25.馬車にて
私達は王墓を離れ、馬車で次の目的地に向かいます。
「どうして、もう一本聖剣が必要なんですか?」
私は、運転しているソウに尋ねました。
「お前は、どちらかというと、相棒より俺様の魔力に近い。魔女にとどめはさせるが、大量のゾンビやスケルトンを殲滅するには不向きだ。相棒と一緒に戦う方がいいだろう」
ソウの話では、魔女自身が扱う魔法は、それほど多くないとのこと。
まず氷結魔法、周囲を一瞬で凍らせます。
次に即死攻撃、問答無用で攻撃の当たったものを冥界送りにします。
それらは強力ではありますが、バングルの変形形状やパリィで対抗できるとのことです。
それよりも厄介なのが、単純な亡者召喚術。
魔女自身が死人なので、瘴気は無尽蔵に供給されるため、恐ろしい早さで亡者が復活するとのこと。
「俺様の武器は第二都市の家に保管してあったが、相棒の本来の武器『魔杖』は城に保管してあったはずだから魔女がおさえていると思う。それでも、聖剣一本でやれると思っていたが、どうも昔と比べて、いい魔導具、魔導兵器の類が減っている。その場で武器を手に入れながら戦うのは難しそうだ。第二都市の防衛もそれで随分苦労した」
第二都市には、ウーツ様の魔力供給量に耐えられるような魔導兵器はなくて、スケルトンはソウがほとんど人力で砕いてしまったとのことでした。
魔導兵器が減った理由それは……。
「平和でしたから」
私の国は農作物、海産物も多く豊かな国です。
さらに、隣国との関係も良好です。
争いもなく、血の流れない日々が続いたことによって、武器は自然と数を減らしました。
それはとても良いことです。
ただ突如現れた脅威に対抗するときには困ってしまいます。
「それで聖剣がもう一本ほしいのですね」
「そうだ。他のアイテムと違い事前に準備しておいたわけではないから、聖剣がまだ他にもあるかどうかはわからない。ただ作った奴は、古代種だから、まだ生きている可能性がある。俺が死んだ頃も元気に生きていたはずだから、今は死んでいても、もう一本ぐらいは作っているかもしれない。住処が以前と変わっていなければ、ここから遠くない。ダメもとでも寄っていく価値はある」
「古代種ですか。種族名はなんでしょうか?」
「ドワーフだ」
古代種ドワーフ、大昔に多くいた種族です。
鍛冶が得意だったと聞いたことがります。
長命だったことがあだとなり、繁殖力が低下し滅びてしまったとも。
「あやつか。うむ。まだ生きてるかもしれぬな」
「ばばあ、知っているの?」
クミースがルーンさんに聞きます。
「うむ。ってさっきから失礼な奴じゃな。誰がばばあじゃ。さっきは妾のことカツカレー扱いしておったし」
「それは誉め言葉よ」
美味しいものと美味しいものの掛け合わせはより美味しいということでしょう。
ヴァンパイアロードエルフ確かにそんな感じです。
「どこが誉め言葉なのじゃ。こやつも、ソウの子孫かの?」
どうやらルーンさんは、レーヴァティンさえなければ、ソウのことは呼び捨てで、意外と親し気です。
「いや、赤の他人だが」
「なんで赤の他人の方がソウのように態度がでかくて性格そっくりなんじゃ」
「態度がでかいのはそっちでしょ。新参者なんだからもっと先輩を敬いなさい」
クミースが、胸を反らしながらいいました。誰よりも身分が低い上に誰よりも何もしていないのに偉そうです。
「妾の方が年上なんじゃぞ」
ちなみに、クミースが一番年下です。
「だから、ばばあって呼んだんじゃない」
クミースは、何も気にせず言い返しました。あんまりな物言いにルーンさんが激昂しました。
「きぃー。だいたいおぬしはなにができるんじゃ」
クミースが咳払いをして、胸をそらしました。
「何もできないわ!」
「すがすがしいほど堂々というでない!」
「何もできなくても、あたしは、ニルナの大親友よ。あたしに何かあればニルナのグングニルが火を噴くわ」
「ぐぬぬぬ」
ルーンさんが歯噛みしています。
うん。クミースに初めて名前呼びされた気がします。
仲良くなったイベントでとかではなく、新規メンバーにマウント取るために呼び捨てにするあたりが、クミースらしいです。
「おぬしはいいのか? 無職で無能な奴がパーティーメンバーで」
ルーンさんは私に聞いてきました。
「えっ?」
突然言われて戸惑いました。
だって……。
そんなこと気にしたこともありませんでしたから。
私は自分の中に湧き上がってくる言葉を口に出しました。
「どんな敵が現れても最後は自分の力で倒すつもりです」
ルーンさんは、私の顔を驚いたようにじっと見つめました。その瞳には、懐かしさが混ざっているように感じました。
ルーンさんは、ふっと微笑むと私に言いました。
「やっぱり、おぬしの方がソウの子孫じゃな」
その瞬間、海風が気持ちよく吹き抜けます。
「もうすぐ着くぞ」
運転席から、ソウが声をかけてきます。
ソウが、私たちの会話を聞いていたのかはわかりませんでしたが、
横顔はとても機嫌がよさそうでした。




