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英霊召喚に失敗して私の勇者を乗っ取られました ! 王女の私が、世界を救ってみせます ――聖剣と悪の血統者――  作者: 名録史郎
ep1.冥界の扉を閉めるまでは

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42.元凶

 私は、魔女殺しの槍を引き抜いて、始まりの死人と向き合います。


 ウーツ様の子供、アンル。

 病気か毒を盛られ幼くて、亡くなった悲劇の幼子。

 ネガイラおばあ様が、狂い果てて、

 この世が瘴気にまみれ、亡者が蠢く地獄と化した元凶。

 そして、私の愛すべきお兄様が死ぬことになった仇です。


 魔女を殺した私を、震える瞳で見つめます。


「僕を殺す理由なんてないですよね」


 震える声で私に問います。


「なにを言っているんですか。お兄様の体を利用しているだけで腹立たしいというのに」


 魔女が、アンル大叔父様をお兄様の体を使い現世に蘇らせた理由は、本来得るべき王座を与えたかったのでしょう。


 理由がわかるだけに、憤りが胸を焦がします。


 私が睨みつけると、怯えたように言いました。


「お母さんは言いました。僕はもう瘴気を生んだりしないと」


「そんなことはわかっています」


 勇者に憑りついていた、ソウとウーツ様は霊魂でしたが瘴気を生んでいませんでした。

 ソウの傍にいても、ルーンさんはお腹を空かせていたのでそれは明らかです。

 アンル大叔父様も瘴気を生んでいないということであれば、生者に憑りつくだけならば、瘴気を生まないということです。


「あなたは、亡者を生み出すことはないんでしょうね」


「なら」


「だとしても、他の死人となにが違うというのでしょうか」


 魔女が持っていた鎌の効果は、魂の消滅。

 ただし、私のグングニルやソウのレーヴァティンと違い肉体を傷つけないのです。

 つまり、お兄様は肉体が生きたまま魂だけを殺されたのでしょう。


 アンル大叔父様を生き返らせるために。


 誰かの居場所を奪い、存在するのは罪でしょう。

 誰かが身代わりになって自分が幸せになっていいのでしょうか。

 少なくとも私は許しません。


「これから先は、誰かを不幸にすることがなかったとしても、お兄様が死ぬ原因になったあなたを許せるはずありません」


「復讐はなにも……」


「生まない? 私の復讐心が、魔女を殺し、あなたを殺し、世界を救うのです」


 私は、この先も闇色に染まったこの魂をしっかり抱きしめて生きていく覚悟を決めています。


 私は、目をそらすことなくアンル大叔父様を見つめ、聖剣を構えました。


「お姉ちゃん、どうして」


「お姉ちゃん、お姉ちゃんとしつこいですね」


 お姉ちゃんとは、ウーツ様と魔女ネガイラの子で、ハイラ初代国王の妻、ローア姫のことでしょう。

 私の祖先の一人です。

 姿が似ていたとしても不思議ではありません。


「いいですか。私はあなたの優しいお姉さんでもなければ、聖人君主でもなく、ただのあなたの遠い親戚です。これから私は、現世に存在する亡者や死人を殺してまわらなければなりません。その意味がわかりますか? あなたの存在は邪魔以外何者でもありません」


「そ、そんな」


 お父様も殺し、自分の想い人――勇者さえも殺した私です。

 いまさら、初めて言葉を交わした親戚一人殺したところでどうということはありません。


「なにより、私の尊敬するウーツ様が、心を痛めても、蘇ったあなたを殺すべきだと判断したのであれば、私はそれに従います」


 アンルは、

 魔女に、『どうして蘇らせたの?』ではなく

 ウーツ様に『どうして殺したの?』と聞きました。


 ウーツ様は

『子孫や、この世界に生きる者たちに迷惑をかけてまで、生き返る必要はないだろう』

 とちゃんと説明していたのにもかかわらずです。


 きっとウーツ様は一度目だって、ちゃんと説明したはずです。

 まるで反省の色が見えない。


 私はアンル大叔父様にむかって歩を進めます。


 息をのむ音が聞こえてきます。


「一度目は許しますが、二度目は許しません」


 私は迷いなく、剣を握りしめました。


 罪無き者を殺す者に正義はないでしょう。

 そうだったとしても。


「この身『悪』に堕ちようとも、私は自らの意思であなたを殺します」


 私は自然な動作で聖剣を突き出しました。

 しっかりと心臓を貫く感覚が手に伝わってきました。


「さよなら、アンル大叔父様。もう二度と出会わないことを祈っています」


 私は、聖剣の通常形態で刺しました。

 魂が消滅したわけではありません。

 魂は冥界に流れていくでしょう。

 これが私のできる最大限の慈悲です。


「あなたの幸せを願うお父さんが冥界で待っていますよ」


 私は、あなたが現世で幸せになることは許しません。

 ただ、あなたが来世で幸せになることは、祈っています。

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