向かって獰猛な蛇ように伸び、そのまま無慈悲に絡みつこうとする。
「俺の刀は鋼鉄をも切り裂く」
侍が刀を振るうと、鎖は火花を散らすような光を放つ。
紙のようにやすやすと斬られた鋼鉄から、精緻な切り口が現れる。
侍は勝ち誇ったような笑みを見せる。
僕は呆れながら言った。
「魔道具だって言ってるだろう」
再構築。
斬られた鎖は、一瞬布に戻ると、シュルシュルと編み込まれて再び鎖へと戻った。
「なっ!?」
虚をついた鎖は、一瞬で絡みつく。
抵抗を試みる侍の動きを封じ込めた。
侍は鎖の締め付けに苦しみだした。
巫女が魔力を注ぐのが見て取れた。
魔串変形「天照大神」
巫女が手に持つ玉串が、僕のゼウスキャノンのように大砲に変形していく。
「ずるいなぁ。人には、放出型の魔法を使えなくしておいて、自分達は使うんだからさ」
僕は羽ペンに魔力を注ぎ込む。
魔筆変形「魔封じの袋」
僕はペンをいつも死体を入れている袋に変形させた。
「これでも喰らいなさい!」
キュイイイィイィイイイイン。
光の帯が僕に向かって放たれる。
ギュポン。
袋は、全ての光の帯を全てのみ込むと、何事もなかったかのように羽ペンに戻る。
「えっ……」
僕は、呆然とする巫女に鎖を放つ。
巫女の足先から綺麗に巻き付けると、締め上げた。
「ぎゃああ」
「その程度の魔法で、よくもまあ、サンヴァ―ラに喧嘩を売ったものだね」
アマテラスキャノンの威力は、ゼウスキャノンの十分の一程度。
とてもじゃないが、一万の敵を滅ぼせるほどではない。
魔法の研究のために、わざと魔法を放たせたというのに、たいしたことはなかった。
「弱いなぁ」
自分の青き月の瞳が、力強く光り輝くのを感じた。
「ひぃいいい」
巫女は、僕の魔力にあてられて、恐怖に顔を引きつらせていた。
「アンチ魔法が、君たちだけの専売特許だとは思わないことだね」
僕は、巫女の頭に触れる。
バチィ。
「きゃあ」
アンチ魔法をパリィで強引に解除した。
魔杖を手にぐるりと回すと城の床に強引に突き刺す。
魔杖変形「最高神の雷」
魔杖が黄金色に光り輝き、大砲へと形を変える。
僕はあらんかぎりの魔力を注いでいく。
「魔力に精通している君たちなら、これの威力がどれほどのものかわかるだろう」
威力は、この世から骨の一片さえも痕跡を残さないほど。
二人の顔に、無力感と絶望が広がっていた。
「さあ。もう二度とサンヴァ―ラに手出ししないと誓うのなら、今回だけは見逃してあげよう」
君たちは、国に恐怖を伝えなければいけない。
二度とニルナ様を悲しませないように。
僕はニルナ様の好きな言葉を真似した。
「一度目は許す。二度目は許さない。さあ、どうするんだい?」




