17.仮初の日常3
まだ日暮れ前ですが、私たちはかなり早めの就寝をすることにしました。
ソウが私の部屋に置いてあるベッドを確認してくれます。
「よし。罠などはないな。二人とも寝ていいぞ」
「ありがとうございました」
私はお礼を言って、クミースが洗濯してくれた布団やシーツでベッドメイキングをします。
久しぶりのベッドです。
気合いをいれて綺麗にします。
「えっ。二人ともって、あたしもベッドで寝ていいの? お姫様と一緒に?」
「他の部屋で寝るわけにはいかないだろ」
一人になったところを襲われる可能性大です。
できるだけ固まっていた方がいいでしょう。
ソウは霊魂なので、眠くなることがありません。
常に見張ってくれるので安心です。
それにベッドは大きいので、二人でも余裕をもって寝れます。
「なんか悪いし、あたし床で寝ようかな」
お風呂で少し仲良くなったからか、クミースが遠慮しています。
「いつも遠慮の欠片もない奴が、突然遠慮し始めたら、敵になったんじゃないかと疑うが?」
知ってか知らずかソウはクミースに疑いの眼差しを向けます。
「はあ? なに言ってるの冗談だし。ベッドで寝るに決まってるわ」
慌てて、いつもの調子に戻ります。
自分らしくなかったと自覚したのか若干顔が赤いです。
「ニルナ」
「は、はい」
ソウに名前を呼ばれて、私は慌てて返事をしました。
「なんか怪しいからクミースの手握って寝てやれ」
「はあ? 子供じゃないんだけど」
「怪しいからって言っているだろう。お互いに手を握ってれば、悪さはできないだろう」
「ははは、確かにそうですね」
私より少し年下で親をなくしています。
強気の性格なので、わかりにくいですが、父親の死者蘇生に手を出すぐらいです。
内心、寂しくないわけありません。
「お姫様も、怪しんでるわけ?」
「怪しんでませんし、クミースに殺されたとしても恨んだりしませんよ。それに私の方が、手を握ってほしいのかもしれません」
「それなら仕方ないわね」
クミースの声が少しだけ弾んでいました。
「ソウはどうするんですか?」
「そこのソファーで休む。俺様は眠くならないがこいつの体は休ませておかないとな」
ソウは霊魂ですが、勇者は生身の体です。
睡眠は必要ということでしょう。
私は、ベッドに入ります。
クミースがもぞもぞ布団に入ってくると、手をつないできました。
ただしくは手をつないでもらった……かもしれません。
「では、おやすみなさい」
私は二人に寝る前の声掛けをおこないました。
「おやすみ」
「また明日な」
クミースのほのかな体温を感じます。
お布団からは太陽のいい香りがします。
なんだか今日はいい夢が見れそうです。
うっつらうっつらしながら、今日のことを思い返します。
自分の家に帰って、ご飯を食べて、お風呂に入って、ベッドで眠る。
そんな当たり前が、いつまでも続けばいいと思う日が来るなんて思ってもいませんでした。
私は仮初めの日常を名残惜しみながら眠りに落ちていくのでした。




