1. 僕の平穏な日常
3章はじまります!
僕は城壁に転がっていた死体を、とりあえず安置所に移すという、いつも通りの日課を終えて、朝の食堂に向かう。
「ああ、いい天気だな」
空は快晴。
別段変わったこともない。
「そういや、農家から補助金の申請がきてたっけ。お金ただ渡すのは楽なんだけど、他から不満がでやすいし、農具などを申請してもらおうかな。そうしたら、工業界にもお金がまわる。あとは、職を失っている人たちに、農地改革してもらおう。日雇いになっちゃうけど、国からお金を出せば治安もよくなるし、飲み屋街も儲かるだろうから、うん。そんな感じでいこうかな。素案を書いて、ニルナ様に承認もらって段取りしないと」
僕は、ぶつぶつ言いながら、頭の中で整理する。
どうにか今日中には、終わるだろう。
前は、何日もかけてやっていたけど、もうなれっこだ。
国教を立ち上げたりしたときなんかは印象操作したりとなにかと大変だった。
あの時は、本当に経験豊富な王妃様がいてくれて助かった。
「まあ、今の僕なら朝飯前だな」
事実、今から朝ご飯だ。
いつも通り店長がパンとハムエッグを持ってきてくれる。
「なんだか上機嫌だな。なんかいいことあったのか?」
店長がいつも通り話しかけてきてくれる。
「えっ? いいこと? 別にないよ。平穏な毎日だよ」
「いや、でもまた死体が転がってたらしいぞ」
「ああ、それね」
昨日もニルナ様は、聖剣片手にお出かけしに行っていた。
僕はしっかり、お風呂を沸かしてタオルを準備し、帰ってきたニルナ様が血のりでお城を汚さないように城門で聖剣を受け取った。
『調べておいてくださいね』
『はい。任せてください』
『今日は、よく寝れそうです』
『そうですね』
『おやすみなさい。フィルク』
『はい。おやすみなさい』
といつも通りのやり取りをした。
ニルナ様が、血まみれで帰ってきたのだから、
当然、1体か2体は死体が転がっているのが当たり前だし、なんにもおかしなところはない。
死体の処分は竜神教で行えばいいし、そのままカキュルトのところでゾンビの論文を読む。
特に変わったこともない。
「いつも通りだよ」
「そんなわけあるか。死体転がってるんだぞ。大体お前王都に来たときは、毎日憂鬱そうだったぞ」
「憂鬱そう?」
あれ? 変だな。
確かに昔は憂鬱にご飯を食べていたような。
「まるで昇進でもしてみたいに楽しそう」
「ははは、何言ってるんだよ」
僕は来た時から大臣だし、これ以上あがりそうにない。
「上がるとしたら、ニルナ様と……」
結婚した時だ。
そしたら、僕が王だろう。
まあ、結婚できなくても、
僕の胸には、王代行権利書があった。
誇らしく、いつも持ち歩いている。
「うん? いや、ちょっと待てよ」
これもらった時はうれしくなかったような?
「あれ? 変だな」
それに僕来たときは、こんな毎日嫌だったような?
あの頃は、死体一体処分するのも、大変だった。
死体の処分をするのも変わらないし、それどころか竜を呼び出す研究をしたり、ゾンビを毎日眺めている。
どう考えても前より悪化してないか?
毎日毎日、ニルナ様に無茶ぶりされすぎて、無茶ぶりないだけで平穏だと感じてしまっている。
そういえば、敵が攻めてきたから、当たり前にゼウスキャノンを撃ちこんで撃退してしまった。
どうかんがえても、一撃で万の兵を殺してしまうのはやりすぎだ。
王妃様は、どう考えても震えていた。
『どうかしましたか?』
怯える王妃様にそう言ってしまった僕。
どう考えても、
どうかしてるのは、僕の方だ。
ニルナ様は僕にこういった。
『常識の方が私にあわせるべきなのでは?』と
どう考えても、常識(僕)が非常識(ニルナ様)に合わせにいっている。
完全に破滅的な毎日だ。
「どうしたんだよ?」
店長が僕に聞いてくる。
「ありがとう。完全に見失ってたよ」
ニルナ様の暴走を食い止めるのが、僕の役目であって、一緒に暴走するのは、なんだか違う気がする。
僕は店を出ると、
心機一転、拳を握って誓いを立てた。
「今後は、頑張ってニルナ様の暴走をとめよう」
リミッターとしての僕が、火に油を注ぐわけにはいかない。
「うーん。まだ何か大切なこと忘れている気もするんだけど」
まあ、忘れてしまっているのなら、たいしたことではないだろう。
方針が決まり、僕は城へと戻る。
いつもと違いなにやら、城の前に王都民が集まっていた。
どうしたんだろうと、思いながら人ごみを避けながら、進んでいく。
「なんだろ、あれ? 看板か?」
門の前になにやら看板がたっていた。
どうみても、ニルナ様が書いたとしか思えない筆跡で、でかでかとかいてある。
看板にはこう書いてあった。
『ようこそ魔王城へ』
「なんでだよ!」
僕は大きな声で叫んだ。
ニルナ様はすでに暴走していた。




