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英霊召喚に失敗して私の勇者を乗っ取られました ! 王女の私が、世界を救ってみせます ――聖剣と悪の血統者――  作者: 名録史郎
ep2.ならば戦争です!

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9.竜神教2


 川から流れてきた死体をとりあえず、城の死体置き場に片付け終わった頃、ニルナ様に助けられたという人々が城にやってきた。


 僕はその中の代表から親書を受け取った。


『新たに国民になりたい生贄になりかけてた数十人助けました。なんかうまいようにやっといてください。かっこいい宗教も国教も認可しましたので、いい感じにお願いします。ニルナ』


 助けた人たちはとりあえずいいでしょう。

 不明点はありません。


 宗教団体とみられる四人組は、怪しげなフードをかぶり、神父以外は仮面をつけている。

 どうみても、邪神教にしか見えない。


「はっ? どういうことなんですか? どうみても邪神教をなぜ国教に? なんで生贄にされそうになった人たちが一緒に?」


『間者など処分に困っている死体は、その国教の人たちが生贄にしてくれるので、何も問題ありません』


「生贄にするから問題ないって大問題なんだけど!?」


『あとドラゴン小屋と、ドラゴンの餌用意しておいてくださいね!』


「はあ? ドラゴン? なんでどうして?」


 僕は頭を抱えた。


「ただでさえ問題山積みなのに、どういうことなのか、なにもかもわからない」


「あのー」

 生贄になりかけていた人達の代表が僕に話しかけてきた。


「はい。どうしましたか?」


「どうして私達は、助けられた邪神教と一緒にこの国にやってきたんでしょうか」


 僕が聞きたい!


「あのー」

 今度は邪神教の神父が話しかけてきた


「はい。どうしましたか?」


「どうして私達は、国教に認められたんでしょうか?」


 僕が聞きたい!

 

「ニルナ様に雇われてから、僕はなに一つ理解できないぞ」


 とにかく僕は、空き家になっている貴族の家の地図を、邪神教の集団と、生贄になりかけた人々に渡す。


「よし、問題の先送りはできた……」


 とりあえず、今までで一番意味のわからなさが酷い。

 落ち着け僕、よく論理的に考えるんだ。


 仮にニルナ様が、正義感が強い人だとしたら、生贄になりかけた人々を助けるのはわかる。

 その場合どうして、邪神教を国教にしたんだろうか。


 わからない。


 仮にニルナ様が、邪悪な心の持ち主だとしたら、邪神教を国教にするのはわかる。

 その場合どうして、生贄になった人たちをなぜ助けたんだろうか。


 わからない。


「わかるかぁー!」


 ニルナ様の行動原理が何一つ理解できない。

 だれか僕に常識を取り戻させてくれ。 


「あのー」

 こんどは王妃様が声をかけてきてくださりました。


「はい……。どうしましたか?」


「……手伝いましょうか?」


「お願いしてもいいですか……」


 僕は、王妃様と一緒にため息をついた。


「ワタクシとんでもないところに、救援を依頼しに来たのかもしれません」


「そうでしょうとも、僕もとんでもないところで働くことになったと思います」


「そういえば、この国の王は数百年前、魔王と呼ばれていたと」


「じゃあ、ニルナ様は、魔王の生まれ変わりですね」


 魔王なら、邪神教を国教にして、ドラゴンを飼いならしてもなんの違和感もない。

 おかしいのは、魔王城で働いているのが、普通の人間の僕しかいないということだろう。

 そんな僕にもようやく仲間ができた。

 仲間は、一番この国に間者を送りつけてくる国の王妃様。

 やっぱり意味が分からないかもしれないけど。


「魔王に魂売ったつもりで頑張りましょうか」

 

 王妃様がそう言ってくれます。


「そうしますか」


 とにかく僕には、休む暇はないようだ。


◇ ◇ ◇


 数日後。


 僕は担いで来た、麻袋に入った遺体を落として叫びました。


「コラー。人がせっかく真っ白な教会建てたのに、数日で真っ黒になってるんですか」


 僕はあいていた貴族の家を見た目だけ急ピッチで教会風に仕上げました。

 せっかくかき集めた綺麗な白樺が、闇に紛れてしまうほど、真っ黒に塗られています。


「まずは形から入らないと、思いまして」


 神父が、申し訳なさそうに言います。


「誰が、邪神教の形から入れといった? あなた方はサンヴァーラの国教なんですよ」


「すみません」


 ニルナ様のおかげで、素直に言うことは聞くので、あんまり強くも言えない。


「はあ、まあ、いいでしょう。壁に聖竜ホワイトドラゴンの絵でも描いておきますから」


「私達が、呼びたいのは、邪竜ブラックドラゴンなのですか」


「あなたがたが呼びたいのは、聖竜です! 結果として、邪竜が呼び出されたとしても、ごまかしてあげると言っていますが、それでも不満なんですか。あなた方の意図を汲んであげているんですよ」


「はい。すみませんでした!」


 僕は、影でこそこそしている三人組に言いました。


「あなた方は、なんでまだ仮面付けているんですか」


「なんで仮面つけたらいけないんですか。これでは人と話せません」


「人とはなすから、仮面をはずせって言ってるんだけど」


「はい……」


 三人は、しぶしぶ仮面を外します。

 一人は、女でした。

 目はぱっちりしているので、肌の手入れをさせればいいかな。

 二人は、男で髭面。

 まずは、髭を剃ってみないとなんとも言えないけど、身体は鍛えているので、ブサイクということはなさそう。


「ちゃんと美容師手配してあります」


「美容師!?」


「何を話せば……」


「刃物を持った人間に後ろに立たれるのは……」


 三者三様、動揺しています。


「身だしなみはきちんとしてもらいます!」


 顔は悪くなさそうなので、頑張れば、それなりにしっかりできそうだ。

 そうでなくては、困る。


「今日は、とにかく、お祈りの練習をしてみてください」


「お祈りではなく、儀式なのですが」


「お・い・の・り!」


「はい。お祈りです」


 神父は、素直に従います。

 神父は、死体を台に寝かせると、両手を広げ、叫びました。


「生贄をここに捧げます。邪竜様、ここに降臨してください!」


「「「ふっはっはっは」」」


 神父の言葉に、三人のおたけびが、重なります


「やーめーろー」


 僕は慌てて制止した。

 根暗のくせに、なんでこういうことだけ派手なんだよ。

 ダメだ。

 こいつらに任せるのはやめよう。


 僕は、一から宗教を立ち上げるつもりで、頭を働かせる。


「全部、僕に従ってください」


「でも……」


「いいですか?」


 僕は怒気を強めていった。


「はい!」


 宗教といえば、まずは葬儀を取り行うところだろう。

 大切な人が死んだとき、まず最初に心に寄り添ってあげる場所、それが教会だと思う。

 そのためには、どんな人であろうと平等に接する必要がある。


「やはり、敵の遺体とはいえ、まずは綺麗にしてください」


「大臣様だって、その辺に放り投げていたではないですか」


「僕は全部焼却するつもりだったんですよ」


「一緒なのでは?」


「違いますよ。ここ国教なんですよ。普通に国民も訪問します。こんな雑に遺体を扱ったら印象最悪じゃないですか。竜神教という名前はこの際いいけど、見た目はそれなりにしてください」


 神父は頷きました。


「では生贄を」


「生贄いうな! 聖骸と言え!」


「一緒なのでは?」


「違います。あなた方は慈悲深く、敵の間者であっても、葬儀を行ってあげている……というていをとります。結果として、竜を呼ぶ生贄になっていたとしても、それはいいです」


 魂が召される。

 普通は冥界に行くけれど、竜界に行ったとして、わかる人間はまずいない。

 生贄になっているなんて誰も思わないだろう。


 そうなれば、雰囲気が大事だ。


「もう僕が言うことを復唱してください」


 僕は咳払いをして、言います。


「竜神様の思し召しで、悪しき魂も救いがあることでしょう」


「やってることは何も変わらないのですが」


「しーるーかぁ! 僕は本当は反対なんですから、潰されたいのか。今はニルナ様がいないから僕がこの国で一番偉いんだぞ」


 堪忍袋がとうの昔に切れている僕は、もう権力を振りかざしていた。


「はい!すみません!」


 まったく、全然立場を理解していない!

 どこかの女王と気が合うわけだ。


「で? 本当にドラゴンは呼べるんですよね?」


 いろいろ不安になってきた僕は、念のため確認しました。


「信じればきっとできます!」


「できないんかい!」


「でも、この本にはできるって」


 僕は、神父に本を渡されます。


「本、ああ、古代書、本物ですね。えーと、手順ほとんど載ってますね。異界の門の開き方のところが、破けている?」


 一番重要なところが、欠けています。


「だから、いろいろ試しているんですが……あれ? 大臣よく古代語で書かれているのによくわかりますね」


 僕は、パラパラ古代書を読みます。


「ああ、なんだこれなら、なんとかなりそうだ」


 僕は、本を閉じて、四人を促す。


「ほら手伝ってあげますから」


 僕は、ニルナ様に借りた魔杖を構えます。


「ほら、さっきの言葉を復唱してみてください」


 四人は、死体を取り囲むように手を上げると、祈りを唱えます。


「「「「竜神様の思し召しで、悪しき魂も救いがあることでしょう」」」」


 四人の声に合わせて、僕は、間者の死体に残っている魂を利用して、竜界にチャンネルを合わせる。


 ギチギチ。


 空間の裂け目から、黒い鱗を纏った腕があらわれます。


「「「「ぎゃああああああ」」」」


 四人が、叫び声をあげます。


 伸びてきた腕は、死体を握りしめると、空間に戻っていきました。

 違う世界から、バリボリと、何かが何かを咀嚼する音だけが聞こえてきます。


 僕は、ドラゴンのレベルが高すぎて手に負えない気がしたので、空間を閉めました。


「そう簡単にはいかないか」


 思った通り、空間をつなぐことはできても、あちらの世界のどこにつながるかは運しだい。

 なので、一回でうまくいくとは、思っていない。

 死体はいくらでもある。

 何度でも、やり直したらいい。


 僕は、麻袋にいれていたもう一体の遺体を出します。


「さて、次に行きますか。なにしてるんですか?」


 四人は、床にへたり込んでいます。


「ドラゴンが、本当に……」


「呼ぼうとしていたのは、あなた方なんですが」


 しかも、さっきのが邪竜ブラックドラゴンだった気がするんだけど。


「まあ、もう大体わかりましたから」


 腰を抜かしている四人を無視して、再度、竜界につなぐ。 


 グニャア。


 空間がゆがみ、こぼれ落ちるように出てきた物を、僕はキャッチした。

 

「卵ですか」


 人の頭より少し大きいくらいの卵だった。

 シマシマの模様がついていて、いかにもドラゴンの卵といった感じ。

 子供のうちから躾ておけば、どうにかなるだろう。


「あなたたちでは不安なので、僕が預かっときますね」


「どうして、竜界の扉がこんなに簡単に……」


 神父が不思議そうに言います。


「何言ってるんですか。他の世界が開いたところなら、この間見たばかりでしょうに」


「この間、見たばかり?」


「わからないなら、気にしなくていいです」 


「大臣様はなにものなんですか?」


「はあ、何言ってるんですか?」 


 答えを自分で言いながら、何を確認してるんだろうか?


「僕は大臣。この国で二番目に偉いものです」


 

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