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英霊召喚に失敗して私の勇者を乗っ取られました ! 王女の私が、世界を救ってみせます ――聖剣と悪の血統者――  作者: 名録史郎
ep1.冥界の扉を閉めるまでは

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14/90

11-2.迎撃剣フレイソード

バトル挿入歌『迎撃剣! フレイソード』

https://youtube.com/shorts/Sg_shqxHoI0?si=aYSfdqpjouO0L_su


 追い詰められてなお、胸に宿ったのは《諦め》ではありません。

 ――絶対離さない。決して負けはしない。

 

 その覚悟の誓いと共に、私は伝説の聖剣を握りしめます。 


聖剣変形「勝利の剣(フレイソード)


 聖剣に埋め込まれたエンブレムが再び赫赫(かくかく)と光り輝きます。

 聖剣全体に幾何学的な紋様が浮かび上がると、燃えているかのような両刃の剣になりました。


 まるで握る手の中で、剣自身が勝利を誓っているかのようです。

 

「今こそ、反撃の時!」


 地を揺るがす骨の軋みと共に、スケルトン達が群れをなして襲い掛かってきました。

 空洞の眼窩からは死の闇が覗き、無数の石剣が一斉に振り下ろされます。


 次の瞬間、剣が意思をもったかのように『ぐん』と動き、襲い来る刃を迎撃しました。

 刃が激突し、爆ぜる火花が嵐のごとき閃光を放ちました。


 魂を震え上がらせるスケルトンの攻撃を防ぎます。


 同時に私の関節が悲鳴をあげます。


「つっ」 


 剣の動きについていければ――私の体が痛むことはありません。

 これが私の未熟さの証です。


 剣の動きを先読みして、体を動かすしかありません。


 ただ、先読みするだけでは足りないのです。

 

 そのためには、私自身が──敵をどう倒すのが最適なのか、瞬時に設計しなければなりません。


 賢き者のための剣。愚か者は、その刃に身を滅ぼされるだけです。


 今は不格好でも、食いついていくしかありません。


 掌の中で、剣がピクリと動きます。

 視界の外から迫っていたスケルトンの刃を弾き返します。


「――この剣に死角はありません」


 魂を砕くほどの怒涛の攻撃を、フレイソードは容易く防ぎます。赤く脈打つ刃は、まるで私の心臓と共鳴するかのように鼓動していました。


「くぅう」


 体の中の魔力を剣は根こそぎ持って行きます。 

 心が真っ白になってしまいそうな喪失感。

 私は歯を食いしばり、握る手に血が滲むほど力を込めました。


 辺りを見ると、骨、骨、骨、骨......。


 見渡す限りを覆いつくす、千を超えるとも思えるスケルトン達に埋め尽くされていました。


 後ろを見ると、魂が抜け落ちてしまったかのようなセイラ。

 あまりの敵の多さに戦意が消失しかけているマリーとレザ。

 

 守るべきものがある限り、私もこの剣も折れはしません。


「勝利を刻め!フレイソード」


 骨の軍勢が悲鳴のような軋みを響かせ、次々と火花の中に崩れ落ちていきます。


「今こそみせましょう。私の覚悟を」


 敵を見定めて、剣を振り上げました。


「はぁああああ」


 私は声を張り上げて、スケルトンに剣を振るい続けました。



◇ ◇ ◇ 


 ヒーローは遅れてやってくると言いますが、遅れてやってきたものがヒーローというわけではありません。 


「スケルトンも倒せるようになったか」


 スケルトンをどうにか殲滅したころに、ソウはやってきました。

 

 嫌がらせみたいなタイミングです。

 まるで助ける気はないと言わんばかりでした。


「お姫様、一人でやっちゃったの?」


 辺り一面、砕けた骨だらけの大地を見渡しながら、クミースが聞いてきます。


「ええ、もちろんです」


 私は答えながらも、もう動かない、スケルトンの頭を踏み抜きました。


 逞しくはなってきているのではないでしょうか。

 限界を超えて動き続けたおかげで、もはや体は無限に動けるような気さえしています。


 ガンガンガン。


 腹いせにスケルトンを念入りに砕きます。

 体はたくましくなってきていますが、その分、心は随分やさぐれています。


「盗賊団はどうしたの?」


 クミースが質問してきました。


「そこにいますよ」


 三人はへたり込んでいました。


 結局三人は、あまり役にたちませんでした。

 人のこと言える立場ではありませんが、冒険者になるには、技量が全然足りていません。

 未熟です。 

 本人たちも、理解しているのでしょう。

 ただ未熟なことを知るための対価として、友達の命というのは重すぎます。

 泣いているセイラにとっては、リクルは恋人同然でしょう。

 すぐに立ち直れと言うのは、酷な気がします。


「あなた達、もう自分の里に帰りなさい。故郷はあるのでしょう?」


「あるよ。だけど……」


 レザが答えます。

 ただうなだれています。


 見得を切って、意気揚々と出てきたのでしょう。

 故郷に錦を飾るどころか、なにもできないまま、仲間の一人を失ってしまっています。

 あまりに惨めです。


 私はため息をつきました。


「これをあげます」


 私は、ポケットに入っていたものを渡しました。


「これは?」


「王家の従者の証です」 


 きらりと光る王家のメダルです。


 ただのお守り代わりに持っていた物ですが、彼らにとってはお守り以上に価値があるでしょう。


 代表してセイラの手に無理やり握らせました。 


「ただし、死人蘇生を行ったら剥奪します。一度目の間違いは許します。二度目はありません」


 誰かの真似をして、私は言います。


 セイラにメダルを握らせたのは、一番心に留めておいてほしいという思惑もありました。


「故郷のみんなに聞かれたら何といえばいいか」


「王女を亡者から助けたとでも言えばいいでしょう」


「助けてもらったのは、私たちの方なのよ」


 マリーがいいます。


「ならば、これからお願いします。亡者や死人がいたら退治してください。今あげれるものはそれだけですが、亡者を滅ぼしつくしたら、もっとちゃんとした褒美をあげますから。わかりましたか?」


「「「はい」」」


 三人は泣きながら返事をしました。


「はあ? 盗賊でしょう。許しちゃうの?」


 クミースが呆れています。


「今は私の部下です」


 しかも、私自ら採用した直属です。


「誘拐されて、部下増やすのは、血筋なのか」


 ソウは意味の分からないことを言います。


「血筋?」


「勝手に誘拐されて、勝手に自分で解決したんだ。お前の好きにするといいさ」


 私の疑問には答えずソウはそんなことをいいました。


「勝手にしますとも」


 来るかどうかわからないヒーローを待つぐらいなら、私自身がヒーローになるだけです。


 メダルを大切に眺めている三人を見ます。


 私は、誰かに居場所を与えられるようなそんなヒーローになりたいと思うのでした。



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