15.親衛隊
私は、城の中に踏み込みます。
視界に、敵が二人映ります。
「一人足りませんね」
私は迫ってきた刃をひょいっと躱します。
「これを躱すか。ただまぐれもずっとは続かんぞ」
気配が三つあるのに、二人しか見えていません。
「ん? どこにいますか?」
気配がおぼろげでどこにいるかわかりません。
私は、聖剣に魔力を注ぎます。
聖剣変形「勝利の剣」
フレイソードに切り替えた瞬間、敵の位置がはっきりわかりました。
私は、おもむろに壁にむかって剣を突き立てました。
剣を引き抜くと、鮮血が鉄砲水のように噴き出します。
「ごふッ」
「面白いですね。壁から血が噴き出すなんて」
「なぜ我らの位置が」
「私には見えていようがいまいが、関係ありません」
相手の微細な動きに、フレイソードが反応します。
スケルトンのように、心臓すらないのであれば話は別ですが。
手のひらから伝わってくる感覚で、どこに敵がいるかすぐに分かります。
「?」
フレイソードと私の感覚にまだ誤差があります。
一人減らし、あと二人のはずなのに、フレイソードが三人分に対応しようとしています。
「へぇー。二人と思わせておいて、もう一人が壁に擬態……そして、完全に気配を消したもう一人が本命ですか」
敵は四人組だったようです。
「つっ!?」
見えている二人に動揺が走ります。
それにしても、と思います。
動きの洗練さが今までの敵と段違いです。
見たことない、音が全くでない足運び。
いるのかいないのかわからなくなってしまうほどの希薄さ。
暗殺者の動きです。
どうもアステーリ王国の兵士ではないようです。
「気配の消し方は、ソウから習っていませんでした。いい機会ですから、教えてもらいましょうか」
フレイソードを握りしめると、一気に感覚が拡張しました。
トレース。
私は、目の前の見えている二人の足運びを真似しはじめます。
踏み込んだときの、足音が全くしません。
それでいて、速い。
連携し、私に刃を振るってきます。
二人の剣撃をかわしたところに、あわせて何かが飛んできました。
パシィ。
私は、飛んできた武器を指の間に挟んでつかみます。
「この武器も初めて見ます。どうやって投げるんですか?」
円盤状の形をしていて、全面に刃物がついています。
「何? つかんだだと?」
驚いた声が聞こえてきます。
「なるほど、輪っかの部分に、指を入れるんですね」
見えている一人に投げつけました。
綺麗に首筋に当てることができて、血をまき散らします。
「覚えましたよ」
私の足音が消えました。
音なく、高速で敵に歩み寄ると、首を刎ねます。
血をまき散らしながら、倒れていきます。
「あと、一人」
残りの敵がいまひとつ、どこにいるか判別つきません。
フレイソードに引っ張られて、剣を振るいます。
ギン!
剣を切り結びます。
敵の姿は見えません。
いるけど、いない、不思議な感覚です。
「私に気配の消し方、教えてくださいよ」
覚えたくても、敵が見えもしないため、観察することができません。
何もないものをどうやってとらえればいいんでしょうか?
本当は、勝ち方はわかります。
ミョルニルで空間丸ごと吹き飛ばせばいいだけです。
ただし、それでは剣術で勝ったことにはなりません。
私の目標は、ソウより、剣術で強くなることです。
とはいえ、
「どうしましょうか?」
フレイソードでは、受けることはできますが、いつまでたっても相手を倒すことはできません。
私は思いっ切って、聖剣を切り替えることにしました。
聖剣変形「運命の剣」
素早く聖剣を変形させます。
(ウィ―ザルステップ)
無音急襲。
高速の足運びから、音が消えます。
敵がいるとしたら、死角です。
振り向きざまに、人一人分以上の隙間がないように、空間を全て乱雑に斬りつけました。
「ぐッ!」
うめき声が聞こえました。
何かを切った手ごたえが手にも伝わってきます。
「手ごたえありました!」
致命傷ではありません。
刃を切り返して、手ごたえがあった空間を再度斬りつけます。
ドサリ。
突然現れたように、男が一人倒れます。
「化け物……」
「女の子に向かって酷いですね」
男は息絶えていました。
「気配の消し方、覚えられませんでした」
残念です。
ただ気配を消すことができると知れたことは収穫です。
もっと修行しなくてはいけません。
「まだまだ上には上がいますね」
それはいいことに他ありません。
だって、私はまだ強くなれますから。




