3.庭で修業
私は、死体置き場の隣にある綺麗な庭で、素振りをしていました。
「はっ!」
考え事をし始めると、時間を忘れてしまいます。
かれこれ数時間振り続けています。
何回振ったんでしょうか。
昔は、千回振ったぐらいで音を上げていましたが、今ではかぞえもせず、ずっと振っています。
それにしても、
「失敗したら、どうなるかわかっていますね? ってどうしたらいいのでしょうかね」
おばあ様に、とりあえずそう言っておけばいいといわれたのでそうしていますが、失敗した時どうしたらいいのでしょう。
「きっと、お茶でもしながら、反省会開いたらいいんでしょう」
人間失敗しますからね。
二度おんなじことを、繰り返さないことが大切です。
「本当に悪いことでなければ、何回か失敗を繰り返して学んでいくものでしょうし」
うんうん。と頷きます。
反省会を行うときのために、クッキーでも焼く練習をしておきましょう。
謎も解けたところで、再度修行を再開します。
すると、死体置き場に置かれていた死体の一つが、むくりと起き上がりました。
「わあああああああああ」
私は死体が動くのは、久しぶりだったので、叫び声をあげました。
「なんじゃ、この城どうなっとるんじゃ」
聞きなれた声です。
死体の肌が回復していきます。
見慣れた姿になりました。
「あ、ルーンさん」
完全に気を抜いていました。
危ない。危ない。
「亡者がゾンビになることがないので、死体置き場の傍で修業していましたのに」
「ニルナや、普通の人間は、ゾンビにならなくても、死体置き場のそばで、過ごしたりなんかしないんじゃぞ」
「そうなんですか? 花とか綺麗に植えてますよ」
殺風景はいけないので、自分の好みの花を植えて、水やりもしています。
「そういう問題じゃないんじゃが。そんなことより、なんか城壁にちょっと触れたとたん爆発したんじゃが」
「すみません。それ私です」
「何てことしてくれるんじゃ、妾じゃなかったら死んどるところじゃぞ」
「すみません」
城壁の外には堀があるので、無理やり侵入してくる者ぐらいしか爆発しないので、引っかかるのはルーンさんぐらいですが、ここは素直に謝りました。
「魔力あげますから」
おわびに、ルーンさんに、魔力を渡します。
ごくりと飲み込むと満足そうな顔をしました。
「よし、許してやるのじゃ」
うん。ものすごく安い命ですね。
口にはだしませんが。
「なんだか最近、間者が多くてとりあえず、正門以外のウーツ様が設置していた迎撃魔法を起動してまして」
「ん? 正門はなにもしてないのか」
「国民のために、解放していますから。正門にそんな魔法設置してたら怪我人がでますよ。でも、侵入者の皆さん、正門だけは使用しないんですよね。どうしてなんでしょうか」
「普通、侵入するときは正面からいかんのじゃ」
「私とソウは、正面から行きましたよ」
「お前らぐらいじゃぞ」
「正門からいって敵全員倒したらおわりじゃないですか。道も迷わないし、簡単です」
「本当にお主は、ソウの子孫じゃの」
よく分かりませんが、なにやら、ルーンさんは呆れています。
「それはそうと、ルーンさん、この間は、本当に助かりましたよ」
私は、ぺこりとお辞儀をした。
この間というのは、魔女を倒した直後、ヨウキおばあ様に体を乗っ取られたときのことです。
私が、魔女を倒したので、ルーンさんは、城に様子を見に来てくれました。
そして、憑依術の解除方法を教えてくれたのです。
「本当じゃよ。ちょっと考えればわかるじゃろう。ヨウキのヤバさを一番理解しとるソウが、ヨウキの対策をお前さんに伝えてないわけがなかろうて。あやつはいつも直接教えてくれるわけではないがな」
「そうですよね。うっかりしてました」
憑依術解除方法は、パリィを術式にあわせて打ち込むこと。
つまり、術式の媒体であるペンダントと聖剣に同時に打ち込んで魔法を解除してやれば済む話でした。
精神体でも、パリィは使うことができました。
ヨウキおばあ様は、ちゃんとペンダントに戻っています。
質問するといろいろ答えてくれます。
いつの間にか世界征服に舵を切られるのが玉に瑕です。
それ以外は、普通にやさしいおばあ様です。
いえ……普通のおばあ様は、世界征服目指したりしませんね。
「で、ニルナや、いつ出発するんじゃ」
ルーンさんが言っているのは、死人掃討の旅のことです。
ルーンさんはヴァンパイアロードエルフ。
瘴気を糧にでき、生者と死人の区別がつくため、前会ったときお願いしていました。
ですが……。
「それがですね。しばらく動けそうになくて……さっきも言いましたが、間者が多くて、どうも亡者で私以外の王族貴族がなくなったのをいいことに、攻め入る準備をすすめている国がおおいらしくて」
物騒な話です。
あんなに友好的だと思っていた国交は、どうやら私が思っていた以上に見かけだけだったようです。
「なら軍を準備するんじゃな?」
「軍? ああ、その手がありましたか」
「他にどんな手があるんじゃ?」
「ゼウスキャノン覚えようかと」
「第二の魔王になる気かの……」
「スルトソードは、山火事の恐れがあるので」
「海賊王には、もうなっとるんじゃな……」
「問題は、二か所同時に襲われたときなんですよ」
「やっぱり軍はいるんじゃな」
「いえ、ゼウスキャノンを上空から撃って、敵を滅ぼそうかと、ゼウスキャノンならどれだけ距離があっても関係ないので」
「なにがなんでも一人でやる気かの……」
「ソウとウーツ様にそうしろと習いましたから!」
「あやつらだって、二人バディでやっとったのじゃが……」
「冗談ですよ。なにもかも自分一人でやるわけではありませんよ。ほら、私は泳げないので、海は海軍に守ってもらいますよ」
「軍と自分一人が同等と思っとる時点でやばいじゃろ。ニルナ一人で陸地全部守る気なのか…………。はあ、わかったのじゃ。とりあえず、死人は後回しじゃの」
「ほんとはよくないのは、わかっているのですか」
冥界の門が閉じたことで、亡者は復活しなくなりました。
ただ死人がいる限り、瘴気は発生し続けます。
今のところは大丈夫ですが、今後どんな悪影響があるかわかりません。
ただ隣国に滅ぼされてはかないません。
そのためにはまず。
「強くなるため、修行しなければなりません!」
「どんな修行大好きっ子なのじゃ……もはや、修行する理由をさがしとるじゃろ」
「そんなわけないじゃないですか。さて、あと千回振ってウォーミングアップ終わったら修行はじめましょうか」
「もう千回の素振りは修行じゃないんじゃな……」
なぜか呆れているルーンさんを尻目に素振りを始めます。
うん。
強くなるって、楽しいなぁ。




