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魔女だけどなにか?  作者: 花紅茶
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賢者と魔女




「ねぇ、アタシこの格好のまま行くの…?」


着脱しやすいクリーム色した病衣にスリッパのままルナがギルバートの背中に話しかける



――てっきり、病院にいるかと思ったらちょっと違うみたい…だって、階段降りたら豪邸なんですもの!!




白を基調にしたシンプルな廊下に壁

何個か部屋がありその一角を通り過ぎて階段を降りると…

真っ赤な高級絨毯に高い天井、その天井には豪華な照明がついていた

窓からは綺麗に手入れをされた庭が広がっていた




そんな豪華な屋敷を病衣でましてやスリッパでギルバートの後ろを歩くのはなんだか気が引けたが…



「誰にも会わないルートで行ってるから別にいいだろ」


チラッとルナを見てスタスタ歩く



――当の本人は全然気にしてないのね…



「てか、ここどこのなの?」


キョロキョロ豪邸の中を見渡すルナ


「月の宮」



「………」


黙り込むルナ


――月の宮…?え、待って待って。

それって、王都のど真ん中にあるお城の周りにある王宮と同じ名前じゃん…




ルナが今いる王都はその名の通り王様が住むお城がある場所

そのお城の名前はエヴァンス城といい

真っ白な大きなお城に屋根が空色の美しいブルーが印象的な城

その王様がいる王宮の両サイドには

太陽の宮、月の宮という王に許しを得た、

王族や身分の高い者しか使えない宮があった





――そこって超身分が高い人しか出入りできないんじゃないの!?

え、という事はこの目の前にいるお方はただのチンピラじゃなくて、本当に賢者様ってこと!?


そしてアタシは今は王都にいるって事か…



「え!!アタシ今王都にいんの!?」


実感して時間差で驚くルナ


――アタシ人生初の王都なんですけど!!

ずっと山奥にいたから、憧れの街だったんですけど!!

いつの間にそんなとこにいるわけ!?しかも、お城にいるって!!



「今更かよ、そうだよ」


ギルバートが部屋の前で立ち止まりドアを開ける


中に入らずドアを開けたままルナを見て立っていた


「…?」


少し後ろを歩いていたルナが追いつき、中に入らないギルバートを不思議そうに見る



ルナを見下ろしてる綺麗な顔が何も言わずにアゴをクイッと一瞬動かして中に入るように合図する



――むっ…レディファーストとか紳士かよ…



何事もなく当たり前のように先にルナを中に入れるギルバート

さっきまで散々言い合いして女扱いなんてされなかったのに、些細な気遣いにドキリとしてしまう自分が悔しくなった




「うわあ〜!!」


中に入った瞬間目をキラキラさせて喜ぶルナ



広い部屋の中には綺麗な家具が並べられていて何もかもが豪華だった



中央に置かれた2人がけのテーブルには2人分の食事の用意をメイド達がしていた



「すっごぉ〜い!お姫様のきぶっ!!」


大きい声で大喜びするルナの口を後ろから塞ぐギルバート



「お前…まぢ静かにしろ…」


呆れた声で言うギルバート


病衣に美しい美女が少女のようにはしゃぐ姿はあまりにも不釣り合いで周りのメイド達が笑うのを必死に堪える



「…ん!だって!本当にすごいんだもん!!」


後ろから塞がれたギルバートの大きな手を両手で下にずらして手を持ったまま目を輝かせて部屋を見渡すルナ



ルナの後ろでスッと軽く手を上げてメイド達に下がるように合図をするギルバート



準備を急いで終えてメイド達が一礼をして部屋を出て行った



――すごい!映画とか童話とかで出てくる王族の部屋みたい!

全体的に必要なものしか無くてシンプルだけど、家具が豪華だし!大きいソファとか!背の高いクローゼット!

そして、やっぱりお姫様といえば…天蓋ベット!!

あれ何サイズのベッドになるの!?キングサイズ!?そして上から垂れている白いカーテン!!もっと近くで見たい!!


ルナが部屋を散策しようと歩き出すのを首根っこを掴み止める


「いいから先に食事だ」


ギルバートが呆れて言う



「あ、そうだった!いい匂いがするー!お腹すいたー!」


嬉しそうに笑うルナ



料理が用意されている中央に置かれたテーブルに向かう



「お前こっち」


ギルバートがスッと椅子を弾いてルナを座らせた


「あ、ありがと…」


――なっ!///また!またやった!///

いちいちドキってしないでよアタシも!!

当たり前なんだって!この人からすれば…

こんなとこに出入りできるんだもん…こんなのマナーとして当然なんだよ



ギルバートが向かいの席に座る


「いっただきまーす!」


ルナは両手を合わせて元気よく言う


「子どもかよ」


ギルバートが呆れて鼻で笑う



「ちょっと見て!!お肉めっちゃ厚いよ!」


目の前の絵に描いたようなご馳走にまたテンションが上がるルナ


「え!パンも何種類もある!それにこのサラダの色艶!すごい新鮮そう!」


「いいから食えよ」


ギルバートがナイフとフォークを使って食べ始める


「ちょ、ちょっと待って…重大な事に気づいた…アタシ、テーブルマナー全然わかんない!!」


ハッとして固まる

両サイドにズラリと並ぶナイフとフォークを見て混乱するルナ


――た、確か外から中に使うんだよね!?

けどどれにどれを使えばいいとか全然わからないんだけど!!


「俺しか居ないから別に好きに使えばいいだろ」


呆れて静かに食べるギルバート



「そ、そっか…」


――に、にしてもよ…ヤツはすごい綺麗に食べるのね…



なるべく音を立てないようにスープを飲みながら目の前のギルバートを見るルナ



指の長い綺麗な手でナイフとフォークを握り音を立てず静かに食事をするギルバート

伏し目がちの美しい表情に少し見惚れるルナ


――育ちがやっぱりいいのね…すごい慣れてるし…



と思いながらお肉を口に入れると



「えっ!美味しいー!!ちょっとなにこの柔らかさと味付け!!」


もぐもぐしながら驚くルナ



「それは良かったな」


呆れて笑うギルバート


「え!ちょっとギルバートも食べてみて!感動するから!」


「お前なにちゃっかり呼び捨てしてんだよ」


「え、ダメなの?じゃあなんて呼べばいい?」


「俺を呼び捨てにすんのなんて王族ぐらいだぞ、ヴィンセント様だろ普通」


思わず笑うギルバート


「いや、長くて呼びづらいから。あ!そうだ!」


ルナが思い付いたように言う




「ギルって呼ぶね!ギルバートも長くて呼びづらいし!」




ピクッとその呼び方に反応するギルバート



「やめろ、その呼び方」


声のトーンが一気に下がった



「えー?なんでよーじゃあ、ヴィンセントのヴィちゃんとか?」


うーんと呼びやすい愛称を考えるルナ


「もっとやめろ」


「じゃあ、ギルバートのルバ!」


「どっからとってんだよ…」


「えーじゃあギルでいいじゃん!」



「………好きにしろ」


(アイツと同じ呼び方だからって俺はいつまでこんな事気にしてんだが…たかが呼び名ぐらいで…)


最初は嫌がったが少し考え込み諦めたて言った




「じゃあよろしくギル!」


嬉しそうにルナが笑った


「あぁ」


あまりにもルナが嬉しそうに笑うから気にしていた事がどうでも良くなった



「このパン外サクサクなのに中フワッフワでしっかりバターの味がして美味しい…」


「そうだな」


「って、ギルまだこのパン食べてないのにテキトーに返事しないでよ!」



その後も嬉しそうに感想を言いながらご飯を食べるルナにテキトーに相槌を打つギルバート

けどその返事は短い割には優しく、ちゃんと聞いてあげていた





「やっぱり誰かと一緒に食べるご飯って美味しいね!」


優しく笑うルナ



――考えてみればこうやって誰かと一緒に食事をするのはいつぶりだろう…社畜の時だってずっと一人暮らしだったから毎日一人でご飯たべてたし、ルナの体になってからも誰にも会わずに生活していたから…なんか、楽しいし嬉しい!


初対面の印象は最悪だったけど、意外に悪い奴じゃないのかもなー





「王宮で出される料理だぞ、美味くて当然」


ふふふと嬉しそうに笑うルナを見て鼻で笑うギルバート



「アンタやっぱり嫌な奴!!」



こうして2人は食事を終えた





:

:






「ねぇ、ギル。聞いてもいい?」


急に真剣な声になったルナをギルバートが見る



食事を終えた後、ソファでくつろいでいたがルナがソファにちゃんと座り直した

向かい側で足を組んで座るギルバートを真っ直ぐ見る



「ちゃんと聞けてなかったけど、なんでアタシはここにいるの?これからどうなるの…?」


不安になってルナが聞く



――王宮の中なんて憧れの夢のまた夢の世界だったからテンション上がってすっかり夢中になって忘れてたけど、これからアタシはどうなるんだろう…



「アタシは闇魔法が使えるし、この国にとって悪者なのはわかってる。けどだからって誰かを傷つけたいわけじゃない。ただ静かに暮らしたいだけなの…アタシはね…」



ルナは静かに今まであった事を覚えてる限りギルバートに話し出した



ルナ・サスティフォールという名前で公爵令嬢だった事、

魔王に屋敷を襲われて家族が殺された事、

その後拐われて魔王に闇魔法を使える体にさせられて酷い目にあった事、

その後逃げ出して、山奥の小さな家で静かに生活していた事



さすがに前世の記憶が戻った事は信じてもらえないと思い話さなかった



「一番最初にギルが湖に沈んでたって言ってたけど、アタシはそんな事した覚えないし、その辺の記憶がない…気がついたらここにいた」


ルナが話し終えると


「お前は湖で遊んでたガキどもが見つけた」


「えっ…」


今度はギルバートが静かにルナが見つかった経緯を話し出した




その話を全て書き終えたルナが考え込む



――ギルの話しだと、

アタシは紫の大きな結晶の中から発見されたらしい

紫の結晶って聞いて、すぐさまアタシが魔法で使う紫の結晶を見せたら一緒のものだと言われた。

自分を結晶漬けにしたって事?なんのために?

今まで自分に向けて魔法を使ったことないからわからないけど…自分を結晶漬けにすると、そのまま意識不明で保存状態になるのかな…?


最初は湖で遊ぶ子ども達が湖の底に何かあるのを見つけて、大人達に報告したら、お宝だと思い込んで大人達が総出で引き上げたところ結晶の中にアタシが眠っていて大騒ぎになったらしい

すぐさま騎士団に連絡がいって、結晶が何をしても壊れない為いろんなところに連絡がいき最終的にはギルのところに運ばれたらしい…


闇魔法で作られた結晶は

普通の武器はもちろん、魔法でも風属性や火属性、水属性でも壊せない。壊せるのは光属性の魔法だけ


結晶を調べたら闇属性のもので、魔物の棘も刺さっていたのに毒が効いていない事、気絶はしていたがあの状況で生きていた

そして、アタシの背中を見たと言っていた




私の背中には肩甲骨の間に魔王がつけた忌々しい【魔術印】がある




一般人というよりも魔王に作られた魔物の可能性が高いと拘束されていた



そして、意識がやっと戻って今に至るらしい…




「アタシが自分に魔法をかけて飛び込んだか、誰かに闇魔法で結晶漬けにされて湖に捨てたれたのか…」


うーんと考え込むルナ


「それをお前に聞きたかったのに、記憶が飛んでたらから真相がわからねぇ。まぁ、もうこの際それはどうでもいい」


ギルバートがじっとルナを見る




「お前が敵か味方かどっちかが重要だ」



その言葉にルナがパッと顔を上げてギルバートを見た



「敵じゃない、むしろアタシは魔王を倒して平和な世界にして欲しい。」



真っ直ぐ強い眼差しを向けるルナ



「じゃあ決まりだな。」


スッとソファから立ち上がるギルバート



「ルナ、お前の話を信じるとは今はまだ言えない。


仮にお前の話しが全て本当だとしたらお前は被害者だ。だからと言って闇魔法が使える以上野放しにはできない。」


ルナの前に立ち見下ろすギルバート




「俺に証明しろ、お前は魔王の手先ではないと、この国の為に戦えると。」



ルナが少し目を見開きギルバートを真っ直ぐ見る




「それまで俺がお前の命を預かってやる」





ギルバートがスッと手を差し出した




――そうだよ…

勇者と賢者と聖女が魔王を倒すのを待って、

山奥の家に逃げて、隠れてコソコソしてちゃダメだ。

ルナはこんなに強い力がある、

誰かを守れる強い力があるんだよ!

アタシが協力すれば魔王だって簡単に倒せるかもしれない。


どうせアタシが協力するって言ったって誰も信じてもらえないし、むしろ攻撃されるって思って逃げてたんだ。

今ここで逃げたら、一生コソコソ生きていかなきゃいけなくなる。戦わなきゃ。


ギルの言う通りアタシは悪者じゃないって、

悪役じゃないって証明しなきゃ!!



「うん、アタシ一緒に戦うよ!!」



ギルバートの差し出した手を掴み立ち上がるルナ



「決まりだな」



ギルバートがふっと笑う

意志が決まったルナも笑って返した





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