11.マッドサイエンティスト
ピカッ!
雨も降っていないのに、雷がなっていました。
「こんなところに家があってよかったわ」
「そうじゃな。しばらく雨宿りさせてもらうかの」
雨が降っていないのに、雨宿りというのも変ですが、雷宿りとは言いづらいので雨宿りでいいでしょう。
「あとは、おやつと紅茶もお願いしましょう」
「ニルナは普通に図々しいの」
「何が出てきますかね?」
私が扉を開けます。
ガタン!
中に大量のゾンビがいました。
一斉に私達の方を見て向かってきます。
「なんで、こんなところにゾンビがいるんじゃ!」
ジャラジャラガシャン。
「なんだ鎖でつながれているじゃないですか」
「これなら安心ね。雨宿りできるわね」
「おぬしらの神経についていけないんじゃが」
「なに言ってるんですか。ルーンさんはゾンビと同じ亡者でしょう」
「そうなんじゃがの。一緒にしてほしくはないの」
「それにしても、鎖につないだのはだれかしら? ゾンビは自分で鎖繋げないのに」
確かにクミースの言うように、ゾンビは自ら、鎖で自分の体をつないだりはできはしません。
そう思っていると、奥の部屋から、人の声が聞こえてきます。
「どうして私の研究が認められない! どうしてこの才能が伝わらないというのだ!」
顔に傷のあるモノクロ眼鏡をはめた男が、ゾンビを切り刻み、ゾンビの内臓を確認しながら叫んでいました。
「すみませーん」
「む? 誰だ?」
「ニルナです! 雨宿りさせてもらえませんか?」
「何? 雨宿りだと⁉ 好きなだけしていくがいい!」
「ありがとうございます! あとお茶ももらえますか」
「何? お茶だと⁉ そこに、葉と急須があるから好きに飲むがいい!あと、お菓子もあるぞ。これも好きなだけ食べるといい!」
「ありがとうございます!」
「この男、見た目の割に、めちゃくちゃ親切じゃな」
「ルーンさん人を見た目で判断してはいけませんよ」
「そうじゃった。見た目おしとやかなお嬢様なのに、中身脳筋のやつがおったの……」
「だれのことですか?」
見当もつきません。
男は、椅子を引っ張り出してくると、座るようにうながしました。
「こんなところに女三人で来るということは、よっぽどの理由があるのだろう」
「ハイキングに来ました!」
「何? ハイキングだと⁉ ハイキングだと? ハイキング? こんなところにか?」
「その通りです」
「酔狂な娘達もいたものだ。我は、わざわざ人が来ぬからこんなところに住んでいるというのに、東屋だとでも思って好きに休んでいくといい」
「ありがとうございます」
本当に親切な人です。
「ところで、さっきは研究がどうとか何を言っていたんですか」
「我はプロフェッサー・カキュルト、ゾンビの研究をするものだ」
「ゾンビの研究ですか? ゾンビが発生したのは、最近だと思うのですが?」
「うむ。ゾンビが大量発生したのは、数か月前だな。特に、サンヴァ―ラ国で発生したようだ。アステーリではそれほど発生していないが、ゼロではなかった。出来る限り捕らえたのがこいつらだ」
カキュルトは、台に縛り付けられているゾンビを指さします。
「元々我は、人体の仕組みについて研究していた。これほどまでに、ゾンビほど、可能性に満ちた存在はいない。普通の人間ではありえない、切り刻んだあとの内臓の動きなどを把握できるのだ。回復魔法のないこの世界で、医療の発展を促せると思い、ゾンビを捕らえ研究を始めたのだが、人道的ではないなどといわれ、アステーリ王都を追い出されてしまった。無能どもめ」
苦々しげに言います。
「そんなことで、我が研究意欲は無くなったりせぬ。はっはっは」
「ではまず、プレゼンお願いします!」
「何? プレゼンだと⁉ わが研究内容を知りたいということか?」
「もちろんです。話も聞かずに、研究がいいものか悪いものかなんて判断できませんから」
「そうなのだ。話を聞いてよく考えて、ダメだと判断するのならいい。ゾンビの研究と聞いただけで、ダメだとか恐ろしい研究だとか、怖いとかいうのがダメなのだ」
「そうですよ。ちゃんと繋がれているたいして知能もないゾンビが怖いなんて、意味が分かりません。私なんて近くでゾンビが徘徊しているなか、毎日夜寝てましたよ」
「何? 毎日ゾンビの傍で寝ていただと⁉ それは普通にやめたほうがいい」
「ニルナ普通に心配されとるの」
「なに言ってるんですか。もちろん交代で見張りはいますよ」
「うむ。ならよいが……」
「とにかくプレゼンお願いします」
「よし! ならば、我が研究をとくとして聞くがいい!」
◇ ◇ ◇
数時間後。
「素晴らしい! 途中からなにいってるかわからなくなりましたが、熱意は伝わりました!」
「そ、そうか」
ガクッと、うなだれてしまいました。
理解出来たらよかったのですが、専門用語が多すぎて、途中から子守歌になってしまっていました。
よく寝れて、元気いっぱいです。
クミースは、今もすやすや寝ています。
「きっと、フィルクに話してくれれば内容を理解してくれます」
「あいかわらず、小僧に丸投げじゃな」
ルーンさんが何か言っていますが無視して、私は宣言しました。
「採用です!」
「何? 採用だと⁉ 採用とはなんだ?」
「サンヴァ―ラの研究員として迎え入れます」
「お前はなんだ、サンヴァ―ラの貴族か何かなのか?」
「私は、ニルナ・サンヴァ―ラ、女王です!」
「何? 女王だと⁉ えっ? 本当に女王なのか」
「本当です!」
私は、さらさらと、親書を書いて渡しました。
「いいのか? ゾンビとはいえ、人体を切り刻んで、研究してるんだぞ」
「私も切り刻むだけなら、得意です!」
「得意???」
「研究資金欲しくないですか」
「それは欲しいが」
「では、決まりですね! 私の城を訪問してください!」




