2.魔王降臨
城門に僕が来たことで、人々が僕に詰め寄ってきた。
「フィルクさん、これはどういう?」
僕が聞きたい!
とは言えない。
とりあえず、フルパワーで頭を働かせて、言い訳を組み立てていく。
「ど、どうやら近所の子供がいたずらしたようですね」
「子供のいたずらですか? でも、ニルナ様が書いていたような」
目撃者がいたか。
暗殺だけは、ニルナ様もみんなに見られない方がいいと思っているのか、今まで一度も見られたことはない。
本来もっとうまくたちまえるはずなんだけどなぁ。
僕なんかが言い訳用意しなくても。
「ニルナ様お優しいから、子供の遊びに付き合ってあげてるんでしょう」
「ああ、なんだ、そういうことですか」
「てっきりニルナ様が、ご乱心されたのかと」
毎日、ご乱心ですが? なにか?
なんて言ったりしない。
「そんな、わけないじゃないですか。さあさあ、僕が片づけとくので、皆さん解散してください」
納得してくれたのか、みんなぞろぞろと解散していく。
「はあ、もう」
僕は看板を片付けながら、城の中に入り込んだ。
◇ ◇ ◇
ニルナ様は、玉座に座っていました。
いたく満足気です。
「ニルナ様!」
僕が声をかけると、満面の笑みを僕に向けてきます。
「ああ、フィルク、看板どうでしたか?」
「どうもこうもないですよ。なにしてるんですか」
「綺麗に書けていたでしょう」
「そうですね!」
いたく達筆でしたよ。
問題はそんなことじゃないんですけどね。
「そんなことより、なんで魔王なんて名乗り始めたんですか。誰の入れ知恵ですか?」
「自分で考えました!」
「そんなわけないでしょう?」
突拍子もないのはいつもこと。
そうだけど、今回は、ニルナ様なんだか思考誘導されている気がする。
それが誰なのかよくわからない。
「おじい様の真似ですよ」
「おじい様? 真似? ああ、ウーツ魔王のことですね」
僕は、城にある書物はすべて目を通している。
当然、ニルナ様の祖先である王族にどんな人がいたか完全に把握している。
ニルナ様の祖先に、魔王と名乗っていた人物。
それがウーツ・ムーンヴァ―ナ様。
サンヴァ―ラ国の前身国である。
ムーンヴァ―ナ国の最後の国王。
国民を守るため自ら魔王と名乗り、他国を寄せ付けないようにしていたらしい。
「私が魔王になれば、他国もせめて来ることはなくなると思います!」
ニルナ様がそういう思考に至った理由も、
それなら、納得だ。
優しいニルナ様のことだ。
抑止力として、魔王を名乗ろうとしているのだろう。
「違いますよ。ニルナ様」
ただニルナ様と、ウーツ魔王では決定的に違うことがある。
「なにが違うんですか?」
「ウーツ様は、他国侵略は一度もしていません。ただニルナ様は、二国も侵略してしまいました。実際は完全に正当防衛ではあるものの、他の国はわかりようがありませんからね。その後で魔王なんて名乗った日には、他国は侵略されると思いますよ」
僕の言葉を聞いて、ニルナ様が顔面を蒼白にして動揺する。
「そ、そんな。ど、どうしましょう。もう他国に私が魔王になったと書簡を送ってしまいました」
「うわぁ……。」
一足遅かったか。
今後は、いろいろ僕に相談してもらってから、行動するようにしてもらわないと。
ただ終わってしまったものは仕方ない。
今から挽回しなくては。
僕は、とんとん頭を叩きながら考える。
「でも、宣戦布告したわけではないですよね」
「も、もちろんです。戦争しないために、魔王になったのですから」
ニルナ様が、魔王になった。
まあ、それはそれで他国にとっては衝撃的だろう。
魔という言葉には、人の敵であるという意味がある。
ただし、敵だからといって侵略するという意味はない。
「なら、なんとかなるか。さすがにクラウドラ国が、僕のゼウスキャノンで追い返したのは、知れ渡っているだろうし、軍が派遣されてきたら、同じように追い返せばいい。となると、警戒すべきは……」
「警戒すべきは?」
「勇者派遣ですね」




