40.ジャイアントゾンビ
私は、勇者が使っていた聖剣を手に駆けます。
「勇者!今、楽にしてあげますから」
聖剣変形「運命の剣」
勢いよく踏み込み間合いを詰めます。
勇者は私の動きに碌に反応できません。
一閃。
私が聖剣を振り抜くと、勇者の首が宙を舞います。
すぐさま、首が復活します。
冥界の扉が開いてしまった所為で、勇者の魂を魔女から解放できません。
何度も、斬りつけますが、肉が飛び散るばかりで、いっこうに倒せる気配がありません。
勇者は、欠損した肉体を他のゾンビから補います。
それどころか、他のゾンビとくっついていき、いびつな肉塊になっていきます。
肉塊は再び、めきゃきゃきゃきゃと歪な音を立てながら肥大化していきます。
異常に大きな手を形成していき、私を叩き潰さんと振り下ろしてきました。
ズーン。
私は飛びのきながら、聖剣から、斬撃を飛ばしますが、ブクブクと傷口が泡立つと、ふさがっていきます。
皮膚はまともになく、骨や赤い筋線維が剥き出しのまま、頭蓋骨あちこちに乱雑にくっついています。
もはや、ただのゾンビではなく、壊滅的な破壊力を持つ巨人と化していました。
さしずめジャイアントゾンビといったところでしょうか。
圧倒的な質量の前に、有効な攻撃がなくなってきました。
「諦めたらどうですか?」
魔女が私をあざ笑います。
「諦める? そんな文字、私の辞書にはありません」
倒せる可能性があることを試しつくすしかありません。
私に向かって巨人は拳を繰り出します。
私は、聖剣を担ぐように、構えると魔力を注ぎます。
聖剣変形「雷神の鉄槌と帯と篭手」
巨人の拳に引けを取らない巨大なハンマーであるミョルニルと超怪力の効果を持つヤールングレイプルでジャイアントゾンビの拳を真正面から受けました。
全力の魔力を流し続けます。
「ぐぅ」
ピカッ!
ハンマーの先端から稲妻が放たれます。
ジャイアントゾンビの拳を丸焦げにします。
が、
私は吹き飛ばされて、空中で回転しながら受け身をとります。
「今のは?」
威力は、強くなく、コントロールもできていませんでしたが、ウーツ様の魔法『神罰』がハンマーから飛び出したように感じました。
ただ焼け石に水だと言わんばかりに、ジャイアントゾンビには効いていません。
私の聖剣形状に、魔法効果をのせることができるとわかっただけでも、僥倖です。
もう一度試してみようと、魔力を込めようとしたところで、ジャイアントゾンビが再度攻撃してきました。
今度は、全体重の乗った踏みつけです。
ドーン。
受けることはできないと判断して、ミョルニルから通常形態に戻して回避します。
「しってますよ。殲滅型は使えないのでしょう」
魔女が勝ち誇った顔で私を見ます。
「殲滅型が使えないだけです」
殲滅型や、討伐型は、ソウが言っていただけです。
討伐型しか使えないのであれば、
討伐型で、殲滅すればいいだけのこと。
「今なら使える気がします」
魔力が今までで一番高まっています。
「希望はどこにもありませんでしたし」
お兄様が生きているかもしれないという希望潰え、
勇者まで、失いました。
今までは、世界を救いたいという気持ちが強かったですが、
今、この心を埋め尽くすのは、純然たる恨み。
世界を滅ぼしたいと願う力。
私に、すべてを破壊する魔力『滅びの宴』が目を覚ましました。
アイギス・アポロン・ケラウノスなど、ウーツ様の魔力と同じ、
宇宙をも統べる魔力『秩序宇宙』もあります。
すべての破壊のその先、宇宙の誕生それこそが私の魔力
魔力開放『混沌創生』
聖剣が私を主と認め、私の魔力と強く結びつきました。
「負ける気はしません!」
聖剣に魔力を注ぎ込みます。
聖剣変形「勝利の……」
変形しかけたフレイソードにラグナロクの魔力が注ぎ込まれます。
赫赫と輝くエンブレムが、さらに激しさを増していきます。
属性魔法効果がなかったはずのフレイソードに、ソウの瞳のような太陽のように輝く炎の力が宿ります。
聖剣変形「炎の巨人の大剣」




