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ブラック

こんにちは、もしくはこんばんは。シラスよいちです。

最近無気力が続いていて6月の湿気にやられていますが皆さんお元気でしょうか?

まぁそんな中でも皆さんの小さな楽しみの1つになればと思い今回も執筆しました。

お楽しみいただければ幸いです。

 黒い夜で満ち満ちた深夜のビル街に宅配のバイクが停まる。

「〇〇ピザです。お届けに参りました」

オフィスの3階、1か所だけ電気がついているところにピザの入った紙パックが届く。

受け取った男は20代後半くらいだろうか。配達員と会社員の男の周りに人影はない。

やつれており、目の下には隈が出来ている。

「有難うございます、何円でしたっけ」

「3000円になります」

男は黙って1000円札を3枚黙って渡す。

「3000円ちょうど頂きました」

宅配の配達員が去っていくと、男はため息を1つ着いて自分のデスクにピザの箱を持っていく。

箱を開けるとまだ少し温かい赤と小麦色の丸がモノクロだったデスクに彩りを添える。

同時にチーズとトマトの芳香が男の嗅覚に早く食べろと訴えかける。

仕事の疲れと余りの空腹感と戦ってきたあとだ。ピザからの誘いをもちろん蹴るはずもなく

頂きますもなしにピザを無心で切っては撃ちに運ぶ。

トマトの甘さとチーズの濃厚な旨味が空腹という最高のスパイスがかかった状態で殴りかかってくる。

理不尽に押し付けられた仕事を忘れ、腹を満たす快楽をしばらく貪った。

「こんな金の亡者しかいない街で、何がしたくて生きてるんだ俺は」

疲れからか思考が全て言語化され、ため息と共に吐かれていく。

男がピザの箱を片づけると、その下には見たくもない書類ファイルの山がある。

せっかくピザ色に彩られた心も、書類を前に黒く沈んでいく。

「いっそ出家して僧侶にでもなるか」

男は1年前、結構本気で好きだった相手と別れており精神的な支えもなかった。

休みなく働き、使う暇のない金を稼ぐばかりの生活にはもう飽き飽きだった。

「まぁピザに免じて今日は泊まり込みで頑張るけどさ」

男は一度身体を伸ばすと、機械的にキーボードを叩く。


気付いたら窓の外には光が差し込んでいる。蛍光灯の気味悪いオフホワイトではなく、柔らかな日の光だ。

背中にはブランケットがかけられていた。隣の席では男の後輩が書類を前に唸っていた。

男の視線に気付いたのか、後輩が振り向き挨拶してくる。

「おはようございます先輩、すいません私のミスで会社泊まらせて。なんて詫びたらいいか」

彼女はしおらしく謝ってくる。

彼女も一応名の通った大学を出ており頭は良いはずなのだが、ピリピリした環境からかどうにもミスが多い。

「今度やけ酒に付き合ってくれない?君がミスした分の愚痴も含めてさ、話聞いてよ」

叱られた犬のような顔をする彼女に、少しの皮肉を混ぜて飲みに誘ってみる。

「うぅ、すみません。私で良ければなんでも付き合いますから許して下さい」

どうやらOKなようだ。

「分かった、なら今度付き合ってもらおうか」

そこで一呼吸置いて男は言葉を続ける。

「いつまでも犬みたいに唸ってないで見せてみろ。休憩がてらに見てやるから」

1つだけ楽しみが増えた。それだけで仕事へのモチベーションは変わってくる。

コーヒーをブラックで飲むからお茶菓子が心地よく甘い。

きっと人生もそうだ。

苦い黒があるからこそ、他の何もかもが輝くのだ。

男はそう思い込むことにしてコーヒーを飲み干した。

いかがだったでしょうか?感想、お気づきの点などございましたら感想をいただけると幸いです。

それではまた次回の作品でお会いしましょう!

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