7.塩の村
「ふふふん」
クミースが鼻歌混じりで、魔導戦車を運転してくれています。
「クミース、魔力は大丈夫なんですか?」
「蓄魔力式に改造してあるから」
「蓄魔力式?」
「あんたが注ぎすぎないように、直接魔力をエンジンに注ぐんじゃなくて、一回魔力を貯めた物から供給するようにしたの。あたしみたいな魔力が少ない人間も運転できるわよ」
クミースが後ろにおいてある箱を指差します。
「ニルナ、そこにあるでっかい棒みたいなのに、魔力注いでくれない?」
「わかりました」
私は手を触れて、魔力を注ぎます。
黒い棒が、ポワッと光輝きます。
「終わりました」
「はやっ!? あたしは一本、一時間はかかるんだけど。今後は魔力補充は、ニルナにお願いするわね。あとはペダルでスピード調整するだけよ」
「よかったのじゃ。これでニルナは暴走しないんじゃな」
「暴走モードは、魔力棒を全部一気にセットして、安全ロック外せばできるわ」
「さすがです!クミース」
「なんでできるようにしてあるんじゃ!」
「一時間連続運転すると、エンジン壊れるから気をつけて」
「わかりました!」
「なんで暴走する前提なんじゃぁああああ!」
もう。
ルーンさんは、なにを騒いでいるのでしょうか。
もっとおとなしくしてもらいたいものです。
◇ ◇ ◇
私は、国境付近にある村について、呆然としていました。
「なんで建物なくなっているんでしょうか。王族御用達の旅館があったんですよ。ああ、私の家が」
「宿屋は、ニルナの家ではないのじゃ」
「私がいっぱい注文付けて、いい感じになっていたんですよ」
「お主は、ナチュラルにわがままじゃな」
「お金は払ってますよ」
「他にも、宿ぐらいあるわよ。一番、高いところにとまるわよ」
「クミースは金払う気ないじゃろ」
「そういう約束なんだからいいのよ」
「お金なんて、フィルクがいくらでもどうにかしくれます」
「あの小僧は、災難じゃな」
「他の宿探しましょうか」
私たちは、他の宿を探すことにしました。
◇ ◇ ◇
私は、かって知ったる足取りで、村長の家まで進んでいくと、バーンと扉を開きました。
「あれ? 扉とれてしまいました。もろい作りですね」
「力入れすぎじゃろ」
「すいません。直して、もらっていいですか?」
「は、はぁ」
近くにいた男の人に扉を押し付けて、私は叫びます。
思ったより人がいます。
集会の最中だったようです。
みんなうつむいて暗い顔をしています。
どうしたんでしょうか?
「村長! いますか? 遊びに来ましたよ」
どこかに村長がいるはずです。
「えっ? ニルナ様?」
集まっている人の中からヒゲを生やした男の人が出てきます。
「はい! ニルナです!」
「ど、どうしてここに?」
「ちょっと、アステーリ国に用があって、寄り道しました。いつも泊めてもらう旅館がなかったので、何かあったんですか?」
「それが、そのアステーリ国の領主がやってきまして、ここはアステーリ国になったと……それで、サンヴァ―ラ国の王族向けの旅館は必要ないからと取り壊しになってしまい……」
「はぁ? なんですか。私の家ですよ!なんで壊すんですか」
「だから、旅館はニルナの家ではないんじゃが」
「それに、私なんにも聞いていません!ここは、サンヴァーラ国ですよ!」
「サンヴァーラは滅んだから、アステーリ国と」
「滅んでいません!誰ですか、そんなデマを流したのは!」
「私たちもそういったのですが、取り合ってもらえず、領主は兵隊を引き連れていて、戦うこともできずに」
「兵隊?まあ、それなら仕方ないですよ。あなたたちに怪我がなくてよかったです」
「ニルナ様……」
村長は泣き出しました。
「そもそもアステーリ国にはそういう話をしに行くつもりでしたから、今日のところは、おいしいご飯でもつくってもらってもいいですか。お腹減っちゃって」
「それが、食料もほとんど納めてしまって、今ある分も納める分しか残ってなく……」
「納める?」
「通貨が違うからと、税のかわりだと……」
「大体なんで、この村から、食料をとるんですか? この辺は、土地がやせてて……でも、そのかわりおいしい岩塩がとれるので、それを納めてましたよね?」
「サンヴァーラには、そうしていたと何度も説明したのですが……」
「領主はどこにいますか!」
「ちょうど、もうすぐ来る予定で……それで集会をしていたのですが……」
「大丈夫です!私が話し合いで、解決します!」
◇ ◇ ◇
私は、村の入り口に仁王立ちして待っていました。
「いいのかや? 村人は誰も連れてこなくて」
「兵隊がいるのなら怖いでしょうから」
「おぬしはナチュラルに優しいな」
「ルーンさん。ありがとうございます。喉が乾いたので、お茶ください」
「優しいが、わがままじゃな。でも、飲み物飲んでる暇はなさそうじゃぞ。ほら、あれじゃないかや?」
領主と思われる人物が兵隊を従えて、やってきました。
「なんだこの娘は?」
開口一番そんなことを言います。
「なんでこの人、私の顔も知らないですか?」
「ならお前は誰なんだ?」
私は胸をそらして、堂々と名乗ります。
「この国、サンヴァーラ国女王ニルナです!」
「サンヴァーラ国の王族は滅びただろう。それにここはアステーリになったのだ」
「滅びてませんし、ここは、サンヴァーラ領です」
「何度言わせるのだ。ここはアステーリ国になったと言っているだろう」
私は一瞬で領主に間合いを詰めいると、剣を振るいました。
スパーン。
コロコロ。
領主の首がボールのように、転がります。
突然、自分たちのリーダーが真っ赤な間欠泉になったので、敵が全員固まります。
「ニルナや? 話し合いはどうなったんじゃ?」
「話し合いは終わりました! ここは、サンヴァーラ国ですよ! 嘘つきと話し合いなんてできないでしょう」
私は聖剣を構え、臨戦態勢をとりました。
「逆らうと処刑だぞ!」
兵士の一人が叫びました。
「処刑かどうかを決めるのは、この私です!」
怒りをそのまま魔力に変えて、聖剣に注ぎます。
聖剣変形「運命の剣」
カシャン、カシャン、カシャン、ジャキーン。
「全員、冥界送りにしてさしあげます!」
◇ ◇ ◇
「ということで、ここはサンヴァ―ラ国にもどりました!」
村民から歓声が沸き上がります。
「ニルナ様、すごい話術ですね。あの領主を言いくるめてしまうとは」
「もちろんです。私は女王ですよ」
「話術?」
首をかしげているルーンさんは無視します。
進み出てきた村長と私は、握手をしました。
「お礼なんですが」
「お礼なんてそんな。いままで通り塩を納めてもらって、今日の寝床とおいしいご飯と、アツアツのお風呂と……えーとあとは」
「めっちゃ、たかる気じゃの」
村長さんは、笑っていました。
「懐かしい。昔、来てくれた時もそんな感じでした」
「昔ですか?」
「ニルナ様は、あれが欲しい。これが欲しい。あれが食べたい。これが食べたいと言っていました」
「それは……、その……」
「もらったら、『ありがとう』、ごはんを食べたら『おいしいです!』楽しそうなお姫様を見るのがみんな好きで、なんてわがままなお姫様なんだと、みんなで笑ったものです」
私は顔が赤くなるのを感じました。
「あのときの最後の言葉を覚えています。『また来ますから、皆さん元気で長生きしてくださいね』と言っていました」
「私、そんなこと言ったんですね。全然覚えていません」
「私たちは、本当にこの国に生まれて良かったと思っています。これからもよろしくお願いします。ニルナ様」
「はい!もちろんです」
私はにっこり笑って言いました。
「問題はこれですべて解決です!」
◇ ◇ ◇
数日後の王都近郊にて。
僕フィルクが呼び出されて川に行くと、どんぶらこどんぶらこと、大量の死体が流れてきていました。
「なんでこんなに死体が……死因はほとんど斬首で、鋭利な刃物で一撃で切り落とされている。この間の死体の死因とまるで一緒……。この川はアステーリ王国から流れて来ていて、ちょうどニルナ様が行った方角……国境付近の村から塩の納品と、感謝状が届いて……ニルナ様が話し合いで解決してくれたらしい……」
いろんな状況が、頭の中で組み上がり、一つの真実が仕上がってしまった。
「しりたくないのに、状況が手に取るようにわかる……」
賢い自分の頭が恨めしい。
遅れて見にきた、王妃様が、口をおさえて青ざめています。
「一体なにが起こっているのでしょうか?」
ニルナ様の逆鱗に触れたアステーリ国民が惨殺されて、ニルナ様は死体の処理がめんどくさくて川に流しているとは、口が裂けても言えず。
「僕には、想像もつきません!」
僕は、何にもしていないけれど、無実を証明するように叫んだ。
叫んだところで、死体の山が消えるわけではなく、
不安になった王都民が城に駆け込んでくる未来が見える。
僕は誤魔化すための言い訳を、必死に考え始める。
どんどん問題が増えていくんだけど、どうなってるのニルナ様!




