12.アニマルゾンビ動物園建設準備
完全に吹っ切れた僕は、アニマルゾンビ動物園建設を進めていた。
ただ普通の動物を飼うように柵だけというわけにはいかない。
ゾンビはしつけることは、ほとんど不可能なうえに、人を襲うからだ。
ただし、そこまで力はない。
なので、
「檻は、全面ガラス張りにしてっと」
ガラスは壊れやすいイメージがあるが、ガラスの軟化温度 近くまで加熱し、ガラス両面 に空気を一様に吹き付けて急冷することで、強度のあるガラスを作ることができる。
無限に飛び散る血を防ぐためにも、ガラス張りがいい。
送付先は、改造する貴族の空き家を指定。
「建屋の資材の発注はこんなもんだな」
本当にゾンビはやっかいだ。
特に腐臭。
建屋の換気方法については、もっと検討しておく必要があるだろう。
ただ、普通の動物と比べていい面がないわけでもない。
「捕まえて、逃がさないようにしてしまえば、餌だいはかからないので、ランニングコストはたいしたことないんだよな」
初期投資さえどうにかしてしまえば、なんとかなりそうだった。
僕は、となりでギルド向けの書類を作ってくれていた王妃様に声をかける。
「そっちはどうですか?」
「あとは理由を書くだけなのですが……」
「理由は、魔法研究のためゾンビを生け捕りにしたいということにしてください」
「でも、本当はアニマルゾンビ動物園をつくらないといけないのでは?」
「ニルナ様だけには、動物園ということにしますが、世間的には、だれでも訪れることができる研究施設ということにします」
エサ代を来客者から、無理やり稼ぐ必要はない。
研究施設ということにしていれば、物好きは見に来るだろうから、ニルナ様は動物園だといっても疑わないだろう。
「人のゾンビは、研究するのも、人道的にまずいですが、アニマルゾンビならということですね」
「人のゾンビを取り扱うのは、立ち入り禁止エリアにしたらいい。魔導士なら研究したい人もいるでしょうから」
実際、研究したいのは、僕だ。
ゾンビの魔法研究は、進めておきたい。
冥界の扉が、また今後も開くことも想定されるからだ。
ゾンビの軍事利用もありえるだろう。
倫理がどうとかを気にして、他国に先を越される訳にはいかない。
「なるほど、さすがです」
王妃様は感心して、頷いている。
「僕は建物の構造を、もう少し検討します。出来上がったら、王妃様はギルドに依頼をお願いします」
「はい。お任せください」
僕は王妃様が出て行くのを確認して、腕を組む。
「問題は、研究所長か」
毎日毎日死体を見ていたので、やるのは別に構わない気持ちにはなっているが、いかんせん自分が兼任するにしては、今手持ちの仕事量が多すぎる。
「ゾンビを四六時中見ていても気持ち悪くならないような人が、僕以外にこの世にいるとは……」
唐突に城の扉がひらいた。
「聞こえたぞ! この我を呼ぶ声が!」
なんだろう。
わかるような。わからないような。
わかるけど、わかりたくないような。
無視するわけにもいかず、僕は質問する事にする。
「どちら様ですか?」
「我はニルナ様に雇われたマッドサイエンティスト・プロフェッサー・カキュルトだ!」
「マジか! 自分でマッドサイエンティストっていう人初めてあったぞ」
なんでこう、おかしな人がおかしなタイミングで、送り込まれてくるんだ!?
いや、もういい。
細かいことを考えるのはもうやめだ。
渡りに船だと思って、とりあえず聞いてみることに。
「ちょうどアニマルゾンビ研究所の所長募集中なんですが」
「我に任せよ」
「即答したぞ。この人」
判断が早すぎる。
少しは悩んでほしい。
だがゾンビ慣れしているというだけで、雇うわけにはいかない。
「とりあえず、今までの研究内容教えてもらっていいですか」
「我が狂気の研究の数々にひれ伏すがいい!」
◇ ◇ ◇
僕は数時間におよぶ発表を感心して聞いていた。
僕は、完全に魔法研究する事しか頭になかった。 医療技術の発展の為に、ゾンビを利用するなんて、考えにも至っていなかった。
内臓を剥き出しにした状態で、観察するなど、現状はゾンビにしかできない芸当だ。
「なんだ。研究内容はまともなんですね。安心しました」
「何? まともだと⁉ 我がか?」
「人体の内部構造の研究ですよね。僕も検死の仕事するので、もう少し詳しく知りたかったところです」
「我以外に同士がいた?」
「ああ、良かった。たまには、ニルナ様もまともな人選ができて」
「まとも、我がまとも?」
「仕事として依頼する事があるので、こちらで研究内容指定することもありますがかまいませんか?」
「それはかまわないが」
「研究費多額用意しておきます。良かったこんな適任な人が見つかって。優秀な人、探していたんですよ」
「何? 優秀だと⁉ 初めてだ。そんな評価を受けたのは! 大臣様、一生ついていくぞ!」
がっしり手を握られ、感激の涙を流しはじめた。
「えっ、あっ、はい。ではよろしくお願いしますね」
なんで急に気に入られたのかよくわからないが、問題が解決して良かった。
とにかく、こんな優秀な人を腐らせておくだけなんてもったいない。
だって、ゾンビの研究なのだから。




