13.アステーリ王都侵攻
私は、魔導戦車を走らせていました。
「そこの馬車! 馬車? とにかく止まれ!」
アステーリ王都の関門で、兵士が叫び声をあげています。
「あなたがどきなさい!」
私も負けじと、大きな声で叫びます。
兵士はそれでもどきません。
「クミース。暴走モードです」
「任せて!」
クミースが魔力棒を全て、投入します。
グアアアンと、魔導戦車が唸り声をあげて、兵士に突っ込んでいきます。
「「「ぎゃあああああ」」」」
むしろスピードをあげて突っ込んでくるとは思っていなかったのか、兵士たちが叫び声をあげます。
何人か吹き飛ばしました。
きっと死に絶えたでしょうが、知ったことではありません。
私は元々この国を滅ぼしに来ていますし、
私の忠告を聞かない人間が悪いのですから。
「ニルナは情け容赦ないの」
「コツは、全部ゾンビと思うことですよ」
「妾は情け容赦しない方法を、聞いているわけじゃないんじゃが」
「私を殺そうとする人間を、大量に送りつけてくる国の兵士に、情け容赦は無用です」
「それはそうじゃな」
ルーンさんが納得してくれます。
私だって本当は他国と仲良くしたいのです。
ただ殺されかけているのに、大人しく話し合いなんてするつもりはありません。
「ニルナ、でもどうするの、道がグネグネしてて、うまく城までたどり着けそうにないわよ」
「知っていますよ。民家を盾にするのは、王都の作りとして、一般的ですから」
ただし、
「クミース、運転代わってください」
「いいわよ。でもなにする気?」
「こうするんですよ!」
私は魔導戦車の屋上にはしごでのぼると、聖剣に魔力を注ぎました。
聖剣変形「雷神の鉄槌と帯と篭手」
エンブレムが黄色く光輝くと、聖剣が巨大なハンマーに形を変えます。
「フルパワーです」
ガッシャン、ガッシャン、ガッシャン。
更に、魔力を注ぎます。
更に巨大化していき、
ハンマーが真っ赤に灼熱を帯びます。
(ハンマーブーメラン)
私はハンマーを投擲しました。
ギュルギュルギュルギュル。
恐ろしい速度で唸りをあげて、民家に向かって飛んでいきます。
ドッカーン!
爆発するように民家が木っ端みじんになりました。
「さすがニルナね!」
「兵士とか、関係なしに、容赦ないんじゃが……」
「私を阻むものは、民家であろうと容赦はしません」
城は見えています。
「すべての道は、私に通ずですよ」
道がなければ作るのみです。
城まで一直線なら暴走モードで、30分もかからないでしょう。
私は、戻ってきたハンマーをキャッチし、再び構えます。
「さて、全力前進一直線です!」
魔導戦車が、土煙をあげて、王都を走り抜けます。
◇ ◇ ◇
城はもう、目前です。
「さて、作戦をふりかえりましょう」
私は二人に声をかけました。
「私はお城で下車して、全員倒します」
「あたしは、王族御用達の宿屋で予約しとくわ」
「完璧ですね!」
不備がなにもない完璧な作戦です!
「簡単すぎるじゃろう。ニルナは、それでいいのかや?」
「いいのかとは?」
「一人で、全部やることになって」
「ルーンさん話聞いていましたか? 全部一人でやるわけではありませんよ。戦い終わったら、私は血まみれで、ちゃんとしたお風呂に入りたいんです。宿の予約は大切ですよ」
「任せといて、宿屋は言いくるめておくから」
適材適所の何が悪いのでしょうか?
ルーンさんは、腕まくりをし始めました。
「しょうがないのう。ここらで妾も本気を出すとするかの」
「本気を出すとは?」
ルーンさんは、作戦に何も組み込んでいません。
「お昼寝ですか?」
ルーンさんが、ずっこけました。
「なんでじゃ、戦うの手伝うんじゃよ」
「ヴァンパイアロードエルフニートが、どうしてお家以外で戦うんですか」
「変な言葉足すんじゃない。わらわは自宅警備員じゃないのじゃ」
「ソウの自宅、もとい王墓を守ってただけじゃないですか。それも禄にできてなかったですよ」
「ぐぬぬ」
悔しそうに呻いていますが、実際、ルーンさんは、なにもかも放棄して寝ていただけです。
「それに、ルーンさんが戦ったら、私が戦う相手減っちゃうじゃないですか」
「なんで自分の戦う相手が減るの、デメリットみたいにいうんじゃ」
「自分の戦う相手が減るのは、デメリットですよね?」
「ソウのやつ、なんでこんな育て方したんじゃ。逞しいを通り越して、バーサーカーじゃろう」
何をいってるんでしょうか。
こんなに私は立派に育ったというのに。
ルーンさんは相変わらず、変な人ですね。
◇ ◇ ◇
城に着くと、私は屋根から飛び降りました。
華麗に着地し、城を見上げます。
「頑張ってね。ニルナ!」
クミースが手を振りながら、魔導戦車で走り去っていきます。
さてここからが本番です。
私は聖剣に魔力を込めます。
聖剣変形「最高神の雷」
聖剣に埋め込まれたエンブレムが黄金色に光り輝きます。
聖剣全体に幾何学的な紋様が浮かび上がると、大砲の形状になりました。
完璧にウーツ様のゼウスキャノンを再現できています。
「ニルナ。なにする気なんじゃ」
「もちろん。ぶっ放します!」
先手必勝、一撃必殺です!
キュイィイイイイイイーン。
魔力が光り輝き収束していきます。
「神罰」
ボスン。プスプス。
私の声と同時に聖剣が煙をあげました。
ガコン、ガコン、ガシャン。
元の聖剣の形に戻ってしまいました。
「あれ? 変ですね」
「なにやっとるんじゃ」
ウーツ様みたいに、一発かっこよく決めてから乗り込もうと思いましたが、うまくいきませんでした。
「なんかいきおいでできると思ったんですけど。フィルクに構造調べてもらって、何度も教えてもらったのに」
「理解はできたのかや?」
「できていません!」
「なんでできると思ったんじや……」
「勢いですよ!」
「馬鹿の子じゃの……」
ルーンさんが呆れています。
うーむ。魔法は、剣術のように勢いでできるようにはならないようです。
「まっ、いっか。よく考えたらここお姉様の家になりますね。壊すわけにはいきません!」
「そうなると、スルトソードとミョルニルも使えんぞ」
「グンクニルもですよ。さすがに可哀想なので」
殺しはしますが、もうゾンビになることはないので、魂まで壊すことはないでしょう。
「となると、ニルナは剣しか使えんのじゃが?」
「まあ、いいでしょう。一万人倒すのは、一万回剣を振るだけですよ」
「確かにそうなんじゃが」
「毎日そのくらいやってるので、大丈夫です」
私たちは、城門に近づきます。
なんだか変な気持ち悪さがこみ上げてきました。
他人にパリィをぶつけられたような、そんな感覚です。
ルーンさんが、突然、ふらついて、膝をつきました。
「ニルナ、すまんが……」
「どうしましたか?」
「どうやら、この城凄まじいアンチ魔法がかけられているようじゃ、どうやら妾はなんの役にもたちそうにない」
「わかりました! なんの期待もしていなかったので、帰って大丈夫です!」
「ぐっ。そう言われると傷つくんじゃが、ニルナも魔法が使えんのじゃぞ」
聖剣に魔力を流し込んでみます。
カシャン、カシャン。
「うーん。聖剣は変形できるようですね。斬撃は飛ばせないようです。属性変換もできませんね。体内の魔力まで消せるわけではないようです」
「聖剣変形もいつまでできるかわからんのじゃぞ」
「まあ、いいですよ。聖剣一本あれば、全然平気です。ソウも最適な武器に持ち替えられれば、聖剣なんていらないって言ってましたし」
「あやつはなあ」
ルーンさんが、含みをもった言い方をします。
「つまり、ルーンさんは今の私もソウより弱いって思ってるってことですよね」
「それはそのじゃな……」
はっきり口には出しませんが、顔には書いてあります。
不安になってまた裏切られたら、大変です。
しっかり実力を示す必要があるようです。
「では、行ってきます!」
私は元気に城の正面から乗り込んでいきました。




